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アルベルトの選んだ道
……目を閉じながら、国王は頭の中で様々な事の計算をする。
自ら評判を落とし有能な婚約者と婚約解消した王太子。新たな王妃候補は友好国である隣国の評判の良い王女。元婚約者とはお互い納得の上での婚約解消で、彼女は筆頭公爵家の跡取りとして義弟と結婚し王家の味方となる。
王太子と共に評判を落とした側近の内の1人は祖父である侯爵が身勝手で傲慢な人物として有名で子息の婚約相手の家もどちらにも利得が無く困っていたと聞いている。そしてもう1人の側近ハルツハイム家もその婚約者である侯爵家が無理矢理婚約を決めたと有名だ。
彼ら側近2人の婚約解消は、話としては特に問題は無いはず。
要するに、王太子と側近達とその婚約者が婚約解消後に真に愛する相手と幸せになったと世間が認めれば、王家の権威の失墜は免れるはず。
そしてアルベルトと7歳離れた弟王子を王太子とするにしても、これからの教育やまた新たな相応しい婚約者探しなどそれなりにリスクはあるのだ。
国王は、これは我が子アルベルトに甘い判断だと気付き心の中で苦笑する。
……しかし本当はずっと努力し続けてきたアルベルトとその婚約者ツツェーリアの望みを叶えてやりたかった。どちらに転ぶか分からぬ賭けならば王としては絶対に出来ないが、努力次第で良い方にいくと思われるのならばそちらに賭けてみても良いという考えに至った。
「……アルベルト。水面下で速やかにエディット王女との婚約をまとめよ。そして公爵家も王家の婚約の発表後すぐにツツェーリアの婚約を発表出来るよう手配し待つように。
そしてお前の側近2人とその婚約者達も早急に話をまとめさせるのだ。
……こうなった以上は、これ以上の揉め事は許されないぞ。お前達は正しい愛の為に行動したのだと、世間に認めさせよ。それがこの『婚約解消』を認めアルベルトをこのまま王太子とする条件だ」
アルベルトとツツェーリア、そしてアルペンハイム公爵はバッと顔を上げた。
今まで何年もどれだけ願っても努力しても叶わなかった願い。
……やっと……、やっと! 報われる時が来たのだ。
「……はっ。必ずや成し遂げてみせます!」
「承りました……!」
「陛下。……ありがとうございます。必ずや良き方に進む事でありましょう。私も力を尽くします」
アルベルトもツツェーリアもアルペンハイム公爵も。
感動と喜びの中、国王に礼を言った。
◇
「───まったく。ツツェーリア程王妃に相応しく、王となるお前の力となってくれる者は居なかったものを。……アルベルト、お前はこれから随分と苦労し後悔することとなるぞ」
ツツェーリアとアルペンハイム公爵が退出し、謁見の間には国王とアルベルトの親子2人が残されていた。
そして全てを受け入れた後、ため息混じりに国王は言った。……これは王としてより『アルベルトの父』としての言葉だったのだろう。
「───はい。分かっております。
ツツェーリアほど王妃に相応しく私を理解し支えてくれる女性は居なかったでしょう。
……けれども私は彼女の心を聞いた時決意したのです。私はもしも彼女が私と共に生きる道を望んでくれたならば、エディット王女への想いには一生封をした事でしょう。
ツツェーリアは私の中で特別な女性。彼女の想いを知ったからこそ、私はエディット王女との恋を自分に許したのです。
……私はある意味、ツツェーリアを誰よりも深く愛していました」
アルベルトはツツェーリアを、深く愛していた。国を支える『同志』か『友情』か、長く共にいた『情』か……。彼女とならば生涯この国を守っていけると信じていた。
エディット王女に恋をしたのは本当だ。けれどその気持ちは生涯封をするつもりだったのに。しかしそれを不覚にも隣にいたツツェーリアに気取られてしまった。
ツツェーリアに『婚約の解消』と言われた時には心を抉られるような気持ちだった。一晩思い悩んで……。翌日もう一度ツツェーリアにその気持ちを確かめてやはり本当に『婚約解消』を望んでいると知った。そしてその時エディット王女への恋心を持つ事を自分に許した。
けれど自分はツツェーリアの事を愛していたのだと改めて気付いた。国王に『婚約解消』を却下されて心のどこかでホッとしていた自分に気付き、愛する者と一緒になれないツツェーリアの様子を見て心を痛める。
ツツェーリアのその辛そうな姿を見る度に、何とかせねばと考えてきた。
エディット王女に『本当に自分で良いのか』と問われた時。そしてツツェーリアの想い人アロイスに『本当はツツェーリアを好きなのでは』と問われた時。……表には決して出さなかったものの本当は心に迷いが生じていた。
───しかし、もう迷わない。
愛しい人ツツェーリアは愛する者と、そして自分は恋しいエディット王女と共に生きていく。
「───これが、皆が幸せになる道。私は自らが選んだこの道を精一杯生きていくだけです」
アルベルトの真っ直ぐな言葉に、国王は全てを理解しているかのように少し悲しそうに頷いた。
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