28 / 83
2章
友達だから
しおりを挟む
ミズキはユックリと深呼吸をして、ランスロットを見据えていた。
昨日の捕まえた男の証言と、ギルドからの情報を、ミズキなりにまとめての報告をする。
ランスロットは、眉間にシワを深くした。
「ランスロット、今回の剣の大会は中止するべきだと私は思います。それか、大門を閉じるべきです」
「いや、それはでき無い相談だよ、ミズキ、あの門は、この王都の正門、毎年の祭以外で開くのは、唯一王が崩御した時だ、言っている意味が分かるかい、あの門を祭の日に閉めるという事は、この国の敗北を意味している、しかも、たった1人の脱獄犯の為に!」
「それは、けしって、敗北ではありません。戦略的撤退です。よく考えて下さい、ランスロット」
「ミズキ・・・でも、僕は国王である限り、戦略的撤退でも、する訳にはいかない、わかって欲しい」
ミズキはため息をつく。
「でも、このまま王都の大門を開けておくのは、賛成出来ません!大門を閉める事が出来ないのなら、せめて、あなたは、大会の最後の優勝旗の授与式には、欠席していただきます」
「それも・・・出来ないよ」
「ランスロット、いい加減にしてくだい!」
「友達の、君の言う事でも聞けない」
「そんな事を言われたら、私は、黙るしかありません・・・ランスロット、私も友達として言ってるんですよ」
「うん、わかっているよ、ミズキ、君は僕にとってたった1人の友達だからね・・・出来るだけ君の言う事は聞きたいと思っているけど、今回は、断る」
「どうしてもですか?」
「どうしてもだ」
「バカ、ランスロット!」
「うん」
「ボッケ!ランスロット」
「うん」
「アホ!ランスロット」
「うん」
「死ね!ランスロット」
「・・・・死ぬ気は無いよ」
ミズキは大きくわざとらしく、ため息をついた。
「・・・・わかりました。グレンをあなたの側において下さい。護衛として・・・これだけは、聞いてもらいますよ、いいですね、ランスロット」
「君は、どうするの?護衛もなしで?」
「私はギルドにつめています、情報収集で祭りを楽しむ余裕はありません」
キッ!と、ランスロットを睨んだ。
「わかったよ、ミズキ、君は、相変わらず怖いね」
「私を怒らせる、ランスロットがいけないんです」
ふんと、そっぽを向いて、そのまま、ランスロットの部屋をでていった。
残されたのはランスロットとグレンのふたりだった。
「それじゃあ、護衛を頼んだよ、グレン、君の事はミズキの次に信用することにするよ、第二王子の乳兄弟君」
「・・・ひとつお伺いしたいことが、宜しいでしょうか?」
「・・・良いよ、何だい?」
「なぜ、彼女を信用するのですか?あんな暴言吐いているのに・・それに私は、あなたが言ったようにステファン様いいえ、第二王子の乳兄弟です」
「・・・君も面白い事を言うね・・」
「申し訳ありません、失言でした」
「いや、良いよ、彼女と僕は、パートナーなんだよ」
「パートナー?パートナーとは、一体なんでしょうか?」
「彼女が言うには、パートナーとはね、対等と言う意味だ、彼女が上でもなければ下でもない、僕と彼女は平等なんだよ」
ランスロットは楽しそうに言った。
「そんな恐れ多いことを、彼女は言ったのですか?」
「うん、言ったね」
可笑しそうに、ランスロットは笑っていた。
そして、急にまじめな顔になって
「後にも先にも彼女だけだったよ、正直に気持ちをぶつけてくる人間は・・・・あれで、僕はどれほど救われたことか・・・僕を一人の人間と扱ってくれているのは、彼女だけだよ」
「・・・・・」
「それに、彼女は自分の価値を判っていない・・・彼女は、今や、この国にはなくてはならない存在だという事を、あの交渉技術、知識、そのすべてが、隣国の標的の的になっている、喉から手が出るほど欲しがっている、そして、彼女自身が、各国に対する抑止力にもなっている・・・・彼女が、隣国に誘拐されたら、ミズキを殺せ」
「・・・・・彼女は、友人では、無いのですか?」
「友人だ、友人だから、ミズキが国の利益で利用されるのを、見ていられない、それに僕は、きっと国の為に、ミズキを見殺しにする」
ランスロットは、顔を歪めて言った。
「そうならない事を、祈るだけだ」
ランスロットは窓の外を、ジッと見るめていた。
窓の外は、雲一つない真青な青空と、祭りのための花火が、鳴っていた。
今日も、暑くなりそうだ。
※※
「これは、これは、氷の貴婦人は、こんなところで、立ち止まって何をお考えでしょうか?まさかとは思いますが、この国の王妃にでもなる算段でも考えているのですか?」
ミズキはユックリと視線を声の方に向けた。
宰相のギルバルト・フォン・オーエングリムだった。
ミズキはこの男が、少しだけ苦手だった。
先代の国王からの側近で、余りいい噂は聞かない。
聞かないどころか、正直、ランスロットの治世では、お荷物状態だった。
それに、きな臭い噂もあって、近寄りたくない。
「おや、だんまりですか?いい加減にしていただきたいものですなぁ~陛下も、何処が良くて・・・・あぁあ、・・・わかりましたよ、閨での作法が、とても宜しいのでしょうなぁ~わたしも、一度、ご教授願いたいですね~」
頭のてっぺんからつま先まで舐めるよう見る、とはこの男の為に有るのではないかと、ミズキは思った。
『気持ちが悪い!うざい!!』
「今度、屋敷でお待ちしていますよ」
小さな声で、ギルバルトは呟いた。
ミズキはうんざりして王宮を後にした。
