172 / 186
黎編
31話 よくわからない状況
しおりを挟む「ここまで来れば大丈夫かな?」
飛鳥ははぁはぁ息を吐きながら黎に声を掛けた。
「大丈夫?黎君。」
「…あぁ。大丈夫だ、助けてくれてありがとな」
そう、黎がお礼をいうと飛鳥は手に持っていた救急箱をあけた。
「いいえ。…傷、体中傷だらけだ。
血も出てる。応急処置だけして早く病院にいこう。」
飛鳥は冷静に黎の怪我の看病をした。
そして、黎の心配をしてくれた。
「…飛鳥君は…なんでここに…?」
もしかして、監禁されていたことを知っていたのか…?
「いや、おれもね、よく状況がわかってないんだ。いきなり勇太君から電話で『来いっ!』って言われただけで。そのあと住所が送られてきてさ。
ほんと…何が起きたんだって体が震えたよ。
けど…勇太君がおれにイタズラするためにわざわざ電話なんてかけないだろうって思って…。
それで───来たら亮君がいて。
と、思ったら窓ガラスをいきなり蹴って割るんだから…びっくりしたよ。」
飛鳥はにこにこと笑顔で黎を見ていた。
「…なら飛鳥君は…知らなかったんだな。」
「うん。あのとき、黎君にそばにいろって言われて、おれは黎君を守ろうとしてたのに…いつの間にか正先生にスタンガンを食らってて…。
もしかして──あれからずっと
監禁されてたの───?」
飛鳥君は真剣な声でおれに尋ねた。
「…この傷が…答えだな。」
「…そっか。ごめんね。おれは全然知らなかった…。何もすることが出来なくて…ごめん。」
「いや、今いてくれて嬉しいからっ…!」
「…でも、本当はおれじゃなくて亮君にいてほしかったんじゃない?」
飛鳥君はそういいながらおれの血をタオルで拭いていた。
「なっ…!?」
「…ごめん、つい。何でもないよ。」
飛鳥君がそういうと───、あっと声を出す。
「ほら、──来たよ。」
飛鳥君の視線に合わせて自分も視線を返る。
「─────っ黎っ!!!」
見ると───亮がいた。亮が…亮の服が真っ赤になっていた。
「亮っ───「ごめんっ!!」
声を掛けようとすると謝られた。
「とおっ…「おれ、黎と約束したのに…、ごめん、おれ、正先生を殺せなかった!!ごめんっ…、黎っ!」
亮は涙を流しながらそう、おれに言ったんだ。
「…そんな、おれこそ、酷いことを言った。ごめん。」
「黎っ…やっと会えたっ…!!黎っ黎っ────!!」
亮はそういっておれに抱きしめた。
黎も泣きながら亮にしがみついていた。
そして───黎は監禁から解放された。
よかった、よかった───ハッピーエンド。
と、思うが────。
(─────…どういうことなんだろう…。)
おれ、飛鳥は全く理解を把握出来ずにいた。
亮君と黎君は感動な感じに抱きしめあっているが…。
亮君─────体中血だらけだった。
「あ、亮君っ…その血、大丈夫?」
「飛鳥君、大丈夫。返り血だから。」
…それはそれで大丈夫ではないのでは…?
「ごめん、正先生にお腹ぶっ刺してきたけど…。殺さなかった。」
「あぁ。いいんだ。正兄はおれが殺すから。」
───そして、この会話。殺す、殺さない…。これはなに?ゲームの話か?
「えっと…殺すとかって。」
「あぁ。亮は正兄を殺してくれるといってくれたんだ。」
いや、わからないっ!なんで、殺すことになる!?
おれだけが全くこの意味の分からない状況についていけなかった。
──────わからん。
まぁ、でも────
「とりあえず───二人とも病院に行こっか。」
おれたちは仲良く病院に行ったのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
393
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる