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ヴァルハルト王国の清々しい朝、私はカイル殿下と共に、テラスで朝食を摂っておりました。
相変わらずの筋肉盛り合わせメニューですが、最近ではこれを見ないと目が覚めない自分に恐怖を感じますわ。
そこへ、アストレア王国からの定期便を携えた伝令が駆け込んできました。
報告書を受け取ったカイル殿下は、それを一読するなり、豪快に吹き出しました。
「ははは! ミクル、君の言った通りになったぞ。アストレア王国の第一王子、アルヴィスが正式に王位継承権を剥奪されたそうだ!」
私は優雅に薬草汁を啜りながら、扇子の陰で口角を上げました。
「あら。当然の結果ですわね。わたくしが十人がかりでこなしていた政務を、あの無能な殿下と、贅沢三昧の聖女様だけで回せるはずがありませんもの」
報告書によれば、アルヴィス殿下は国庫を破綻させた責任を問われ、現在は王宮の地下にある資料室に幽閉されているとのこと。
そこには、私が残していった「未処理の書類の山」が積み上げられており、彼は死ぬまでその計算をさせられる刑に処されたそうですわ。
「聖女リリィの方はどうなりましたの?」
「彼女は『聖女』の称号を剥奪され、地方の修道院へ送られたよ。そこは質素倹約を旨とする場所で、朝から晩までジャガイモの皮剥きをさせられるそうだ。彼女が買い漁った宝石はすべて没収され、国民の救済に充てられたらしい」
それを聞いた瞬間、私の中に抑えきれない高揚感が込み上げてきました。
私は椅子から立ち上がり、朝の光を浴びながら、これ以上ないほど高らかに声を響かせました。
「おーっほっほっほ! ざまぁ見やがれですわ! わたくしを追い出した報い、たっぷりと味わうがいいですわ!」
自分の放った「ざまぁ」という言葉の響きに、私は最高にスッキリとした気分になりました。
これですわ。悪役令嬢としての物語において、この瞬間こそが最大のカタルシスなのです。
しかし、ひとしきり笑い終えた後、私の胸の奥に、ほんのりと苦い感覚が広がりました。
「……ミクル? どうしたんだ、急に黙り込んで。今の笑い、城の防衛壁が共鳴するほど素晴らしかったぞ」
カイル殿下が心配そうに私の顔を覗き込んできました。
私は視線を落とし、小さく溜息をつきました。
「……いえ。ほんの少しだけ、あの書類の山のことが気にかかっただけですわ。アルヴィス殿下の計算能力では、おそらく最初の三ページで計算ミスをして、一生終わらない無限ループに陥るでしょうから」
「君は……どこまで慈悲深いのだ。自分を裏切った相手の心配をするなんて、やはり君は真の聖女よりも聖女らしいな!」
カイル殿下は感動して私の手を握りましたが、私はそれをやんわりと押し返しました。
「勘違いしないでくださいまし。わたくしが心配しているのは、計算ミスのせいでアストレア王国の経済指標がめちゃくちゃになり、隣国であるこのヴァルハルトの物価に悪影響が出ることだけですわよ。……ほんの、少しだけですけれど」
私は窓の外、遠く離れた故郷の方角を見つめました。
あんなに嫌っていたはずの場所ですが、自分が守ってきたものが崩れていくのを聞くのは、悪役令嬢としても少しだけ、心がチクリと痛むものですわね。
「おーっほっほ! まあ、わたくしがいないのですもの。あの国が没落するのも運命ですわ! 殿下、今のわたくしの台詞、最高に傲慢で格好良かったですわよね?」
「ああ! 最高だ! その冷徹な合理主義、惚れ直したぞ、ミクル!」
カイル殿下の熱い抱擁をトゲトゲの肩当てで防御しながら、私は自らの過去と決別しました。
後悔はありません。
あちらには絶望の書類の山がありますが、こちらには愛すべき筋肉と、私の「覇気」を認めてくれる未来があるのですから。
「さあ、殿下。過去の話はこれでおしまいですわ。今日は騎士団の新しいプロテインの味見に行くのでしょう? わたくしが厳しく毒見をして差し上げますわよ!」
「ああ、頼む! 君に『不味い』と罵られれば、開発部も死ぬ気で改良するだろう!」
私は再び高笑いを響かせながら、テラスを後にしました。
