玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第10章 レイコさんは自重しない

第10章第038話 リシャイマ王国王子の苦悩

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第10章第038話 リシャイマ王国王子の苦悩

Side:ツキシマ・レイコ

 クラウヤート様。マーリアちゃんが人質(の振り)立候補に、なんとも言えない顔をしています。
 クールを装おうとしていますが。さすがにマーリアちゃんが出るとなると、冷静には成れないようで。

 「ちょっとまって。僕が行った方が良いんじゃ無いかな。いくら強くてもマーリアさんは女性だし」

 私も女性だけどそこは置いといて。

 「クラウヤート様。陛下達やシャールちゃん達は論外として、私とクラウヤート様どちらがネイルコードにとって重要かと言えば、わかるでしょう? それに向こうも、私を要求しているしね」

 マーリアちゃんが反論します。
 簡単に言えば、外国の大使と自国大臣の比較のような物ですか。クラウヤート様は間違いなくネイルコードの要職に就きそうですし。
 …正直言うと、マーリアちゃんが付いてくることには私も反対です。どうしても、前に正教国に来たときのことが思い出されます。

 ただ。陛下やクラウヤート様の安全重要度も高いんですよね。この後で馬車を狙う動機を減らすってのは一理あります。
 ここで先代とは言えネイルコード王が正教国内で害されたともなれば、大陸会議は空中分解しかねません。次代としてクラウヤート様も重要人物です。

 もちろん、行った先でマーリアちゃんに危害を与えさせる様なことはさせませんが。
 うーん。

 「レイコ、あまり心配しなくても良いわよ。鍛錬は欠かしていないし、またレッドさんのお世話になるような油断はしないわ」

 「クゥ」

 …ふぅ。仕方ないか。

 「クラウヤート様、セレブロをお願いね。一緒に連れてってもご飯用意できるか分からないし。そちらの護衛をこれ以上抜くわけには行かないから。セレブロには、クラウヤート様の言うこと聞くように言い聞かせるから」

 「く…… 分かったよ。必ず助けに行くから」

 「ありがと。迎えだけで大丈夫よ」

 ニコッと笑うマーリアちゃん。頑張れクラウヤート様。

 「レイコ殿の目的は…要はリシャイマ王国を泳がせるってことでいいのかね?」

 陛下が、準備をしている私たちに声をかけてきます。
 武装をしてはだめとは言われていませんからね。まぁおおっぴらに帯剣するのは無理でしょうが。あ、マーリアちゃんはベルトの内側にメリケンサック忍ばせています。私は、もしもの為にお金を仕込んだベルトを。公式ゴルゲットは預けて、簡易なタイプに交換します。

 「リシャイマは、私たちを人質にでもして鉄道会議で優位にとか考えているんでしょうけど」

 「どう考えても悪手よね。それこそ国が無くなるくらい」

 私を人質としてキープできるわけも無いのに。それこそ正教国に物理的に潰されます。

 「リシャイマが大陸の南西方面への要所であるのは確かですので。バンシクル王国のことを置いたとしても、こちらも状況を利用すべきでしょうね」

 クラウヤート様も頭が動き始めたようです。

 「レイコちゃんたちのことは追跡させます。私たちはとりあえずセネバルの船団に合流して、教都に早馬を飛ばしましょう。…これがネイルコードなら電信で瞬時になのに。歯がゆいわね」

 ローザリンテ殿下が、護衛騎士の一人に指示を出してます。ああ、その人が影の一人ですか。

 さて。短い時間の話し合いではありましたが。
  私とレッドさんとマーリアちゃんがリシャイマ国の人達に付いていく。
  影が追跡してくれて、消息を確認。
  影からの連絡を待って、ネイルコードと正教国の兵で制圧と救助。
  証拠を得た上でリシャイマ国に鉄道敷設を譲歩させる

 こんな手順となりました。…リシャイマ国は無くなるかもしれませんけど。
 …なんでリシャイマ王国側はこんな暴挙に出たんでしょうね。ここにいる騎士さんは、比較的まともそうだけど。

 「…レイコ殿。申し訳ありません」

 護衛騎士のリーダーが謝ってきます。

 「セネバルに着き次第動きます。早い内に奪還の準備が整うでしょう」

 「私はどうにもなり様が無いし。マーリアちゃんは私とレッドさんが守るから。あなた達は、皆の安全第一でお願いしますね」

 返事の代わりに礼を取る護衛騎士さんです。
 馬車を見ると、シャールちゃんが手を振っています。馬車に誰がいるのか教えないために声は出さないようにしていますので。リシャイマ国の兵からは見えないようにです。
 私とマーリアちゃんで、笑顔で手を振り返します。



 準備を終えて、キリルロクさんのところに戻ります。
 武装をしていない、護衛すら連れてこない私たちを見て、ちょっとほっとしていますが。自分でやっていることはきちんと自覚しているのか、なんか胃が痛そうな顔をしていますね。
 …立場上、いろいろ苦労しているんでしょうね。拉致犯としてきつい当たり方をするには気の毒な雰囲気すらあります。

 「私とレッドさんとマーリア王女が同行しますので。うちの馬車は通らせてください。それが受け入れられないのなら、一戦も仕方なしです」

 ここは最低限の条件です。

 「…分かりました。こちらの移動は荷馬車になってしまいますが、そちらに乗っていただきます」

 少し待って、リシャイマ側の準備ができたようです。用意されたのはホロの付いた荷馬車ですね。
 雨風避け…というよりは、この人数をここまで運んでくるときに兵を隠しておくためのホロという感じですが。

 「キリルロクさん…で良いですよね? 私たちを拉致したからには、ネイルコードも正教国も本気で動くと思いますけど。良いんですか?」

 「…招待しただけで攫ったわけではない…という建前で押し通そうとするでしょうね」

 「あなたは、好きでやっているわけではないようですけど」

 「大陸の情勢をきちんと把握した上で、現実的な策をとるべきだと、私は思っています」

 それでこれですか?。

 「上の言うことを聞かないと行けない理由でも?」

 まぁ宮仕えが命令聞くのは当たり前…ではあるのですが。言い辛そうに、

 「母が現王の側姫でして。王宮から出せません。それにここにいる皆、家族が王都に暮らしているのです」

 「キリルロクさん、王子だったんですか?」

 「かろうじて継承権に引っかかっている程度の身分です。護衛騎士団長という肩書きは与えられていますが。まぁ見ての通り便利屋扱いです」

 ここにいる兵たち皆、積極的に人質に取られているわけでは無いけど。逆らうことも許されない状況ってことですか。


 馬車の進む先に川が見えてきました。小舟が何隻か停泊しています。あれに移乗するようですね。

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