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第148話 続々と

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 三人と別れた俺は少し小走りで城に向かう。

 まだ、昼過ぎだから慌てなくてもいいんだろうけど、ロルローンとアークの人達が着いてるからな。話をするだけで相当時間が掛かるだろう。

 カフェから城の城門前に着き、少し呼吸を整えてから城の中に入る。

 誰かいるかもしれないのでひとまず合同会議室へ足を運んでみることに。

 会議室でリネットとラスネルさん、それにストレイングさん達が話をしている姿を見つける。
 
 三人に声を掛けに行くとストレイングさんが俺に軽く手を上げる。

 「よおソウタ! 俺達も到着したぞ」 

 「さっき、聞きました。結構早く着いたんですね」

 「まあ、今の俺達はあの二国を倒すことくらいしか目的は無くなったからな」

 「全て終わった後はどうするんです? アークに残るんですか?」
 
 「いや、元々世界を変えるなんて大それたことは考えてなかったからな。この戦いが終わったらそのときまた考えるよ」

 ストレイングさんのその言葉にラスネルさんが反応する。

 「あんた達もダルカデルに来なよ。あそこなら自由気ままに暮らせるし、面倒なことは何もないよ」

 「ははっ、それもいいかもな。いずれせよ先にあの二国を片付けてからだ」

 「そういえば、ファクル達はどこにいるんです?」

 その質問にはリネットが代わりに答えてくれる。
 
 「そうそう、今ロムルさんのところにファクル達とロルローンの人が話に行ってるわ。そのことでソウタに話があるってウラガン団長が言ってたわよ」

 「じゃあちょっと稽古場に行ってみるよ。ところでサーシャとマリィは一緒じゃないのか?」

 「姉さんはアリエルさんのところに行ってて、マリィはエクシエルさんと一緒にいるはずよ。でも、ディアナさんにもアークが来たこと伝わってるはずだから、後で姉さんも来るかも」

 「ディアナを呼んでくれてるのは助かるな。というか、今日は会議が休みなのにどうしてリネットがここにいるんだ?」

 「多分あなたと同じよ。フィオがお姫様を連れて帰ってくるなり『アークの人が来たよ!』って言われたから、急いでラスネルさんを呼びに行ったの」

 「それで一緒にいるのか。リネットに伝えた後うちに来たんだな」

 「ラスネルさんとストレイングさんが知り合いって知ってるのは私達しかいないから、フィオが気をきかせてくれたんでしょうね」
 
 「悪かったねリネット。連絡係みたいなことさせてしまって」

 ラスネルさんは頭に手を置いてリネットに謝る。

 「いえ、どうせ今日はみんないなくて暇でしたから。知らせに行けて私も良かったです」
 
 「お詫びと行っちゃあなんだけど、暇なら今から食事でもしてどこか行かないかい? 最近宿屋と城しか往復してないから飽きてきてはいるんだ」

 「いいですね! 私もずっと会議ばかりで滅入っちゃてるところなんですよ。あっ、でもソウタが……」

 「俺のことはいいから行ってこいよリネット。ゆっくり出来るのは今日で最後くらいになるだろうし、確かにここ最近は会議ばかりで疲れてるだろ」

 「ソウタも大変そうだし、私に手伝えることがあれば言ってくれていいのよ?」

 「話もほとんど終わってるから、後はロルローンの人と話すだけだ。それに今日は休みのはずだったから俺も早く帰るよ」

 「そう? じゃあソウタには悪いけどそうさせてもらおうかしら」

 「ああ、のんびりリフレッシュしてきてくれ。ストレイングさんは俺と一緒に来ますか?」

 「そうしよう。ファクル達も待っているだろうしな」
 
 リネットとラスネルさんに別れを告げて、俺達はウラガン団長に会いに行く。

 しかし、稽古場にはウラガン団長はいないようなので、近くにいた団員さんに聞いてみる。

 団員さんはウラガン団長の代わりに俺が来るのを待っていて、付いてくるように言われる。

 付いていった先には美しい彫刻が施された両開きの扉あって、そこで団員さんは足を止める。

 こんな部屋あったんだな。ここにファクル達がいるってことか。
 
 団員さんは二回ノックして扉を開けた後、俺達に中に入るよう促す。

 部屋にはすでに三十人程の人達が長いテーブルの前に座っており、入ると視線が俺達に集まる。

 何とも言えぬ気まずさを感じつつ、軽くその場にいる人達に頭を下げて座る場所を探す。

 近くに立っていた男性が俺達を席に案内してくれ、俺はロムル王の正面に座る。

 両隣にはファグルドさんとディアナが座っていて、周りを見てみればネルデルさんやエクシエルさん達も座っている。

 なるほど……それぞれの偉い人達が集結してるのか。

 「待っておったぞソウタ君! よしよし、これで全員揃ったようじゃな」

 ロムル王が沈黙を破って話を始める。

 「ニフソウイとアークの人達が来たということで、緊急に集会を開いたんじゃ。そして今ちょうど今回の作戦のことを説明していたんじゃよ」
 
 「そうでしたか! いやぁ、話が上手くまとまっての良かったですね」

 「うむ。しかし、全て上手くまとまるかはソウタ君次第じゃがな」

 「へっ? 俺……ですか?」

 「そうじゃよ。ダルカデル、アーク、それと、ニフソウイに呼び掛けたのソウタ君じゃろ?」

 「はあ……そうですけど、それが何か問題でもあるんですか?」

 「問題はこの戦いを誰が指揮するかということになるんじゃ……。例えばサルブレルが指揮を取るということなったら、アークの諸君やファグルド国王は納得すまい」

 「そんなことはないでしょう?」

 「というのもそこには政治的な問題があってな。どこの国が指揮を取ったかで今後の力関係も変わってくるし、アークの諸君にしてもワシの一存で簡単に受けれることは難しい」

 「みんなで協力すればいいと思ってましたから、流石にそこまでは考えてなかったですね……」

 「ソウタ君の言いたいことは分かるが、ことはそう単純にはいかないんじゃよ。すまんのう」

 「じゃあどうするんですか? このままだと話が全然進まないんじゃないですか?」

 「そこでじゃ!」

 ロムル王が突然大声を上げたので、体がビクッとなる。
 
 「おおう……。その感じだと話はもう決まってるんですか?」

 「うむ! ならばソウタ君が今回の指揮を取り、ワシ等がそれに協力するという形を取ればいいとなったんじゃ。それならば問題は全て解決するしの。よいな?」

 あまりにも唐突な話に何を言ってるのか分からず、再度頭の中で整理する。

 ……ちょっと待って! 俺に指揮を取れってこと!?
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