異世界へようこそ

ホタル

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1章

護衛2

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公爵家に来てから、目に見えないミズキをダリルはよく外の、バラ庭園に連れて行ってくれる。


バラの庭園は、目が見えないミズキでも、バラの香りで一日の憂鬱から解放される。


特に今日は、昼間からお風呂に入って、白いワンピースを着せて貰い、すこぶる気分良い!昼間のお風呂って贅沢だよね。


今日も、バラ庭園に連れって行ってもらおうと、ダリルたちの護衛の休憩所まで、壁を伝って歩っていた、マリーさんに頼めばダリルか、ジェリドを呼んできてくれるが、ここでの生活も慣れて来たので、探検気分で屋敷内を堪能していた。


あっ・・・・・。


・・・・探検気分であっちこっち歩き回ったせいか、現在地が分からなくなった。屋敷内だと思って甘く見ていた、どうやらこの屋敷は、私にとって、迷宮だったみたいです。


仕方が無いので、耳を澄ませて、誰かが近くを歩く音をじっと待ちます。


ーーーーーひたすら、待ちます。

ーーーーーもうちょっと、待ちます。


・・・何時まで経っても、足音が聞こえない・・・困った!本当に困った、声でも出すか?
でもなんて出す?


助けて?いや違うだろう?
ーーーー誰かいませんか?
そう、これだ!これ!!
このフレーズが、正解だ!!


「クスクス」


「いたーーーー!人がいたーーー!」
嬉しさのあまり、大声で叫んでいた。


「君は、人を探していたのかい?それより君の顔は面白いね、クックックッ!!」


どうやら私は、百面相をしていた様です。
黙って見ているなんて、趣味の悪い。


「笑うのは結構ですけど、教えてください、ここはどこらへんですか?わたし、護衛の休憩所まで行きたいのですが!護衛の方ですよね?」
百面相を見られて、恥ずかしくなり、少しだけ声のトーンが、冷たくなっても、仕方無いよね!


「護衛の休憩所ね~、良いよ、案内してあげる」


「ありがとう」
ミズキは声のある方へ手を伸ばした。


「君は、何をしたいんだい?」
「何って、顔を触るんですよ」
ミズキは言うなり、男の顔を、ペタペタと触りだした。


「これで・・何が・・・わかるんだい?」
「あぁあ、手で、顔を触ることで、どんな人か少しだけ分かりますよ!信じてませんね!!」
「あなたは、身なりを凄く気にする人で、結構なお金持ちで、人が困っているのに黙って見ている人!!違いますか?」


「へぇー良くわかるんだね?」
「やっぱり、困ってる人を黙って見ている人なんですね!!結構・・・外道ですね・・」
「いっいや、そういう事では無くてだな・・・困ったな~」


「ミズキーどこだ、返事しろ」ダリルの声が聞こえてきた。
「ダリル兄さん」ふわっと、ミズキは笑顔になった。
「君は、そんな風に笑うんだな・・・・」
「えっ?」


「ミズキ!そこに居たか、勝手に部屋から抜け出すな、心配しただろ」
軽くダリルから、ゲンコツをもらった。


「ごめんなさい、でもこの人が、ここまで連れてきてくれたの」

「何処にいるんだ?」

「ここに、ここにいた・・さっきまでいたの・・・・」

「名前は?」

「・・・・分からない・・」

「知らない人に付いて行っちゃダメだろ、本当に子供なんだから、困ったな・・・やっぱり、ミズキは子供だ、俺が居ないとダメだな!」
ダリルはホッとしたように、ミズキの頭を撫でた。


『まずい、ダリル兄さんの過保護に拍車がかかる、何とかせねば・・・!』
「ダリル兄さん、私は子供では、ないですからね!!聞いてます?」


「あぁあ、聞いてる!聞いてる!」
『駄目だ、ぜんぜん聞いてない』


ダリルは、ミズキをヒョイと抱えて、歩き出した。
『もう、何を言ってもダメだ!』



「バラの庭園に行きたかったのか?もう少し、部屋で待ってれば迎えに行ったんだぞ!でも良いか?知らない人について行っちゃいけないぞ、お菓子をあげると言っても、ついて行っちゃダメだ!」


『ほんとに、この人はぁ~~!私を何歳だと思ってるの?でも、確かに、知らない人について行っちゃったけど、あの状況なら、仕方が無いよね!仕方無いよね!』


ミズキが黙っていると、ダリルの表情が険しくなっていく、コレは、ミズキの返事待ち!!納得がいかない。


「・・・・は・・・い!」もちろん、心の中で、舌打ちですよ。


「よし!いい子だ!!」ダリルは満足して、ミズキの頭を撫でた。


風に乗って、薔薇の香りがする。
ーーー荒んだ、心が癒されていく。


「ダリル兄さん、下ろして、少し歩きたいの・・・ダリル兄さん?」
一向に、下してくれず、ミズキを抱える腕に力が入る。


「・・・ミズキ、しっかり捕まってろ、絶対に俺から離れるな!!」
今まで感じたことのない、殺気が、ダリルの中から溢れてくる、なんなんだ、いったい何なんだ??


ガサ!ガサガサ!!草木をかき分ける音と、数人の足音がした。
「ここは個人の私有地だ、今なら見逃してやるから、出ていけ」
ダリルの言葉に、聞く耳がないのか、乾いた笑いが聞こえてくる。人数は4人くらいかな?


「おい聞いたか、帰れってよ!!舐められたもんだな!女抱えて何が出来るんだ?助けてくださいの間違いじゃね~のか?」
「「「へへへへ」」」残りの男たちのバカにした笑いが、耳障りだと、ミズキは思った。
「あの女、上玉だな・・・・売っちまう前に、俺たちで楽しまないか?」


とんでも無い事を言う男たちの言葉に、ミズキはダリルの首に巻いていた腕を、ギュっと力を込めた。
「大丈夫だミズキ、少し動くから、そのまま、しがみ付いてろ!」
コクリとミズキは頷いた、「いい子だ」とダリルは小声で言って、すぐに動きだした。
ダリルの腕に支えられてるとはいえ、振り回されているミズキは、遊園地のジェットコースターを思い出した。


ただ遊園地と違うのは、剣と剣がぶつかる金属音と、男たちのうめき声と叫び声と、むせ返る血の匂い、生暖かいしぶきが、ミズキの顔や白いワンピースにかかる。


すぐにダリルが動かなくなった、ケガでもしたのだろうか?
それでもダリルの内側から溢れる様な、背筋の冷たくなるような、禍々しい気配は何なんだろう?


こんなダリル兄さんは知らない!!
「ダリル兄さん・・・」怖い!
「・・・・・・・」


「ダリルさん?」お願い、返事して!!
「・・・・・・・」


「・・・ダリル、ミズキが脅えている、殺気を消せ」
後ろから、ジェリドの声が聞こえる。
ジェリドも、少し殺気立っているのは気のせいだろうか?


「ダリル!!」
最後はジェリドが叫んでいた。


「・・・・あぁあ、ミズキもう怖くない、もう大丈夫だ」
ミズキの背中をポンポンと軽く叩いた。


いつものダリル兄さんだ、良かった。
ミズキは、ほっと安堵した。



「後は俺が、片づける、それから、その格好を何とかしろ、ミヅキは風呂場に連れていけ」


「・・・あぁぁ、そうだな」





後で、メイド頭のマリーさんに聞いたら、バラ庭園は、肉の塊と血の海になっていたそうです。

おまけに、私の真っ白のワンピースは真っ赤に染まっていたそうです。

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