念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

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第56話 リネット 魔法使いに憧れる

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 サーシャは一心不乱に食事を貪る三人を見て注意する。

 「ちょっとリネット、フィオ、そんなお行儀の悪い食べ方しないの。ゆっくり噛んで食べないと。ソウタさんまでそんなに急いで食べて……」

 「ははっ、ごめんごめん。お腹が空いてるのもあるけど、アグリチキンのグリルってやつが美味すぎてな」

 「そうよ姉さん。旅の恥はかき捨てって言うじゃない。異世界で食事なんてそんなに食べる機会ないんだから、今のうちに食べとかないと」

 「確かにこの世界の食べ物は美味しいですね。私達の世界にもありそうで無いような味ですもの」

 「そういや、みんなの世界ってどんな感じなんだ? 俺の世界では料理とかこんなもんだけど、この世界とは全然別物だよ」

 「そうですね。私の世界はこの世界より少し近代的だと思います。魔法も無いですし、鎧なんかも着てる人間はいませんよ」

 「へえ。いつかそっちのイストウィアだっけ? にも行ってみたいな」

 「でも、ソウタさんなら私達に協力したということで招待することが出来るかもしれませんよ?」

 「本当か!? それは楽しみだな。この世界だってまだまだ見て回りたいものが沢山あるから、早く問題解決させないとな」

 「私としても是非とも遊びに来てほしいです。それとソウタさんの言う通り、時間があればこの世界も旅してみたいですね」

 「いいわね! 落ち着いたら改めてこの世界を楽しみましょうよ」

 フィオが口一杯に料理を頬張りながら、俺達の話に乗っかってくる。

 「そうだね! みんなでのんびり観光しようよ。私もソウタ君の世界に遊びに行ってみたい」

 「おお! そうだな! 俺は庶民だから大したもてなしは出来ないけど、観光案内くらいならするぞ」

 「お前達。まだ何も解決してないどころか、元の世界に帰れるかも怪しいんだぞ。まあ、私もそれは楽しみではあるがな」

 マリィは盛り上がってる俺達にそう言うが、どことなく楽しそうではある。

 「確かにまず四人がイストウィアに戻れるかか肝だな」

 「仲間が助けに来てくれるとは思うんだけどね。今だ連絡が取れないところみると、私達はこの世界に置き去りにされたのかも……。いや、きっと誰かが助けに来てくれるはずよ」

 リネットは悲哀の表情を浮かべるも、仲間への疑念を払うように自分の気持ちを表す。

 「そうだな。仮に上の連中に嵌められていたとしても、この異変に誰かが気付いてくれるさ」

 「やること多すぎるわよね。私達を狙ってる奴等にアークの連中でしょ、それにイストウィアに戻る方法も考えないといけないなんて大変よ」

 「それにグラヴェールのこともある。今のところアークの連中はSSランクのギフトを全て奪うまでは使うつもりは無さそうだ。残りの二つのギフトをどうにかして守りきれれば、被害は少なくて済むかもしれない」

 「一番の危険は多分そのギフトでしょうからね……。あの城から発射されたビームでも十分な威力があったこと考えると、あれよりも当然上のはずよね」

 「他にもあのような兵器や魔法はあるだろうが、世界の形を変えるほどのものはそれくらいだろう。それかそれらのギフトを使って大きな戦争が始まるかどうかだろうな」

 「あっ! そういえばあの勇者達もスゴい強くなっててビックリしたわ。以前はあのヘンドルってやつ手も足も出なかったのに、今回は立場が逆転してたわね」

 「そうなのか? しかしあれは少し危険な感じがするな。そういえばソウタはさっき汗をかいていたがもういいのか?」

 「今はもう何ともないよ。近くで誰かが戦ってる感じがしたと思ったら急に体が熱くなってさ。しばらくすると普通に戻ってたな」

 「私には分からなかったがソウタにはそう感じたのか……。あの時は多分ギフトを強奪したアークの軍勢と、グラヴェールの軍が戦ってたはずだ。もしかしてジュラールが来ていたのか?」

 「それは分からないけど一つ気になるのがさ。そんな大事なギフトなんだから、普通誰にも触れさせないよう厳重に保管するはずだろ? それを簡単に二個も奪われるなんて、あまりにもずさんじゃないか?」
 
 「それだけ強力で普段使うことがなければ当然そのはずだがな。もしかしたらジュラールがそれらをどうにか出来るほどの人物なのかもしれない。あるいは意外とその辺に置いてたりすのかも……それはないか」

 マリィは自分の発言に失笑して、フルーツを口に運ぶ。
   
 「それにしてもシブサワの動きを止めたさっきの魔法良かったじゃない。あいつ結構バカ力みたいだったし、それを拘束するのは大したものよね。あんなのいつ使えるようになったのよ」

 リネットは脱出のことを思い出し、俺の先程の使った魔法について語る。

 「あれは移動中に思い付いたんだ。ギフト無しで魔法を使うのは難しいけど、練習すれば色んな魔法が使えるって聞いたことがあってさ。そこで唯一使える火の魔法と得意の投げ縄をイメージしてやったら発動したんだよ」

 「そんな風にして使えるようになるのね。ねえ、その魔法石があれば私にも魔法って使えるのかな?」

 「俺でも使えるから使えると思うよ。でも石だけじゃなくて、魔法のギフトをどこかで購入しないといきなりは無理だよ。それに、リネット達はエスプリマの方が使い勝手がいいんじゃないか?」

 「今度試してみようかしら。エスプリマもいいけど美少女魔法使いってやつにも憧れるのよねえ……」

 リネットはテーブルに肘をつき、両手を頬に当てながらうっとりした表情でどこか遠くを見つめる。

 どうやら魔法を使ってる自分の姿を想像してしてるらしい。

 「ははっ……美少女、ねぇ……」

 「なにか言った?!」

 リネットが空想するのを止めて俺の方がを睨んでくる。

 「ま、まあ、あんな武器出せるんだから練習すれば色々使えるはずだよ。ただ、売ってるのはBランクまでだから即戦力というわけにはいかないだろうけどな」

 「いいのよ。気分の問題なんだから。せっかくこの世界に来たんだからその辺も使ってみたいでしょ」 

 「それは解る気がするな。俺の世界にも魔法なんて無いから、大魔法使いや剣士って憧れの存在だもんなあ」

 フィオとサーシャも魔法に興味があるのか使い方を聞いてくる。
 
 「ねえ! それって私にも使えるかな? 私もバババッ! って魔法を出してみたいよ」

 「大丈夫だと思うよ。たとえフィオが魔法のイメージが出来ないとしても、魔法のギフトがあればそこを補ってくれて使えるはずだ」

 「それってイメージ一つで使えるものなんですか?」

 「多分だけどそういうものらしいよ。サルブレムに戻ったら知り合いのギフト屋に色々聞いてみるといい。変わった人だけど信用出来る人だよ」

 「そんな知り合いの方がいるんですね。では、そちらもお願いしようかしら。私も魔法だけではなくギフトに興味がありますね」

 そっか。みんなやっぱり魔法とか好きなんだな。最近は固い話ばかりだったから、たまにはこういうのも悪くないな。

 夜も更けてきたので店を出て、俺達は疲れた体を休ませることにする。
 
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