念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

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第165話 我々一生懸命探しました

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 一夜開けた次の日。城の近くに張ったテントから抜け出てアリエルに会いに行く。

 昨日は結局疲れて話せなかったからな。マリィの話だと戦闘後も研究所に残ったらしいから、今日もまだそこにいるだろう。
 
 研究所に向かう道中、まだ早朝にも関わらずすでに戦いの後片付けが再開されていた。

 多くの人達が辺りに散った武器や死んだ敵兵などを運んでいて、他にも石畳の上に付着した血を水で洗い流したりしている。

 こりゃあしばらく動けそうにないか……。唯一の救いはこの国の町とか病院を利用することが出来るようになったことだな。

 俺は片付けてくれる人に感謝しつつ研究所の中に入る。

 研究所の二階にある一室で、何やら物色しているアリエルの姿を見つける。

 「おはようアリエル。やっぱりまだここにいたんだな」

 「おお、ロイか! もう朝なのか?」

 「まだ早朝だけどな。もしかして寝てないのか?」

 「ああ、ずっとここに残ってある資料を集めていたんだ」

 「相変わらず何か気になったときの集中力は異常だな。で、魔獣や生体ギフトについて何か判ったのか?」

 「いや、大事な部分が書かれたものは何も残ってないようだ。処分したのか、あるいはすでに自分の世界に持ち帰っていたのかもしれない」

 「オルビルトがいれば、イストウィアとこっちを往復することくらい余裕で出来そうだしな」

 「昨日ディアナからマスロンの話を聞いたが、そいつも妙な力を持ってたんだろ?」

 「体中から魔力が溢れていたし、生体ギフトとはちょっと違う印象を受けたよ。魔力も安定してないうえ、魔力を使えばその分の寿命が減ってる感じがしたな」 

 「ふーむ……命を引き換えにということか……。話を聞く限り未完成なんだろうが、いずれにせよ残った資料から推測するしかあるまい」

 アリエルはそう言って新しく手にした資料をパラパラとめくり始める。

 「エイガーもマリィとの戦いで死んだみたいだし、その辺りは調べようがないよなあ」

 「まあ、奴等が死んで一応平和が戻ってきたんだ。それだけでも良かったと思うしかないだろう」

 「そういや、拉致された人達も助けてくれたんだってな?」

 「ああ、アリシア達も頑張っていたぞ! 千人近くはいたんじゃないか?」

 「そんなにいたのか!? あいつ等その人達を兵士にするつもりだったんだろうな……」

 「皆だいぶ弱っていたが命に別状はないようだ」

 「全員とはいかないまでも沢山の人を助けられて本当に良かった。それとな、リネット達の仲間も生きてるみたいなんだよ」
 
 「ほう! それは本当か!?」

 「これから迎えに行ってこようと思っててさ。その間ここを頼んでいいか?」

 「構わんよ。敵もいないし問題なかろう」

 「じゃあちょっと行ってくるな。アリエルも少し寝ろよ!?」

 俺は研究所から出てリネット達がいるテントに向かう。

 リネット達はテントの外にいてマグナ達と会話をしている。

 俺はその中に入っていき、リネットとマリィに体調が悪くないか聞いてみる。

 「おっ、みんな揃ってるんだな。二人とも調子はどうなんだ? まだふらつくようだったら俺とサーシャで迎えに行ってくるぞ?」

 「もう大丈夫よ! それに早くみんなの顔を見たいしね」

 「私も元気になったから心配ない。エクシエルさんに馬車を頼んでおいたから、すぐにでも出発出来るぞ」

 「そしたら早速行ってみるか。俺は会ったことないけど、他人事とは思えないくらい嬉しいよ」

 俺達は用意しておいてもらった二台の馬車に、男女それぞれ別れて乗り込む。

 マグナ達の話によればザイヘルベルグから西にあるドルムという町にいるらしく、二、三日もあれば着くとのこと。

 アリシア、ジンバという巨体に囲まれ、少し窮屈な馬車の中で色々と話をしながら隣の町を目指す。