昨日の捕まえた男の証言と、ギルドからの情報を、ミズキなりにまとめての報告をする。
ランスロットは、眉間にシワを深くした。
「ランスロット、今回の剣の大会は中止するべきだと私は思います。それか、大門を閉じるべきです」
「いや、それはでき無い相談だよ、ミズキ、あの門は、この王都の正門、毎年の祭以外で開くのは、唯一王が崩御した時だ、言っている意味が分かるかい、あの門を祭の日に閉めるという事は、この国の敗北を意味している、しかも、たった1人の脱獄犯の為に!」
「それは、けしって、敗北ではありません。戦略的撤退です。よく考えて下さい、ランスロット」
「ミズキ・・・でも、僕は国王である限り、戦略的撤退でも、する訳にはいかない、わかって欲しい」
ミズキはため息をつく。
「でも、このまま王都の大門を開けておくのは、賛成出来ません!大門を閉める事が出来ないのなら、せめて、あなたは、大会の最後の優勝旗の授与式には、欠席していただきます」
「それも・・・出来ないよ」
「ランスロット、いい加減にしてくだい!」
「友達の、君の言う事でも聞けない」
「そんな事を言われたら、私は、黙るしかありません・・・ランスロット、私も友達として言ってるんですよ」
「うん、わかっているよ、ミズキ、君は僕にとってたった1人の友達だからね・・・出来るだけ君の言う事は聞きたいと思っているけど、今回は、断る」
「どうしてもですか?」
「どうしてもだ」
「バカ、ランスロット!」
「うん」
「ボッケ!ランスロット」
「うん」
「アホ!ランスロット」
「うん」
「死ね!ランスロット」
「・・・・死ぬ気は無いよ」
ミズキは大きくわざとらしく、ため息をついた。
「・・・・わかりました。グレンをあなたの側において下さい。護衛として・・・これだけは、聞いてもらいますよ、いいですね、ランスロット」
「君は、どうするの?護衛もなしで?」
「私はギルドにつめています、情報収集で祭りを楽しむ余裕はありません」
キッ!と、ランスロットを睨んだ。
「わかったよ、ミズキ、君は、相変わらず怖いね」
「私を怒らせる、ランスロットがいけないんです」
ふんと、そっぽを向いて、そのまま、ランスロットの部屋をでていった。
残されたのはランスロットとグレンのふたりだった。
「それじゃあ、護衛を頼んだよ、グレン、君の事はミズキの次に信用することにするよ、第二王子の乳兄弟君」
「・・・ひとつお伺いしたいことが、宜しいでしょうか?」
「・・・良いよ、何だい?」
「なぜ、彼女を信用するのですか?あんな暴言吐いているのに・・それに私は、あなたが言ったようにステファン様いいえ、第二王子の乳兄弟です」
「・・・君も面白い事を言うね・・」
「申し訳ありません、失言でした」
「いや、良いよ、彼女と僕は、パートナーなんだよ」
「パートナー?パートナーとは、一体なんでしょうか?」
「彼女が言うには、パートナーとはね、対等と言う意味だ、彼女が上でもなければ下でもない、僕と彼女は平等なんだよ」
ランスロットは楽しそうに言った。
「そんな恐れ多いことを、彼女は言ったのですか?」
「うん、言ったね」
可笑しそうに、ランスロットは笑っていた。
そして、急にまじめな顔になって
「後にも先にも彼女だけだったよ、正直に気持ちをぶつけてくる人間は・・・・あれで、僕はどれほど救われたことか・・・僕を一人の人間と扱ってくれているのは、彼女だけだよ」
「・・・・・」
「それに、彼女は自分の価値を判っていない・・・彼女は、今や、この国にはなくてはならない存在だという事を、あの交渉技術、知識、そのすべてが、隣国の標的の的になっている、喉から手が出るほど欲しがっている、そして、彼女自身が、各国に対する抑止力にもなっている・・・・彼女が、隣国に誘拐されたら、ミズキを殺せ」
「・・・・・彼女は、友人では、無いのですか?」
「友人だ、友人だから、ミズキが国の利益で利用されるのを、見ていられない、それに僕は、きっと国の為に、ミズキを見殺しにする」
ランスロットは、顔を歪めて言った。
「そうならない事を、祈るだけだ」
ランスロットは窓の外を、ジッと見るめていた。
窓の外は、雲一つない真青な青空と、祭りのための花火が、鳴っていた。
今日も、暑くなりそうだ。
※※
「これは、これは、氷の貴婦人は、こんなところで、立ち止まって何をお考えでしょうか?まさかとは思いますが、この国の王妃にでもなる算段でも考えているのですか?」
ミズキはユックリと視線を声の方に向けた。
宰相のギルバルト・フォン・オーエングリムだった。
ミズキはこの男が、少しだけ苦手だった。
先代の国王からの側近で、余りいい噂は聞かない。
聞かないどころか、正直、ランスロットの治世では、お荷物状態だった。
それに、きな臭い噂もあって、近寄りたくない。
「おや、だんまりですか?いい加減にしていただきたいものですなぁ~陛下も、何処が良くて・・・・あぁあ、・・・わかりましたよ、閨での作法が、とても宜しいのでしょうなぁ~わたしも、一度、ご教授願いたいですね~」
頭のてっぺんからつま先まで舐めるよう見る、とはこの男の為に有るのではないかと、ミズキは思った。
『気持ちが悪い!うざい!!』
「今度、屋敷でお待ちしていますよ」
小さな声で、ギルバルトは呟いた。
ミズキはうんざりして王宮を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる