50 / 83
2章
地下牢
しおりを挟む
ヒンヤリとする地下は、真夏でも気温が低い。
ワインや発酵を促す様な食品を貯蔵するにはもってこいの場所。
だが、人が生きていく上ではこれ程過酷な場所は無い。
体温は奪われ・・・時間の感覚がなく・・・陽の光も入らない場所は、地下でも天国に一番近いのかもしれない・・・いいや、この場所は地獄の方が似合っていた。
そしてこの場所に一人の男が、床に倒れていた。
鉄錆の様な臭いが充満してこの空間に、低い男の呻き声が湿った空気に響き渡る。
ミズキは音のする方へとやって来て、男の顔を見ると「だいぶ、いい男になったわね」と、ニンマリと笑顔でリカルドに声をかけた。
リカルドはミズキをチラリと見ると、立ち上がり格子越しにミズキに向かって唾をかけた。唾は見事にミズキの顔に当たり、ミズキの顔が歪んだ。
「汚ったない」
一言だけ呟いて顔に付いた血の滲んだ唾を袖で拭った。
当然だが、袖にはリカルドの血が滲んいる。
リカルドは顔を拭うミズキの顔に見覚えがあった。
「・・・生きて・・・いたのか?」
確かに手応えはあったはずだ。
それに、切り付けた傷は浅くも無かったはずだ。
リカルドは己の手を見つめた。
今まで仕留め損ねて事は無い。リカルドは自分の腕が鈍ったとも思えなかった。
「小僧・・・何故生きている・・・かなりの深手だったはず・・・」
小僧とはひどい思われようだ。とミズキは思った。
でも、仕方がないか?今も、背中を切られた時もランスロットの従者の格好をしていた。
髪も上げていて、帽子の中に隠してある。
確かに男に見えるか?
それより、この男から情報を手に入れないと・・・・。
グレンの時のように上手くはいかないかも知れない・・・。
「僕の事を覚えているんだ!なかなか口を割らないんだって?強盗さん?」
「・・・・・」
「・・・ねえ、だんまりはだめだよ!強盗さん!そうそう今度、南の港・・・なんて言ったけ?確か女性の名前だったような・・・?」
「・・・・ファラリス・・貿易都市ファラリスだ」
「そうそう、ファラリスだったわね?ありがとう!やっと思い出せたわ!でも変ね、貿易都市って・・・ただの港町じゃなかったかしら?」
「・・・貿易都市ファラリスだ!」
リカルドは、フンと鼻を鳴らして、床に座り腕を組んであぐらをかいた。
「・・・まあいいわ!見たことが無いから私の勘違いね」
ミズキも格子を挟んでリカルドの目の前に座った。
「・・・小僧!その女言葉!何とかならないか?気色が悪い。こんな奴を殺せなかったなんて、俺もやきが回ったな?」
「あら?そんな事は無いわよ。さすがに死ぬかと思ったわよ・・・・でも・・・死神に嫌われてね・・・帰ってきちゃったのよ!」
「・・・何度も言わせるな・・・」リカルドは忌々しそうにミズキを睨んでいた。
リカルドの表情を見てミズキは「ああ、ごめん!ごめん!それじゃ~?どんな言葉なら良いの?」
「・・・本当に分からないのか?自分が話している事が・・・聞いた事がある、そんな喋り方をする奴・・・オカ・・」
「分かったから言わなくて良いわ!」
ミズキはリカルドの言葉に割って入って、最後まで言わせなかった。
まさか、この世界でも『オカマ』何て単語があるなんて知らなかった。
世界は広い様で狭いと感じた一瞬です。
--------こんな事を話したいわけじゃ無かった・・・・本題に戻らないと。
「どうでも良いけど、どうしてギルバルト・フォン・オーエングリムに協力したの?」
ミズキはいきなり核心をついた。
リカルドがどう反応するか見てみたかった。
「・・・・・・・」
さっきまでの、表情が嘘のように、口は一文字に結び、顔はグッと固くなった。
「話したくないの?・・・・それとも話せないの?」
リカルドは、ミズキの『話せないの?』の一言で表情がさらに硬くなった。
ミズキはリカルドの態度に『リカルドは何か、弱みを握られている』と理解した。
「ねぇ、ここにも監視の目があるという事なのね?」
リカルドはただ黙って、ミズキを見ていた。