 それから二日後の夕方前にドルムの町に着き、町の様子を窺いながらマグナ達の後ろを付いていく。

 ここも一つ前に泊まった町と同じで、まばらにしか人が出歩いてはおらず、代わりにこちらの軍の兵士達が町を巡回していた。

 「ここも元の日常が戻るまでかなり時間が掛かりそうだな。ただでさえ最近は閉鎖的な環境だったようだし、食料とかの流通とかも止まってるんだろうな」

 「ダルカデルはすぐに戻ったようだけど、この国は今しばらく回復出来ないでしょうね……」
 
 「おい、こっちだお前達」

 馬車から下りて十分も経たないうちに、マグナ達がそこそこ立派な家に入っていく。 

 俺達もその家に招かれて中に入ることに。

 すると、フィオより少し背の高いくらいの小柄な少女が、バタバタと音を立てて玄関先に走ってくる。

 「おかえり! マグ……リネット!?
それにサーシャとマリィも! 来てくれたの!?」

 小柄な少女はリネット達の顔を見るなり、三人に抱きつきにいく。

 「ノーマ! 良かった! 本当に生きていたのね!」

 リネットとサーシャもその少女に抱きつきにいってお互いに涙を流す。

 「うんうん! 良かったわねあんた達!」

 アリシアも泣きながら感動の再会を見届けている。

 「迎えに来たわよノーマ! 一緒にイストウィアに帰りましょう?」

 「うん! 今まで連絡出来なくてごめんねみんな。アレックス達もいるからとりあえず中に入って」

 ノーマはそう言って俺達をリビングに連れていく。

 そこには三人の男性がいて、リネットはその三人を見るなり歓喜の声を上げ、手のひらを叩き合いにいく。

 「アレックス、チャーリー、ネルソン! みんな元気そうね!」

 「ああ! お前達も元気そうで安心したよ! 連絡もしないで本当に悪かったな」   

 「ううん、気にしないでアレックス。こうしてみんな無事だったんだからそれだけで十分じゃない」

 リネットはそう言った後、何かを思い出してノーマに聞く。

 「あっ、そうだ! みんなと言えばステラも元気してる?」

 「元気よ! 出てらっしゃいステラ!」

 ノーマの呼び掛けにブレスレットが反応して光の粒子を放ち始める。

 光の粒子は徐々に動物の形になっていき、完全に眠っている一頭の羊が出現する。

 羊は直立不動のまま鼻から提灯を膨らせて、スヤスヤと寝息を立てている。

 その様子を見たノーマが「起きなさいステラ!」と言い、ペチペチと頭を叩いて起こす。

 起こされた羊のステラはハッと目を覚まし、それと同時に鼻の提灯も破裂する。

 「おはようステラ。ちゃんと目は覚めたかしら?」

 「あら……? あらあら! リネットちゃんじゃない! 久しぶりねえ!」
  
 ステラはショボショボしていた目をぱちくりさせてリネットに挨拶をする。
 
 「本当に久しぶりよ! 相変わらず寝てばかりのようね」

 「最近は夢と現実の区別がつかなくて自分でも不安になるのよ」
 
 「ははっ……それは少し危ないわね。でも何も変わってなさそうで安心したわ」

 「え?」

 ステラは突然意外そうな顔をしてリネットに聞き返す。

 「え!? ……もしかして何かあったの?」
 
 「やだわリネットちゃんったら。気付いてるくせに」

 「えーと……見たところ怪我とかはなさそうだけど……」
 
 「やあねえ、怪我なんてしてないわ。ほら、よく見て私の顔を」
 
 リネットはマジマジとステラの顔を覗くも変化に気付かないようだ。

 「全然分からないわステラ! まさかまだシャンティさんの術が解けてないとか?」

 「ふふっ、違うわ。変えたの……コンタクトに」

 ステラは自信満々でリネットに答える。

 「あ、ああ……そういえばめちゃくちゃ小さいメガネを鼻にかけていたわね……。実用性あったんだ……あれ……」

 正解を聞いたリネットだったが、なんとも言えない表情でリビングの床を見つめる。

 「な、なんかゴメンねリネット。とにかくみんなも一回座ろっか?」

 気まずい空気が流れる中ノーマが気を使ってみんなに座るよう促す。
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