ティアラの花嫁

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35.忠告

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***

少しずつ。
少しずつ、私はシオン様への気持ちを整理することができていると思うの。

それはきっと、サハラ様の存在のおかげ。

休暇を終えて、以前のようにレティシア様にお仕えしていると。
……シオン様が、毎晩のようにレティシア様の元へ通われるから、いやでもお二人の関係を目の当たりにしてしまうけれど。

それでも……私の胸はもう、あまり痛まなくなっていた。
むしろ、シオン様がレティシア様に愛想を尽かされないかしら、なんて心配をしてしまうくらい。

……不思議なものね。


「……お体は大丈夫ですか? レティシア様……」

昨夜もあんなに忠告したにも関わらず。
結局、シオン様はレティシア様のお部屋に泊まられたみたい。

レティシア様の元気があまりないように見えるのは、そのせいかしら?
……まさか、無茶な事を要求されてるのでは……?

いいえ。
シオン様に限って、そんな……。

……って、私はさっきから何を想像しているの??

「つ、疲れがたまってるのでは?」

私が心配になって、お茶をテーブルに置きながらそう聞くけれど、

「大丈夫。ありがとう、エルマ」

レティシア様はニコリと笑みを向け、カップを口にする。

そして……どこか、憂いを帯びた表情。
そういえば、この表情を、最近よく見るようになった気がするわ。

「……レティシア様は、何か悩みがあるのですか?」

気のせいなら、いいのだけれど。

私の問いに、レティシア様は少し驚いたような表情を見せた。

「どうして?」
「時々、とても辛そうな表情をされてるように見えます。……私では力になれませんか?」
「エルマ……ありがとう。…………。
あの、実は……話そうかどうか迷っていたけど……」

レティシア様は、意を決したように続ける。
そして、

「サハラには、もう近づかない方がいい」

あまりにも思いがけない事を、口にして。

「……え? サハラ様……?」

どういう意味なの?
なぜレティシア様が、そんな事を??

意味が、分からないわ。

「サハラの近くにいたら……必ずあなたは傷つけられる」
「や、やめてください!」

思わず、叫んでしまった。

だって。
だって、しょうがないじゃない。

なぜ、レティシア様にそんな事を言われなければならないの??

「レティシア様に、サハラ様の何が分かるのですか!? サハラ様は……サハラ様は、私のことを心配してくださる優しい方なんですよ……?」

そう。
サハラ様が私を傷つけるなんて、あり得ない。

私を守ってくれた。
辛い時、そばにいてくれた。
それに……。

「……エルマ? もしかしてサハラのこと、」
「用事を思い出したので、失礼します!」

これ以上レティシア様の話を聞きたくなくて……私は、部屋から逃げるように出た。

…………。
サハラ様に、傷つけられるなんて……なぜそんな事を?
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