念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

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第113話 聞いてくださいよ

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 近くでラスネルさんが仲間の人達と楽しそうに話をしていて、俺に気付くと手を振ってくれる。

 「ソウタ! もう帰ってきたのかい?」

 「みんなもまだ疲れてるでしょうからすぐに出てきました。それににしてもスゴい人溜まりですね」

 「事件解決の噂を聞いてどんどん集まってきてるね。今日はこの調子だとあっちこっちでどんちゃん騒ぎになりそうだよ」

 ラスネルさんは周りを見て嬉しそうに語る。

 「テヘルさんは中にいるんですかね?」

 「中にいるはずだけど今頃大忙しだろうね。ちょっと中に入ってみよう」
 
 人をかき分け中に入ると、テヘルさんが町の自警団みたいな人達と何か話している。
 
 ラスネルさんはそれには構わずテヘルさんを呼んで、その間に割って入っていく。

 「ソウタが来たよテヘルさん」

 「おおソウタ君! 今ちょうど君達のことを話していたんだ」

 テヘルさんが集まった人達に声を張って俺を紹介する。

 「みんな聞いてくれ! 失踪者の犯人を突き止めたのは、他国から来たこのソウタ君達なんだ! 彼等のおかげで今回の騒動を収めることが出来た!」

 それを聞いた周り人達から歓声上がる。

 それに対して少し恥ずかしくなり、縮こまって頭を下げていたら、テヘルさんが周りを落ち着かせて話を続ける。 

 「そして、彼は事件の首謀者と見られるムングスルドと戦うために仲間を探しているんだ! だから今度はみんなの力を彼に貸してやってくれ!」 

 演説が終わるとその場にいる人達からテヘルさんに拍手送られる。 

 「いや、なんだか私が褒められてるみたいで恥ずかしいな」
 
 「協力を呼び掛けてくれてありがとうございますテヘルさん!」

 「せっかくこれだけの人間が集まってるからな。きっと協力してくれる人間も現れるだろう」

 「何人かでもそうなってくれたら嬉しいですね。そうじゃないとしても、この町がいつも通りに戻るなら苦労した甲斐もあったというものです」

 「もうすでに活気が戻りつつあるようだよ。みんなその辺で一杯やってるらしいからな」

 「テヘルさんも早く飲みたいんじゃないですか? 出来ることがあれば何か手伝ますよ」

 「いやいや、ソウタ君も一日中動き回って疲れたろう。聴取は明日にして今日はもう帰ってゆっくりしてくれ」

 「そうだよ。ソウタ達はここ何日も働きづめだったんだから、帰って休んだ方がいいよ」

 テヘルさんとラスネルさんにそう言われ、今日のところは帰って休むことにする。

 外はもうすっかり夜になっていて、辺りの酒場から賑やかな声が聞こえてくる。

 もうこんなに暗くなっているのか。色々あってあっという間の一日だったな。

 四人にはしばらく病院にいてもらって、その間にファグルドさんに会いに行くか。

 一人で宿屋に戻り食事も取らず、そのままベッドの上で深い眠りにつく。

 それから二日が経ち、リネット達の容体も良くなってきて明日には退院出来るとのこと。

 その報告を受けた後、俺はテヘルさんとゼダックさん、それとラスネルさんと一緒に馬車でオルディに向かう。

 「良かったね! 四人共明日には帰ってこれるんだ」

 「みんな元気そうにしてましたから、多分大丈夫だと思います」

 「だったらあの嬢ちゃん達にもいい報告しねえとな!」

 「そこはファグルドさん次第ですけどね。協力してくれるといいんですが」

 馬車の中で三人と事件のことなど話をしているうちに、目的地のオルディに到着する。

 今回はテヘルさんが会う約束をしてるらしくて、城に着くとすぐにファグルドさんのところへ案内される。

 依然来たときと同じ部屋に通され、中でファグルドさんと複数の人達が俺達を待っていた。

 ファグルドさんは装飾が施された椅子に座っていて、俺達に労いの言葉を掛けてくれる。

 「全員ご苦労だったな。話は聞いている。まさかラルフォードが犯人だったとはな」

 「いや、それは私も同じですよ。まさかうちに所属しているデンバーが犯人の一人だなんて思いもしませんでしたからね」

 「うむ……気づかぬうちに虫が潜んでいたようだな。それで、そちらの御仁が前に海賊を捕まえて、今回も協力してくれたゼダック殿か?」
 
 ファグルドさんがゼダックさんの方を見ながら、テヘルさんに問い掛ける。
 
 「ええ、こちらがソウタ君をこの国に船で運んできたゼダック船長です」

 「一度ならず二度までも我が国がお世話になったようですなゼダック殿。国を代表して礼を言う」

 ファグルドさんが椅子から立ち上がりゼダックさんに軽く頭を下げる。

 「ああ、そんな固っ苦しいのはいいからよ。それよりもぼうずに協力してやるのか?」

 ゼダックさんが面倒臭そうに手を横に振って俺達のことを聞いてくれる。

 「そうだったな。まさか本当に解決するとは思わなかったぞソウタよ」

 「色んな人の助けがあったからこそです。俺達だけだったら無理だったかもしれません」

 「話を聞いてやる約束だったな。して、お前の頼みというのはなんだ? 改めて言ってみろ」

 「前にお話したように、ムングスルドとグラヴェール、それにアークをどうにかするために人を貸してほしいんです」
 
 「ふむ……」

 ファグルドさんがどうするか迷った様子で髭をいじりながら黙っていたら、ラスネルさんが口を開く。

 「ソウタ達は死にそうになりながらラルフォード達を捕まえたんだよ! 言っちゃあ悪いけど、そこでふんぞり返ってても事件は解決しなかったんだからね!」

 「おい貴様! ファグル国王に向かってなんという口の利き方をするんだ!」

 その場にいた数人の男達がラスネルを咎めるも、ファグルド国王がそれを制止する。

 「よい。その者の言う通りだ。よし! ならばお前達の頼み聞いてやろう! ただし、 サルブレムには手は貸さん、貸すのは飽くまでお前達だ」

 「本当ですか!? それでも全然構いません! ありがとうございます!」

 「正直お前達に期待などしてなかったし、ただの余興程度にしか考えていなかった。だが、見事に犯人を捕まえたからには仕方あるまい」 
 
 「ファグルドさんがそういった機会を設けてくれたからです。あのとき断われていたら今頃諦めて帰ってるはずですから」
 
 「それにな、どちらによムングスルドがこの国に手を出した以上放ってはおけん。今どうやって報復してやるかを考えておったのだ」

 「ムングスルドがすでにこの国へ被害をもたらしてるとは思いませんでした。奴等を放っておいたらまだまだ被害が出そうです」

 「はっはっはっ! だがまあ、楽しくはなってきた! ダルカデルに手を出したらどうなるか教えてやらねばな」

 豪快に笑った後、肘掛けに肘をつき、顔を拳で押さえながらニヤッと笑う。

 「ま、まあ、楽しいかはともかくとして、そう言ってもらえると心強いです」
 
 「やると決めた以上はやるから少し待っていろ。後のことは追って知らす! みな大義であった!」

 ファグルドさんはそう言って席を外し、部屋を出ていく。

 具体的にどうするのか言わなかったけど、大丈夫……だよな?
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