異世界へようこそ

ホタル

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2章

地下牢

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ヒンヤリとする地下は、真夏でも気温が低い。
ワインや発酵を促す様な食品を貯蔵するにはもってこいの場所。

だが、人が生きていく上ではこれ程過酷な場所は無い。
体温は奪われ・・・時間の感覚がなく・・・陽の光も入らない場所は、地下でも天国に一番近いのかもしれない・・・いいや、この場所は地獄の方が似合っていた。

そしてこの場所に一人の男が、床に倒れていた。
鉄錆の様な臭いが充満してこの空間に、低い男の呻き声が湿った空気に響き渡る。

ミズキは音のする方へとやって来て、男の顔を見ると「だいぶ、いい男になったわね」と、ニンマリと笑顔でリカルドに声をかけた。

リカルドはミズキをチラリと見ると、立ち上がり格子越しにミズキに向かって唾をかけた。唾は見事にミズキの顔に当たり、ミズキの顔が歪んだ。

「汚ったない」
一言だけ呟いて顔に付いた血の滲んだ唾を袖で拭った。
当然だが、袖にはリカルドの血が滲んいる。


リカルドは顔を拭うミズキの顔に見覚えがあった。

「・・・生きて・・・いたのか?」

確かに手応えはあったはずだ。
それに、切り付けた傷は浅くも無かったはずだ。
リカルドは己の手を見つめた。
今まで仕留め損ねて事は無い。リカルドは自分の腕が鈍ったとも思えなかった。

「小僧・・・何故生きている・・・かなりの深手だったはず・・・」

小僧とはひどい思われようだ。とミズキは思った。
でも、仕方がないか?今も、背中を切られた時もランスロットの従者の格好をしていた。
髪も上げていて、帽子の中に隠してある。
確かに男に見えるか?



それより、この男から情報を手に入れないと・・・・。
グレンの時のように上手くはいかないかも知れない・・・。


「僕の事を覚えているんだ!なかなか口を割らないんだって?強盗さん?」
「・・・・・」
「・・・ねえ、だんまりはだめだよ!強盗さん!そうそう今度、南の港・・・なんて言ったけ?確か女性の名前だったような・・・?」
「・・・・ファラリス・・貿易都市ファラリスだ」
「そうそう、ファラリスだったわね?ありがとう!やっと思い出せたわ!でも変ね、貿易都市って・・・ただの港町じゃなかったかしら?」
「・・・貿易都市ファラリスだ!」
リカルドは、フンと鼻を鳴らして、床に座り腕を組んであぐらをかいた。

「・・・まあいいわ!見たことが無いから私の勘違いね」
ミズキも格子を挟んでリカルドの目の前に座った。

「・・・小僧!その女言葉!何とかならないか?気色が悪い。こんな奴を殺せなかったなんて、俺もやきが回ったな?」

「あら?そんな事は無いわよ。さすがに死ぬかと思ったわよ・・・・でも・・・死神に嫌われてね・・・帰ってきちゃったのよ!」

「・・・何度も言わせるな・・・」リカルドは忌々しそうにミズキを睨んでいた。

リカルドの表情を見てミズキは「ああ、ごめん!ごめん!それじゃ~?どんな言葉なら良いの?」

「・・・本当に分からないのか?自分が話している事が・・・聞いた事がある、そんな喋り方をする奴・・・オカ・・」

「分かったから言わなくて良いわ!」
ミズキはリカルドの言葉に割って入って、最後まで言わせなかった。
まさか、この世界でも『オカマ』何て単語があるなんて知らなかった。

世界は広い様で狭いと感じた一瞬です。



--------こんな事を話したいわけじゃ無かった・・・・本題に戻らないと。



「どうでも良いけど、どうしてギルバルト・フォン・オーエングリムに協力したの?」
ミズキはいきなり核心をついた。
リカルドがどう反応するか見てみたかった。

「・・・・・・・」
さっきまでの、表情が嘘のように、口は一文字に結び、顔はグッと固くなった。

「話したくないの?・・・・それとも話せないの?」
リカルドは、ミズキの『話せないの?』の一言で表情がさらに硬くなった。

ミズキはリカルドの態度に『リカルドは何か、弱みを握られている』と理解した。

「ねぇ、ここにも監視の目があるという事なのね?」

リカルドはただ黙って、ミズキを見ていた。






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