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愛する人と
───約一年後。
「ツツェーリア、アロイス! 結婚おめでとう」
筆頭公爵家アルペンハイム家の後継の盛大な結婚式。エディット王子妃とアルベルト王太子が祝いに駆け付けてくれた。
二人も2ヶ月前に国を挙げての盛大な結婚式を挙げたばかりの新婚だ。側から見ていても仲の良さがよく分かる。
「ありがとうございます。アルベルト王太子殿下、エディット妃殿下。お越しいただき心より感謝をいたします」
式を終え、披露宴で人々を迎えていたアロイスとツツェーリアも幸せに満ち足りた気持ちで溢れんばかりの笑顔で彼らに礼を言った。
2組の夫婦はお互いにふふと笑い合う。そして仲良く歓談を始めた。
「……ブルーノの所も再来月結婚式だろう? そしてその次がマルクス……。慶事が続くな。喜ばしい事だ」
「本当にございますね。……あの頃には、想像も付かなかった事でございます」
アルベルトの言葉にツツェーリアも感慨深く返す。4人は一年と少し前までの事を思い出して苦笑した。
───本当に。あの卒業式まではこのように全てが上手くいくだなんて、誰にも分からない事だった。
私達は手探りで必死に前に突き進んでいたのだから。
アルベルト殿下達のあの一見不実な行動は、『認められなかった婚約の解消を穏便に認めさせる為』だったと今は人々にどちらかというと好意的に受け取られている。
だからといって褒められた事ではなかったから、これからの行動で皆を納得させていくしかないと私達は思っている。この国をより良い国とし、私達が幸せになる事であれが正しかったと証明されるのだと皆で話し合っている。
「この度はおめでとうございます」
そう呼びかけられた先には2組のカップル。
2ヶ月後に結婚するブルーノと新たな婚約者、その更に一月後に結婚するマルクスとミランダ。
2組のカップルも幸せそうに寄り添っている。
特にマルクスとミランダの2人は今年の卒業パーティーでやっと世間に公表出来たばかりなのだ。マルクスの人目も憚らない程の溺愛ぶりに恥ずかしそうにするミランダがなんとも初々しくて可愛い。
そうして4組のカップルはまた仲良く歓談を始めた。
「うふふ。皆様が式をお挙げにになりましたら、是非エディット妃殿下のお茶会に招待してくださいませ。素敵な仲間となる事をお約束しますわ」
そう言われたエディット妃は嬉しそうにパッと表情を綻ばせた。
外国出身の王子妃はどうしても周りに味方が少ない。
ツツェーリアの言葉はこの国の高位の貴族夫人が友として味方になるという事だった。
「ツツェーリア様……。ありがとうございます。
皆様方、落ち着かれましたら是非とも私の茶会においでくださいませ。美味しいお菓子をご用意してお待ちしておりますわ」
エディットはツツェーリアの意を汲み深く感謝した。その横ではアルベルトも嬉しそうにツツェーリアを見て微笑んだ。
ツツェーリアもミランダ達も微笑んで頷く。
「ツツェーリア、ありがとう。……皆も。
……アロイス。ツツェーリアを頼んだ。2人とも、幸せになってくれ」
アルベルトは眩しいものを見るようにツツェーリア達を見つめた。
……アルベルトにとっては幼い頃からの国を支える同志であり、……妻エディットと出逢うまでは生涯を共にすると思ってきた相手。幼馴染、親友、そして……初恋の相手でもある。
アルベルトの胸になんとも形容し難い寂しさが募り、……しかし幸せになって欲しいと心から願っている。
「殿下……。ありがとうございます」
ツツェーリアも、溢れる思いで胸がいっぱいになる。潤んだ瞳で親友であり同志でもあるアルベルトを見つめた。
そしてそのツツェーリアの隣でアルベルトの言葉を聞いたアロイスはニコリと笑う。
「勿論です。私は愛する人と共に生きる事が出来るこの幸運を殿下に深く感謝すると共に、これからアルペンハイム公爵家として生涯王家に忠誠をお誓いいたします」
そう言って優雅に礼をした。その横でツツェーリアも美しいカーテシーをする。
「……では、今日のところは我らはこれで失礼致します。皆様、本日はありがとうございました。是非この後の我らのもてなしを楽しんでいただければ幸いでございます」
アロイスはそう言って彼らの側を離れ、2人は他の人々への挨拶へ向かう。
「……もう、アロイスったら。私はもう少し皆様とお話ししたかったのに」
「……ダメだよ。それに殿下は人目も憚らずツツェにあんな風に微笑みかけるのはどうかと思うよ。世間の人たちは2人が少し前まで婚約関係だったって知ってるんだからね?」
少し視線を外しつつ言うアロイスに、あ、コレは妬いているのね、と察するツツェーリア。
「ふふ。婚約関係だったと知っているからこそ、今の関係で仲が良いところを世間に見せるのは有効なのよ? ……それに私はアロイスしか見えていないもの」
そう言ってツツェーリアはアロイスの腕に少し強めにしがみつく。途端にアロイスの顔は真っ赤になった。
「……もう、ツツェのそういうところ……。……殿下の視線はただの友人に向けるものとは少し違うっていうのに……」
アロイスはため息混じりにそう小さく呟いた。
「……? アロイスなんて?」
アロイスを覗き込む、美しく愛しい人。出逢いから今までを思い出しながらやっと結ばれる奇跡の様なこの幸せな喜びを、心の底から感じながらアロイスは言った。
「何でもない。……今日は覚悟しておきなよってこと。もう逃げられないからね」
にこりと良い笑顔で言われ、手を取りキスをされた。今度はツツェーリアがボンと顔を赤くしたのだった。
そして2人は、お互い微笑み合いながら彼らを祝う人々が待つ広間へと向かった。
───2人の瞳にはこれからの輝く未来へと向けられていた。
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あと少しだけ続きます!
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