ワインや発酵を促す様な食品を貯蔵するにはもってこいの場所。
だが、人が生きていく上ではこれ程過酷な場所は無い。
体温は奪われ・・・時間の感覚がなく・・・陽の光も入らない場所は、地下でも天国に一番近いのかもしれない・・・いいや、この場所は地獄の方が似合っていた。
そしてこの場所に一人の男が、床に倒れていた。
鉄錆の様な臭いが充満してこの空間に、低い男の呻き声が湿った空気に響き渡る。
ミズキは音のする方へとやって来て、男の顔を見ると「だいぶ、いい男になったわね」と、ニンマリと笑顔でリカルドに声をかけた。
リカルドはミズキをチラリと見ると、立ち上がり格子越しにミズキに向かって唾をかけた。唾は見事にミズキの顔に当たり、ミズキの顔が歪んだ。
「汚ったない」
一言だけ呟いて顔に付いた血の滲んだ唾を袖で拭った。
当然だが、袖にはリカルドの血が滲んいる。
リカルドは顔を拭うミズキの顔に見覚えがあった。
「・・・生きて・・・いたのか?」
確かに手応えはあったはずだ。
それに、切り付けた傷は浅くも無かったはずだ。
リカルドは己の手を見つめた。
今まで仕留め損ねて事は無い。リカルドは自分の腕が鈍ったとも思えなかった。
「小僧・・・何故生きている・・・かなりの深手だったはず・・・」
小僧とはひどい思われようだ。とミズキは思った。
でも、仕方がないか?今も、背中を切られた時もランスロットの従者の格好をしていた。
髪も上げていて、帽子の中に隠してある。
確かに男に見えるか?
それより、この男から情報を手に入れないと・・・・。
グレンの時のように上手くはいかないかも知れない・・・。
「僕の事を覚えているんだ!なかなか口を割らないんだって?強盗さん?」
「・・・・・」
「・・・ねえ、だんまりはだめだよ!強盗さん!そうそう今度、南の港・・・なんて言ったけ?確か女性の名前だったような・・・?」
「・・・・ファラリス・・貿易都市ファラリスだ」
「そうそう、ファラリスだったわね?ありがとう!やっと思い出せたわ!でも変ね、貿易都市って・・・ただの港町じゃなかったかしら?」
「・・・貿易都市ファラリスだ!」
リカルドは、フンと鼻を鳴らして、床に座り腕を組んであぐらをかいた。
「・・・まあいいわ!見たことが無いから私の勘違いね」
ミズキも格子を挟んでリカルドの目の前に座った。
「・・・小僧!その女言葉!何とかならないか?気色が悪い。こんな奴を殺せなかったなんて、俺もやきが回ったな?」
「あら?そんな事は無いわよ。さすがに死ぬかと思ったわよ・・・・でも・・・死神に嫌われてね・・・帰ってきちゃったのよ!」
「・・・何度も言わせるな・・・」リカルドは忌々しそうにミズキを睨んでいた。
リカルドの表情を見てミズキは「ああ、ごめん!ごめん!それじゃ~?どんな言葉なら良いの?」
「・・・本当に分からないのか?自分が話している事が・・・聞いた事がある、そんな喋り方をする奴・・・オカ・・」
「分かったから言わなくて良いわ!」
ミズキはリカルドの言葉に割って入って、最後まで言わせなかった。
まさか、この世界でも『オカマ』何て単語があるなんて知らなかった。
世界は広い様で狭いと感じた一瞬です。
--------こんな事を話したいわけじゃ無かった・・・・本題に戻らないと。
「どうでも良いけど、どうしてギルバルト・フォン・オーエングリムに協力したの?」
ミズキはいきなり核心をついた。
リカルドがどう反応するか見てみたかった。
「・・・・・・・」
さっきまでの、表情が嘘のように、口は一文字に結び、顔はグッと固くなった。
「話したくないの?・・・・それとも話せないの?」
リカルドは、ミズキの『話せないの?』の一言で表情がさらに硬くなった。
ミズキはリカルドの態度に『リカルドは何か、弱みを握られている』と理解した。
「ねぇ、ここにも監視の目があるという事なのね?」
リカルドはただ黙って、ミズキを見ていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる