念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

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第90話 新居が決まったよ

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 三人の勇者達がイネス先生達に気付き、各々が雑巾を手に持って整列をする。

 「壁拭き! 終わりました!」

 以前真っ先に土下座をした筋肉質の男が代表して報告する。

 「ふむ……まあいいだろう。じゃあ次はあそこにある武具を磨くんだ」

 「今終わったばっかりなんだからちょっと休ませて下さいよ」

 「掃除を始めてまだ一時間も経ってないよ。あんた達もそれなりの報酬貰ってるんだったら、口答えしてないでやることやらなきゃダメだよ!」
 
 元サラリーマン風だった男が汗だくになりながら意見するも、あっさり却下されて三人は渋々武具を磨きにいく。

 ひえー! 今まで散々好き勝手やってたみたいだから同情は出来ないけど、これからしごかれると思うとちょっとだけ可哀想だな。

 近くにクリケットさんが居たので話を聞いてみることに。

 「こんにちはクリケットさん。あの三人はなんでイネス先生に怒られてるんです?」

 「来ていたのかソウタ。いやなに、イネスさんがあの三人のことを任せてほしいと言ってな。それで三人を連れてきたらいきなり説教が始まって、その後はあのように掃除をさせているのだ」

 「早く城に来たもう一つの理由がこれか。まあ、あの三人にはいい薬だろうけど」

 「正直彼等には手を焼いていたから、ああやって掃除の一つもさせてくれるのは助かる。君は何か用事でもあったのか?」

 「ええ、ほとんど一応終わりました。後は仲間が来てからになりますね」

 「そうか……。だったら私と戦わないか? 君には借りがあるからな」

 そう言って俺の返答を待たず三人が磨いてる武具を持ってこようとする。
 
 「ちょっ! 止めて下さい! 今日はやらないですよ!」

 「ではいつにする? 明日なんかはどうだろうか? いや、やはり時間があるなら今からの方が……」

 「クリケットさんとはもう戦いませんよ! 戦う理由も無いですしね」   
 
 「そっちには無くてもこっちはある。このままおめおめと引き下がるわけにはいかんのでな。どうしてももう一度戦ってもらうぞ」

 参ったなあ。平然と話をしてくれるから気にしてないかと思ったけど、実は結構根に持ってるとかじゃないだろうな。

 俺がどうにかその場をやり過ごそうとしてると、リネット達が稽古場に顔を出す。

 おっ! タイミング良く来てくれたか!

 「ほ、ほら、みんな来ましたし、その件はまた次回話をしましょうよ」
 
 「邪魔が入ったか。仕方ない、今日は止めておいておくか」 

 クリケットはあからさまに不満そうな顔をして他の団員に稽古をつけに行く。

 リネットとフィオが俺の元に来て何があったのか聞いてくる。

 「また喧嘩でもしたの? クリケットさん不機嫌そうな顔をしてたわよ」

 「この間俺に負けたのが悔しかったらしくて再戦しろって言ってきてさ。二人が丁度来てくれたから良かったよ」

 「あー、そういうことね。みんなの前で恥じをかかされたから、あなたのことを恨んでるのね。うん……きっとそうに違いないわ……」

 うんうんと頷きながら俺のことを憐れむような目で見てくる。

 「おい! その目はやめろ! というか勝手に俺が恨まれてることにするなよ。それで? 来たのは二人だけなのか?」

 「あはは、案外本当にそうだったりするかもよ? 姉さんとマリィは残って家の掃除をしてくれてるわ。エクシエルさんもそれが終わったら荷物を持ってこっちに来るって」

 「俺もそこの部分気になってるんだからあまり怖いこと言うなよ。まあ、今日の用事は家を見せに連れて行ってもらうことくらいだしな」
 
 二人を連れてウラガン団長に話を聞きにいくと「ちょっと待っててくれ」と言って稽古場から出ていく。

 待ってる間にリネット達はイネス先生に挨拶をする。

 「こんにちは先生。私達が起きたときにはもうこっちに来てらしたんですってね」

 「みんなもまだ疲れてるだろうから、先に来たんだ。昨日はゆっくり寝れたかい?」

 「はい。おかげさまで元気を取り戻しましたよ。この後家を見に行こうと思うんですけど先生も一緒に行くでしょ?」  

 「私はあの勇者達をしっかり見張らないといけないからみんなで行っといで。それで、新居にはいつから住むようにするんだい?」

 「ソウタとなんとかって国に行くんで、今日にでも新居に引っ越そうかって話しにはなってます」

 「早い方がいいだろうからね。じゃあ今度来るときにでも場所を教えておくれ」

 「おばあちゃん行かないんだ。もしかして今日からこっちに住むようにするの?」

 「うん? その予定だけどね。……だったら今日はみんなのところに行くしようか。後で引っ越しが終わったら迎えに来てくれるかい?」

 イネス先生が少し考えてそう答えると、少し寂しそうにしていたフィオの顔に笑顔が戻る。   

 「うん、そうしようよ! じゃあ後でまた迎えに来るね」

 俺がそれをホッコリとした気持ちで見ていると、ウラガン団長が戻ってくる。
   
 「待たせたな。これが住居の地図と鍵だ。俺も詳しくは知らないが城の近くらしいぞ」

 「ウラガン団長にわざわざこんなことまでしてもらってすみません」

 「他の者に任せたかったが、生憎手が空いてる者が居なくてな。今度会ったらロンベル大臣にもお礼を言っておけ。あの人がすぐに動いてくれたから早く家が見つかったんだ」

 「家も借りてたんでそのお礼もしたいですし、今度改めて会いに行きます。じゃあちょっと引っ越しだけ先にしてきますね」

 「今日はもう来ないのか? 来ないのなら少し話しがある」
  
 「後でイネス先生を迎えに来るんでまた来ますけど、何か用事ですか?」
  
 「馬車の手配とかもあるから少しだけな。ついでにフィオちゃんと一緒にこの稽古場に寄っていってくれ」

 俺とフィオが首を傾げながらそれに了承し、ひとまず新居に向かうことにする。

 城を出て地図を頼りに家を探し歩いてると二階建ての白い一軒屋にたどり着く。

 「ここね。へえ、良い家じゃない。早速中に入ってみましょうよ」

 リネットはウキウキしながら預かった鍵でドアを開け中には入っていく。俺とフィオも後に続いて部屋やキッチンなどを見て回る。

 ロンベルさんところほど広くはないけど、四人で住むには十分だろう。

 「部屋もキレイだし良いところじゃないか。家具とかはまだ無いから後で買い揃えないとな」
 
 「そうね。ロンベルさんが用意してくれただけのことはあるわ。家具も買ってくれるのかしらね」

 リネットがバスルームから返事をして戻ってくる。

 「あなたの家は向かいにあるらしいわ。そっちも行ってみましょう」

 「そうなのか? だったら簡単に行き来出来るから飯とか一緒に食えるな」
 
 一旦外に出て向かいにある俺の家を確認するもリネット達の住居との差に驚く。

 小っちゃ! 俺の家小っちゃ!

 他の住居に挟まれポツンと佇むその家は、一軒屋だがそこそこ年季も入っていて、見るからに二階は無さそうだ……。

 リネットから鍵を預かり、僅かな期待を膨らませ中に入ってみる。
  
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