念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

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第70話 なんだかんだで疲れたよ

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 クリケットが俺のことをそう紹介して、団長も『農夫』というワードで何かを閃いたかのように顔を軽く空に向ける。

 「おお! おお! そういえばそんなこともあったな。セレーナ殿が手違いで召喚した勇者候補がいるとかいないとか」
  
 俺が表には出さないように内心悔しがっていたら、団長が笑いながらフォローをしてくれる。

 「しかし、あの女の強さを知らなかったとしても、あいつ等の前に出ていくのはかなりの勇気がいることだろう。あの三人の勇者よりもよっぽどこの少年の方が勇気がある」

 「それは言えてますね。元々期待はしてませんでしたが、あそこまで酷いとは思いませんでした」

 「そう言うな。いきなり召喚されて戦えったって無理だろう。彼等も町人と同じで被害者だ」

 「お言葉ですが団長。彼等の報酬は破格なんですから、こういうときにしっかり働いてもらわないと困ります!」

 クリケットから語気を強めて言われたウラガン団長は、少し困った顔をして苦笑いをする。
 
 「ところで少年。あの女を知らないなら何故ここに来たんだ? それに、その後ろいる女の子達は…」

 ウラガン団長にそう問われてしまい、今度は俺が苦笑いをしてしまう。
 
 「ははっ、いや、あのそれは……」

 と、あれこれと言い訳を考えていたら、クリケットが横から口を挟んでくる。

 「とりあえず傷は無いようですが念のため診てもらいましょう。それから少年も後で城まで来るように! 分かったな?」

 た、助かったぁ。

 しかし、この人俺が喋ろうとすると必ず割り込んでくるんだよなあ……。まあ、今回はそれに救われたけどさ。
  
 「じゃあ明日にでも伺いますよ」とだけ答えると、クリケットは団長や他の兵士達と共にこの場から引き上げてゆく。

 俺達もこれ以上問い詰められないように、そそくさと自分の家に帰ることにする。

 幸いにも町にはほとんど被害はないようなのでひとまず安心する。

 イネス先生やエクシエルさんの話も聞きたいし、サルブレムも今後どうするんだろうか。

 セレーナとアリエルも結局帰ってこなかったから、二人に相談出来ないのが辛いところだな。  
 
 家に着くとリネットがドサッ! と全体重をかけてソファーに座る。

 「それにしても参ったわね。あっという間に盗られちゃったし、あんな壁出せれたら追いかけようがないわ」

 「新しい世界がどうとか言ってたから、すぐには使わないと思いたいな」

 「それはそうかもしれないけどさ。最終的な問題はどうやってアークの連中を止めるかよ」  

 「それだよなあ……。この世界の四大国がお互いに協力して、ようやく止めらるか止められないかくらいだろうしな」

 俺達がどうするか考えていたら、サーシャが人数分のお茶を入れて運んで来てくれる。

 「まあまあ、とりあえずお茶でも飲んで落ち着きましょう。イネス先生とエクシエルさんも来てくれたことだし、きっといい解決方法が見つかるわ」

 イネス先生はサーシャからお茶を受け取りズズッと一口すすり、ゆっくりと口を開く。

 「みんなご苦労だったね。話したいことは沢山あるけど、まずは先にそっちの状況を聞こうか」

 サーシャとマリィが現在置かれてる状況と、こっちの世界で起きてることをイネス先生とエクシエルに伝える。

 「なるほどねえ。つまり二つの大きい国が色んな小国苛めてたら、小国の人間達がリーダー従えて復讐しにきたわけだ」

 簡単に言うとそうなるけど、なんだかすごく小さな争いに聞こえるな……。

 「それから、この話を教えてくれたのはこのソウタさんなんですよ。恥ずかしい話ですけど、私達は謎の敵に狙われていてこの世界のことをあまり調べられなかったんです……」

 「仕方ないさ。話を聞く限りこの世界をどうこうしてる場合じゃなかっただろうからね」

 「いやいや、俺なんか別に大したことしてませんよ。一緒に行動して知ったことも多いし、みんなも大変な中この世界のこと救おうとしてましたよ」

 「いや、私からもお礼を言っておくよ。この子達は私の大事な教え子だからね。あんたが協力してくれたおかげで生き延びたのかもしれないよ」

 イネス先生は俺にそう言った後、サーシャの方に向き直りイストウィア側の状況を説明する。

 「こっちも詳しいことはまだこれからなんだがね。ただ、今回の作戦で招集された全員が、ある男の息が掛かった連中で結成されていることが判明したんだ。あんた達を除いてね」
 
 「それってもしかして……オルビルト局長……ですか?」

 サーシャが困惑気味にその名を口にすると、イネス先生は目をつぶり頷く。

 「そうさ。ジャン統括管理局局長、及び今回の作戦の立案者であり『異世界特別災害対策本部』設立してそれを指揮した男さ。そしてあんた達に通信を取れないように指示してたのもオルビルトだろうよ」

 「どうして局長が私を……」

 「まだあんたを狙ってるかどうか判明してるわけではないけど、オルビルトがあんた達を選抜してこの世界に送ったのは事実だからね。まさかあんたとあんたの父親の論文が狙われてるなんて、私も今聞いてビックリさ」

 「でも、もしそうなら私達のような新米が選抜された理由も納得出来ますね。私達がこの世界で殺されたとしても戦死扱いにも出来ますし、死んでも誰も不審には思わないでしょうからね……」

 下を向いて落ち込んだ様子のサーシャにエクシエルとマリィが励ます。

 「でもねサーシャ。あなた達が選ばれたときは私も心配したけど、あなた達なら必ず任務を遂行出来るとは思ってたから強く反対はしなかったのよ」

 「そうだ。エクシエルさんはそれ以外のことでも今回の任務に違和感を覚えていたから、念のためにと私にお守り預けたのだ。決して私達を信用してなかったわけではないのだぞ」

 「ありがとうございますエクシエルさん、マリィ。では、この世界の危機というのは本当のところどうなんですか?」

 「それは本当みたいよ。ただ、当初の予測と違って被害がどのくらいになるのかも、私達が介入してどうにかなるのかも分からない状況らしいわ」

 「それは本当なんですか。では引き続き任務を遂行しないといけませんね」

 「私達はあなた達からの連絡がないと聞いて、とりあえず安否を確認するために二人だけで転移してきたの。ですが、こうなった以上あなたには一度帰ってもらって、新しい人間を派遣してもらいます」

 「いえ、出来ればこのままやらせてもらえませんか?」

 その提案にサーシャが反対をしたので、エクシエルの顔がやや険しい表情になる。

 「相手はエスプリマも使えるみたいだし、あなたを狙ってるのは局長でほぼ間違いないのよ?」

 「それは分かっていますが、せっかくここまで来たんで最後までやりきりたいんです。それに今回の作戦が上手くいったあかつきには、私専用の研究室をくださる約束なんです」

 「そう……そんな話があったのね。サーシャの気持ちは分かりました。では、今日はみんなも疲れてるだろうし後日改めて話しましょう。

 本当に起こりうるこの世界の危機利用してみんなをこの世界に送り込んだのか。

 そのなんとかってやつ随分と巧妙な罠を仕掛けてきやがってるんだな。 
 
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