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第32話 ルメース火山で石集め

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 俺達は宿で一泊した後、黒曜石を採りに再び馬車を走らせ火山に向かう。

 途中町をいくつか経由し、二日かけて火山付近にある町に着く。

 山に登る前に町で先に買う物があるらしいので、アリエルとお店に向かう。

 「ふう、馬車に乗ってるだけだけどなんだかんだ疲れるな。それでなにか買うのか?」

 「今から登るルメース火山にある黒曜石は普通のものと特殊なものがあってな。私が欲しいのは軽くて光沢の強いやつだ。多分割らなければならんだろうから、必要なものを買っておこうと思ってな」

 「同じ石でも色々あるんだな。力仕事なら任せてくれ」
 
 火山付近の町ということもあって、そういうアイテムが売ってる店もあるらしい。

 「ファヌマースピークの麓にあった町に比べて冒険者っぽい人間は少ないんだな」

 「危険な魔物も出てこないから冒険者でなくとも採石出来るからな。それに個人で黒曜石をわざわざ採石するくらいなら宝石の原石を採りにいくだろう」

 「人気はそこまでないんだな。やっぱ冒険者は魔物がいるような場所でレアな物を狙ってるんだ」

 「一般の人間では手に入りづらい物ほど価値があるからな。見習い冒険者ならお小遣い稼ぎで採石する場合もあるがな」

 「価値はスパイラルゴートホーンの上なんだな。だったら採石しても高く売れないんじゃないか?」

 「価値と言うのは常に変動するし、物の価値というのは人それぞれだから一概にそうとも言えんよ。それに今回は売るために採るわけではない」

 「分かるわあ。俺のお気に入りの上着をダサいって言う妹に聞かせてやりたいよ」

 「それはなんとも言えんが……。まあ、とにかく探しに行くか」

 買い物を済ませた後、登山届けを提出して早速山へ登りにいく。

 道が広くて草木がない分、精神的な体力の消耗はそこまでないのでどんどん登っていく。

 道中それらしき岩石を見つけるがそれではなかったらしく、更に進んでいく。

 「火口付近まで来たようだけど。この辺で探してみるか?」
 
 そう言うとアリエルはリュックから石を削る用のノミを取り出して、岩をノミとハンマーで叩いていく。

 いくつかの岩から削り取った岩の破片を水の中に入れては、何かを慎重に確かめているようだ。

 どうやら納得のいくものはなかったようで、場所を移して同じ行程を繰り返す。

 何度も岩を削っていくと、ようやく納得するのがあったのか、その岩を今から割っていくらしい。

 岩は二メートル程あってそれなりの大きさがある。

 「うむ、いいだろう。ソウタちゃんリュックからハンマーを出してくれ」

 言われたものを手渡すと、アリエルはゴーグルを装着して、岩を割る準備をする。

 「さあ、ここからはソウタちゃんの出番だ。このハンマーでかち割ってくれ」

 俺も装備を整え、片方に刃が付いたハンマーで指定された所に刃をあて、その上から普通のハンマーで叩いていく。

 渾身の力を振り絞り叩いていくと徐々に大きな亀裂が入っていき、ドーンと大きな音を立て真っ二つに割れる。

 割れた断面は綺麗な黒色をしており、キラキラと光を反射している。

 「はぁはぁ、また筋肉痛だよ。でも以外にすんなりいったな」

 「うむ、石を効率良く割るにはを見付つけることだ。ただガムシャラに叩いてもこうはいかんのよ」
 
 「アリエルが言った箇所がそうだったんだな。にしても綺麗な石だな」

 「では、それを袋に詰めて下山するとしよう」

 割った石を厚手の袋に詰めて山を下りていく。

 「高さはあるけど、そんなに重くないから背負って持って帰るか」

 疲れた体に鞭を打ちひたすら来た道を戻っていく。

 もう少しで火山の入口まで到着しそうな所まで下りていくと、正面に人影立っている。

 こんなところに人なんて来るんだな。道中誰とも会わなかったし、今から登るにしては随分遅い時間だな。
 
 徐々にその人物との距離が縮まっていき、立っている人物の顔がはっきりしてくる。

 えっ!? あいつはまさか!
 
 「久しぶりだねソウタ。僕のこと覚えているかな?」

 声の届く距離まで近づくと見たことがある青年が立っていた。

 サーシャ達の護衛をしてるときに襲ってきた針男だ!

 「お、お前は! えーと……なんて名前だったっけ?」

 「忘れたのか! まあいいさ、それよりこの間の続きをやろう」

 「いや、ちょっと待て確か数字の名前だったような気がする」

 「エイドだ!」

 「あっ! そうそう、そんな名前だったな。今日はいきなり攻撃を仕掛けてこなんだな?」

 「目的が違うからね。ソウタにはちゃんと僕の強さを分からせてうえで殺してあげようと思ったんだ」

 「俺にやられたのが悔しかったみたいだけど、強さを分からせる前に何者なのかくらい教えろよ。それに今は取り込み中だから後でいいか?」

 「ダメに決まってるだろ。なんのために、ここまで来たと思ってるんだ」
 
 どうする? アリエルを巻き込むわけにもいかないし、俺も無事で済むとは限らないぞ。

 せめてアリエルだけでも逃げてもらたいが。

 「アリエルは先に行っててくれないか? どうやらこいつは俺に用事があるらしい」

 「その子はソウタちゃんの友達か?」

 「そんなわけないだろ! 以前こいつに殺されかけたときフレイムボムでなんとか追い返したんだけど、俺を狙ってまた来やがったんだよ」
 
 エイドは戦闘態勢をとって今にも攻撃をしてきそうだ。

 仕方なく俺も荷物を置いて剣を抜こうとするが、アリエルから待ったをかけられる。

 「それではなく、この木剣を使うといい。それに逃げたら攻撃されそうだから、私はここで観戦させてもらおう。いいか? 力や目にに頼らず心と身体を一致させて戦うんだ」

 アリエルは山羊のときに使用した木剣を俺に投げ渡した後、自身は少し離れた場所に移動する。

 「賢明な判断だねあのオバサン。ただ、そんなもので僕と戦わせるのはどうかしてるとしか言いようがないね」

 「俺もそう思うよ……」

 心と身体を一致させるったって、そもそもアリエルは戦士でもないのに何であんなこと言い出すんだ。

 相変わらず支離滅裂なことばかり言ってるけど、何でかあの人の言うことを聞いてしまうんだよな。

 木剣を握りしめ、相手に意識を集中させる。
  
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