念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

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第138話 ダメでした

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 双方の放った技が同時に発動する。炎をまとった巨大な岩と、紫の雷が天から降ってきてお互いに相殺し合う。

 その衝突で炎と雷を伴った旋風が巻き起こり、遺跡周辺にある全てのものを吹き飛ばしていく。

 お互いの技が拮抗していると思われたその矢先……。俺の放った迦具土かぐづちはウィルの放った霹靂神はたたかみに粉々に粉砕される。

 巨大な岩を貫いた紫の雷はそのまま止まることなく俺に直撃する。
 
 全身に焼けるような痛みと痺れが同時に走り、喉の奥から悲鳴を上げる。

 「ぐっ! はあ!」

 俺はなんとか倒れるの堪え、剣を杖にして体を支える。

 後ろからリネット達の声が聞こえるが、吹き荒れる風の影響で何を言ってるのか耳に入ってこない。

 瀕死の俺を見たウィルが剣を納めて歩み寄ってくる。

 「結果は前と変わらなかったようだな。お前の負けだ。素直に敗北を認めろ」

 「はぁはぁ……。何勝手に剣を納めてるんだ? 勝負はこれからだぞ」

 「今のがお互い出せる最高の技のはず。それが私に通じなかった以上、お前に勝ちは無い」

 「実はな……あのときには使わなかったけど、俺にはまだ取って置きがあるんだ」

 「……なんだと?」

 俺は地面から抜いた剣に魔力を吹き込む。

 「【燠火おきび終焉しゅうえん】」

 赤く染まっていた黒い剣が更に熱を帯びて、白色に変化していく。
 
 その様子にウィルは僅かに動揺して剣を再度抜く。
 
 「それはバダードの……習得していたのか?」

 「ああ、魔力が減って不安はあったけど、技そのものは出るようだ」

 「どうして前は使わなかった?」

 「迷いがあったからだ……。バダード達の遺言を守りたいという気持ちと、ラティエを殺した帝国に復讐をしたいという気持ちの両方あった」

 「お前が我々の復讐を止めようとして、私と一騎討ちをしたとき、そんな心情があったのか……」   

 「俺だけじゃない。あそこにいる三人だって本当は敵を取りたかったはずだ。でも、俺達はバダードの意志を継ぐことにしたんだよ」

 「だが、仮にあのとき私達が復讐を果たさず、お前達が世界の調和を保とうとしたところで、結果は変わらなかったはずだ」

 「確かにそうかもしれない。でもな、それはもう終わったことだし、今更そんなことを言っても仕方ないだろう。俺達の戦いはもう終わったんだ……ウィル」

 「まだ終わってなどいない! それに、そのような台詞は私に勝ってから言ってもらおうか!」

 ウィルの剣に再び紫の雷が帯電し始める。

 「ああ、お前に憑いた過去の怨念は俺が払ってやる!」

 俺は白く輝く剣をウィルに向け、最後の技を使う。

 「これで最後だ! 【灰儘神楽はいじんかぐら】!」

 俺の周囲に炎が激しく舞い上がり、その炎を剣で絡めとるように薙ぎ払う。

 剣に全ての炎が集まって白炎となり、ウィルに飛んでいく。

「受けて立とう! 【霹靂神はたたかみ】!」
   
 空から音鳴り響き、紫の雷が白炎にぶつかる。しかし、白炎の勢いは止まることなく、ウィルとその周辺を呑み込んでいく。

 ウィルが立っていた場所を中心にして爆発が起こり、その衝撃で少し離れてあった遺跡の形が更に変わる。

 遺跡を囲んであった木が燃えだし、辺りに焦げ臭い煙が立ち込める。

 力を使い果たした俺は、剣を鞘に戻してウィルが立っていた場所を見据える。

 そのとき、煙の中からこっちに向かって人が歩いてくる。

 「ま、まだだ……私はここで負けるわけにはいかないのだ……」

 「その体では無理だウィル……」

 ウィルがよろめきながらも剣を構えて戦おうとする。

 「お前の負けだよジュラール」

 煙の中からガレインさんが現れて、よろめくウィルに肩を貸す。

 「負けを認めたくないのは分かるが、これ以上やったら死ぬぜ?」

 「止めるなガレインよ。私はまだ戦える……」

 「バカが! 勝負はもう着いたんだよ! 自分の剣を見てみろ」

 そう言われ、ウィルは自分の剣が折れていることに初めて気付く。

 「……そうか……私の負けか……」

 そう呟いた直後、戦いの終わりを告げるかのように雨が降りだす。

 「これでお前はもうウィルじゃない。お前はジュラールで俺はアカツキソウタだ。これからは過去のことを忘れて今を生きろ」

 「今を……だと?」
   
 「そうだ。こんな世直しみたいなことする前にディアナの気持ちに答えてやれ。ラティエの復讐はともかく、あいつはそれ以外のことは望んでいないはずだ」

 「そんなことお前に言われるまでもない。ディアナのことはちゃんと考えている」
 
 「お前の周りには沢山慕ってくれるやつがいるんだから、そっちにもちゃんと目を向けて大事にしろよな」

 「お前に言われずとも分かっているさ……だが、負けた私には何も残らないだろう……」

 「アークの連中はお前の力だけに惚れ込んで付いてきたわけじゃないだろう? それとアナスタシアがお前のこと心配してたぞ。帰って顔くらい見せてやれよ」

 それを聞いたガレインさんが何かを閃き、俺の後に続く。

 「良いことを思い付いたぞ! 俺がここに来ることは姫には内緒にしてるんだがな。このままお前を連れて帰れば、姫もさぞお喜びになるに違いない!」

 「勝手に決められては困るが、まだ私のことを気にかけてくれていたとはな……」

 雨で火と煙が収まり、リネット達とアークの人間が集まってくる。

 「勝ったのねソウタ!」
 
 リネットがタオルを持って駆け寄ってくる。

 「なんとかな。でもまだ、全て片付いたとは言えない」

 受け取ったタオルで頭を拭きながら、ディアナ達の方を見る。

 ディアナは何も言わずウィルに肩を貸し、ファクルは下を向いたまま拳を握りしめる。

 「そんな……ジュラール様が負けるなんて……。これからというときになんということだ!」

 ガレインさんが打ちひしがれたファクル達にウィルが負けたことをはっきりと告げる。

 「アークよ! よく聞け! この勝負ジュラールの負けだ! 俺は立会人として中立の立場でこの勝負を見届けた。それでも納得がいかないやつがいるなら俺が相手になってやる!」
 
 「ガレイン団長……」

 「いい勝負だったなファクル。ジュラールは勝負に負けたがアークは自由だ。お前達の好きにするといい」
 
 ガレインさんの後ろからアリエルが出てきて俺とウィルの肩を叩く。
 
 「うむ、確かにどっちが勝ってもおかしくない、良い勝負だった。二人ともよくやった!」

 「実はもう魔力がすっからかんだから、あれでダメだったら負けてたよ。それからディアナ……悪いけど約束は守ってもらうぞ」

 俺は少し後ろめたい気持ちでディアナに確認を取る。

 「ああ、約束は守ろう」

 ディアナは俺にそう言った後、悲しみと安堵が入り交じった複雑な表情で、静かに一人言を呟く。   

 「いや……これで良かったのかもしれん……」
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