玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第1章 エイゼル領の伯爵

第1章第031話 ギルドでのお約束?

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第1章第031話 ギルドでのお約束?

・Side:ツキシマ・レイコ

 タロウさんとアイリさんを待って掲示物を眺めていると、ギルトに派手な集団が入ってきた。
 先頭を歩くのは、水牛みたいな角を付けたごついヘルメットを被った大柄な男性。肩やら脛には、棘のついた防具を着けている。
 その後ろを着いてくる二人の男。こちらのヘルメットは、横モヒカン?いや鳥の羽か。こちらもあちこちとげとげだ。

 「アニキ!ちょっ遅くなりしたが、無事につきやしたね!」

 「早く完了届出して、姉御のところで飯にしやしょうぜ!」

 先頭の男は、「ふむ」とだけ答えて、受付に向かうが。途中、私と目が合って、こちらに近づいてくる。
 おっ?おっ?これがお約束ってやつですか?新人が絡まれるってやつですか?

 うーん、身長は百九十センチあるかも。かなり鍛えられてた体をしている。
 …言ってしまえば、あれだ。世紀末の覇王様。

 覇王様は、私の前に立つと…ヘルメットを脱いで脇に抱えて、膝をついて視線を合わせる。

 「どこの子だ? 親はどうした? 子供をこんなところで一人で遊ばせるなんて危ないぞ」

 おや?想像とは違う展開。

 「ここには、武器を履いたり魔獣対策の防具付けているやつらも多いからな」

 そのとげとげには、きちんと意味があるんですね。

 「せめて隣の食堂で待ってろ。着いてこい、飲み物くらいは驕ってやる。…ってその背中のは、ん?赤い犬?」

 見た目と反して、この覇王様は紳士でした。

 「相変わらずアニキはやさしいなぁ。だからあんな奥さんが嫁に来てくれたんですね。うらやましい」

 しかも妻帯者。

 「ユルガルムから戻ってきてくれた奴らが、ボア肉を安く売ってくれたので。ガキたちと今夜はご馳走だ」

 覇王様妻子持ちですか。ボア肉毎度ありです。

 「今日夕方前には帰る予定が、けっこう遅くなってますぜ。早く帰らないとまた、姉御にどやされますよ」

 しかも、尻に敷かれている。

 「あ、ラウルさん、こんにちわ。ん?レイコちゃんがどうしましたか?」

 「アイリのツレか。まぁ、武装した奴らがいるところにふらふらしていると、ちょっと危ないと思ってな。」
 ってところで。アイリに近づいて、なにやら小声でささやいている。こちらのレッドさんを見ながら。

 「あはは。まぁ訳ありということで、よろしくお願いします」

 「…訳ありか。伯爵関係か?」

 「はい。そんなところで」

 「まぁ、伯爵はいろいろ"持っている"からな。まぁそれなら心配ないだろう。レイコといったか? 嬢ちゃんはエイゼルは初めてか?」

 「あ、はい。さっき着いたところです」

 「まぁこの街なら心配ないだろうが。何かあったら声かけな」

 「ありがとうございます」というと、ニコッと笑い返してくれた。覇王様が。

 手を振りつつ、ギルドを出ていった。心なしかわくわくしているようにも見える。

 「あの人、護衛クランの代表やっててね。見た目は恐いけど、可愛い奥さんに子供三人いるんだよ。以外でしょ?」

 「俺もラウルさんの奥さん見たことあるけど。あれは反則だよな」

 清楚系の美人さんなんだそうな。

 さて。事務所で用事を済ませてきたタロウが戻ったので、アイリさんと三人と一匹で、ギルドを出た。
 通りはだいぶ暗くなっているが。店や家には暖色系の灯りがともっている。やはり地球と比べると暗いけど。
 マナを光源として使えないことは無いが。明るくしようとすると高温になりすぎて大きくできないんだそうな。小さいマナの光源をカンテラみたいにしているのが精一杯だとか。
 そう言えば、白熱電球のフィラメントは二千度なんて話を聞いたことがある。不活性ガスを入れたガラス球とかないと、電球のようなものは無理か。
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