念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

文字の大きさ
16 / 180

第16話 初めての馬車

しおりを挟む
 そろそろか……。

 時計を見るともうすぐ昼になる。今から二人のいる宿屋に行けばちょうどいい時間になるだろう。

 俺は数枚の金貨とカバンを持ち、鍵を閉めて宿屋に向かうことにする。

 なにもなければいいけど、また木人みたいなやつが襲ってきたら嫌だな。

 なんかしつこそうな感じだったし、人気がないところは注意が必要だな。


 そんなことを考えていたら二人の泊まっている宿屋に着く。

 まだチェックアウトはしていないのか、表には出てきてないようなのでしばらく待つことにする。

 少し早く着きすぎたか。女の子ってのは準備に時間がかかるって言うし、呼ぶのも急かすみたいで悪いしな。

 少し待っていたら、リネットが相変わらず眠そうな顔で宿屋から出てきたので挨拶を交わす。

 「よぉ。約束通り来たぜ」

 「あら、早いのね。姉さんもすぐにくるからちょっと待ってて」

 「それで、馬車の方はどうだった?」

 「なんとかなったわ。そろそろ迎えにきてくれるはずよ」

 そう話してるとサーシャが宿屋から出てきて、俺に「おはようございます」と挨拶をする。

 「おはよう。サーシャ昨日はよく眠れたか?」

 「はい、馬車の手配もできましたし、ゆっくり寝ましたわ」

 「それは良かった。寝不足だと長旅になったときキツいからな」

 この会話にリネットが不満そうな顔をして俺に文句を言う。
 
 「あなた、私と姉さんで随分差があるのね」

 「そうか? そんなことないと思うけど」

 「私のときは真っ先に馬車の心配して、姉さんには『よく寝れたか?』って、全然違うじゃない」
   
 「いや、馬車はリネットが『なんとかなったって』言ってたし、別にサーシャだけ気にかけたわけじゃないよ」

 リネットは「もういいわ」と頬を膨らませ顔を背ける。

 参ったな。そんなつもりはなかったのに、こんなに怒られるなんて。
 
 それとも最初によく寝れたか聞けば良かったのか?

 「まあまあ、リネットもそんなに拗ねないで。昨日はなんだかんだで楽しみにはしてたじゃない」

 「な、なに言っての姉さん! こんな大変なときに楽しみにするはずがないでしょう」

 「あら、途中でどこの町に寄っていこうかって地図を広げて見てたじゃない」

 「ち、違うわよ、あれは馬車がある町を探してて、ついでにどんなお土産があるかを見てただけよ」

 「ふふっ、本当に素直じゃないわね。あっ! 馬車がきたみたいよ」

 宿屋の前に馬車が停まりサーシャが改めて行き先を確認した後、俺達は荷物を馬車に入れ乗り込む。

 馬車がゆっくり走りだし、街道を抜けると舗装されてない道に入っていく。

 ちょっと揺れるけど小窓から入ってくる風が気持ちいいな。

 「今日は何時間くらいで次の町に着くんだ?」

 「途中休憩を入れて夜になるかと思います。宿が取れるといいんですけどね」

 「そっか。じゃあしばらく揺られる感じだな」

 「そうなりますね。でも目的地まではわりと近くて、早ければ明後日には着きそうです」

 「どうせなら、その目的地に転移すれば良かったのにな」

 「本来ならバラバラに行動する予定でしたし、別々ならばついでにこの世界の情報も集めることもできますしね」

 「俺もこの世界のことについては詳しくないからな。何か知ってることがあれば教えてあげたいけど俺が知りたいくらいだし」

 「いえ、私達のことを黙っててくれるだけでありがたいですよ。それにわかってるのはこの世界の危機だけなんで、かなりの情報が必要になりますしね」

 「そのために仲間が先行してこの世界にきてるんだもんな。何事もないといいな」

 「そうですね……」

 サーシャが心配そうに言うと、リネットが元気付けるように「大丈夫よ」とサーシャの肩を叩く。

 「こんなところで心配しても仕方ないし、もしかしたら忙しいのかもよ」

 「なぁ。一つ気になる事があるんだが、聞いていいか? 言えないならそれでいいけど」

 「なによ? 協力してくれてるし大体のことなら答えてあげるわ」

 「最初から思ってたけど、わざわざ危険をおかしてまでこの世界を助ける必要性ってあるのかなって」

 「そのことね。私達の世界では、この世界が少し後にちょっとした危機に瀕することが判明したの。それだけなら確かに介入する必要はないんだけど、規模が大きすぎるとそうはいかないの。例えばこの世界で陸が半分無くなるような災いがあったら、私達の世界でも形を変えて同じようなことが起きるのよ」

 「そんなことあるのか? ちょっと信じられないけど」

 「信じなくてもいいけど、あなたの世界でも同じことが起きるでしょうね。要はあなたの世界を含めて異世界同士が繋がってるのよ」

 「あれだ。平行世界みたいなやつだな。もしもだれそれが死ななかったら、今の世界とは違う別の世界が存在するはずみたいなやつか」
 
 「んー。私達の世界の学者は『お互い重なりあってはいるけどその距離は無限に離れている』って言ってるわ。何て言えばいいのかしら、平行世界を横だとしたら異世界は奥行きとかに存在することになるのかしらね」

 「またちょっと違うんだな。奥行きというか重なってるんだろ?」

 「私も詳しくはわからないけど、異世界と平行世界の明らかな違いは『世界観』ね。この世界のギフトは私達の世界にはないけど、この世界の平行世界はギフトはあるでしょうし、それありきの世界を構築してるはずよ。だから重なってはいるけどそれぞれの世界は全然別物になるってことかしらね」

 「だからこそ、この世界と俺の世界が繋がってるっていうのがしっくりこないんだよな」

 「そこは同感ね。ただ、この世界の一番偉い人が大量虐殺したり権力を失ったとしても私達の世界にはなんの影響もないわ。干渉するのは天変地異みたいな出来事だけらしいわ。この世界の人間が地殻変動を起こすくらいのなにかをした場合とかね」

 「ん? 待てよ確か今回盗まれたギフトは天災系とか言ってたぞ。人が使う天災ってのはどうなんだ?」

 「盗まれたギフトってのが天災系なら可能性は高いわね。あなたは同じ目的じゃないかって言ってたものね」

 「いずれにせよ、この世界の危機は他の異世界の危機でもあるってことか」
 
 「そういうことね。だから私達がリスクを負ってでもこの世界にきたってことよ」

 「なるほどな。ところで、異世界に行ってその世界を助けるみたいなことは結構やってるのか?」
 
 「いや、今回が初めてのはずよ。基本的に自然現象なんて止めようがないし、異世界に転移するのは禁止されてるわ。ただ、これからこの世界で起きる厄災は人類の脅威らしくて、私達の世界でもかなりの被害が出ると予測されてるの」

 「そんなのをどうにかする任務に抜擢されるってやっぱりエリートなんだな」

 リネットはいつもの得意気な顔で鼻を鳴らす。

 「言ったでしょ? エリートだって。あまりこの世界に干渉しないように少数精鋭で影から助けるのが私達ってこと」

 「まぁ、俺にいきなりバレたけどな」

 リネットがそれは「言わない約束よ」と言い、両手を頭の後ろで組んで目をつぶる。

 「ちょっと話すぎたみたいね。少し寝かせてもらうわ」

 どうにかしたいけど、彼女達に協力することくらいしか出来ない自分にもどかしさを感じつつ、頭の中でリネットの話を整理する。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...