悪役令嬢ミクルの新しい伝説は、まだ始まったばかりなのですから。
相変わらずの筋肉盛り合わせメニューですが、最近ではこれを見ないと目が覚めない自分に恐怖を感じますわ。
そこへ、アストレア王国からの定期便を携えた伝令が駆け込んできました。
報告書を受け取ったカイル殿下は、それを一読するなり、豪快に吹き出しました。
「ははは! ミクル、君の言った通りになったぞ。アストレア王国の第一王子、アルヴィスが正式に王位継承権を剥奪されたそうだ!」
私は優雅に薬草汁を啜りながら、扇子の陰で口角を上げました。
「あら。当然の結果ですわね。わたくしが十人がかりでこなしていた政務を、あの無能な殿下と、贅沢三昧の聖女様だけで回せるはずがありませんもの」
報告書によれば、アルヴィス殿下は国庫を破綻させた責任を問われ、現在は王宮の地下にある資料室に幽閉されているとのこと。
そこには、私が残していった「未処理の書類の山」が積み上げられており、彼は死ぬまでその計算をさせられる刑に処されたそうですわ。
「聖女リリィの方はどうなりましたの?」
「彼女は『聖女』の称号を剥奪され、地方の修道院へ送られたよ。そこは質素倹約を旨とする場所で、朝から晩までジャガイモの皮剥きをさせられるそうだ。彼女が買い漁った宝石はすべて没収され、国民の救済に充てられたらしい」
それを聞いた瞬間、私の中に抑えきれない高揚感が込み上げてきました。
私は椅子から立ち上がり、朝の光を浴びながら、これ以上ないほど高らかに声を響かせました。
「おーっほっほっほ! ざまぁ見やがれですわ! わたくしを追い出した報い、たっぷりと味わうがいいですわ!」
自分の放った「ざまぁ」という言葉の響きに、私は最高にスッキリとした気分になりました。
これですわ。悪役令嬢としての物語において、この瞬間こそが最大のカタルシスなのです。
しかし、ひとしきり笑い終えた後、私の胸の奥に、ほんのりと苦い感覚が広がりました。
「……ミクル? どうしたんだ、急に黙り込んで。今の笑い、城の防衛壁が共鳴するほど素晴らしかったぞ」
カイル殿下が心配そうに私の顔を覗き込んできました。
私は視線を落とし、小さく溜息をつきました。
「……いえ。ほんの少しだけ、あの書類の山のことが気にかかっただけですわ。アルヴィス殿下の計算能力では、おそらく最初の三ページで計算ミスをして、一生終わらない無限ループに陥るでしょうから」
「君は……どこまで慈悲深いのだ。自分を裏切った相手の心配をするなんて、やはり君は真の聖女よりも聖女らしいな!」
カイル殿下は感動して私の手を握りましたが、私はそれをやんわりと押し返しました。
「勘違いしないでくださいまし。わたくしが心配しているのは、計算ミスのせいでアストレア王国の経済指標がめちゃくちゃになり、隣国であるこのヴァルハルトの物価に悪影響が出ることだけですわよ。……ほんの、少しだけですけれど」
私は窓の外、遠く離れた故郷の方角を見つめました。
あんなに嫌っていたはずの場所ですが、自分が守ってきたものが崩れていくのを聞くのは、悪役令嬢としても少しだけ、心がチクリと痛むものですわね。
「おーっほっほ! まあ、わたくしがいないのですもの。あの国が没落するのも運命ですわ! 殿下、今のわたくしの台詞、最高に傲慢で格好良かったですわよね?」
「ああ! 最高だ! その冷徹な合理主義、惚れ直したぞ、ミクル!」
カイル殿下の熱い抱擁をトゲトゲの肩当てで防御しながら、私は自らの過去と決別しました。
後悔はありません。
あちらには絶望の書類の山がありますが、こちらには愛すべき筋肉と、私の「覇気」を認めてくれる未来があるのですから。
「さあ、殿下。過去の話はこれでおしまいですわ。今日は騎士団の新しいプロテインの味見に行くのでしょう? わたくしが厳しく毒見をして差し上げますわよ!」
「ああ、頼む! 君に『不味い』と罵られれば、開発部も死ぬ気で改良するだろう!」
私は再び高笑いを響かせながら、テラスを後にしました。
悪役令嬢ミクルの新しい伝説は、まだ始まったばかりなのですから。
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