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報い
暗闇の中で
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暗闇の中で、苦悶に歪む顔がぼんやりと見える。一人の男が二階から逆さ吊りにされ、拷問されている様だ。男の側には土方と近藤が居て、土方は蝋燭を手にして険しい顔をしている。あれ、これはまさかと気づいた時にはもう遅く、百目蝋燭を打ち付けた五寸釘の上に置いた。火を付けた蝋燭が燃えて、男の足に高温の蝋燭が落ちる。その刹那、千香は思わず目を背けたくなる様な悲鳴と顔を見てしまった。しかしそこでまた、あれと気づき。自分はこの現場には居なかった筈なのに、どうして居合わせているのだろう。そしてこの、古高俊太郎は既に禁門の変の際に六角獄舎で斬首されているのに、どうしてまた。すると急に景色が変わり、今度は蔵の中ではなく八木邸の一間に立っていた。外は酷い雨で、薄暗い室内では芹沢と梅が眠っていた。
「ッ!梅ちゃん、芹沢さん!逃げて! 」
こうも急に景色が入れ替わるのは、夢でなければ有り得ないと確信した千香は、せめて夢の中だけでも二人を助けたいと思い手を伸ばした。
「え...。どう、して、触れないの? 」
千香の手は空をかいて、二人の体を通り抜けた。すると、ドタドタと物々しい足音が聞こえてきた。
「来た...。触れられないなら、言葉で止めるしかない! 」
スパン!と開いた襖の向こうに、土方、沖田、原田、山南の姿が見えた。千香は二人の前に立ちはだかって、
「斬らないで!何か他の道は無いんですか! 」
と言った。しかし、千香の声は四人の耳には届かなかった様で、一斉に駆け出して芹沢と梅に襲いかかった。千香の体を通り抜け、梅の首を刎ねて、芹沢へ斬りかかった。あまりの凄惨さに千香は言葉も出せなくなった。ならばせめて、芹沢と梅を同じ墓へ葬ることは許されるだろうと目を伏せた。やがて、芹沢も斬られ、騒々しさが息を潜めた後、土方たちが部屋を去って行く。本来ならば、目を瞑りたいくらい無惨に斬られてしまった梅と芹沢にもう一度手を伸ばしてみるも。また、その手は空をかいて。
「私が、この時代の人間じゃないからなの?歴史は変えられないって言いたいの? 」
掌を見つめながら、これは一体誰が見せている夢なんだろうと考えた。自分が幕末へ来たのも、この夢を見せている『誰か』の仕業なんだろうか。だから、夢の中では誰とも触れ合えず、話をすることもできないのやもしれない。それとも、今まで自分のしてきたことは全て無意味で、もし自分がここから居なくなっても誰も困る人間など居ないという暗示なんだろうか。考え始めたらキリがないことだが、いずれはどういう理由があってこの時代に来たのかを知るのだろう。自分では、新選組を守り、隊士たちを一人でも多く生き延びさせることだと思っているが、こんな夢をみてしまえば違う可能性も否めない。
「でも、どうしてわざわざ私の心の傷を抉る様な夢を見せるんだろう。 」
そこで丁度視界がぼやけてきて、気づくと蔵の中に居た。どうやら夢から醒めた様で、頭がボーッとしていた。千香は窓から見える夕焼けに、何処と無く切なさを覚えて胸が締め付けられた。
「...本当に、何しに来たんやろ。新選組助けるために来たんやないん。益々、分からんなってきたわ。 」
口を動かすのさえも億劫に感じられて、千香はもう今日は何もしまいと壁に寄りかかった。
「ッ!梅ちゃん、芹沢さん!逃げて! 」
こうも急に景色が入れ替わるのは、夢でなければ有り得ないと確信した千香は、せめて夢の中だけでも二人を助けたいと思い手を伸ばした。
「え...。どう、して、触れないの? 」
千香の手は空をかいて、二人の体を通り抜けた。すると、ドタドタと物々しい足音が聞こえてきた。
「来た...。触れられないなら、言葉で止めるしかない! 」
スパン!と開いた襖の向こうに、土方、沖田、原田、山南の姿が見えた。千香は二人の前に立ちはだかって、
「斬らないで!何か他の道は無いんですか! 」
と言った。しかし、千香の声は四人の耳には届かなかった様で、一斉に駆け出して芹沢と梅に襲いかかった。千香の体を通り抜け、梅の首を刎ねて、芹沢へ斬りかかった。あまりの凄惨さに千香は言葉も出せなくなった。ならばせめて、芹沢と梅を同じ墓へ葬ることは許されるだろうと目を伏せた。やがて、芹沢も斬られ、騒々しさが息を潜めた後、土方たちが部屋を去って行く。本来ならば、目を瞑りたいくらい無惨に斬られてしまった梅と芹沢にもう一度手を伸ばしてみるも。また、その手は空をかいて。
「私が、この時代の人間じゃないからなの?歴史は変えられないって言いたいの? 」
掌を見つめながら、これは一体誰が見せている夢なんだろうと考えた。自分が幕末へ来たのも、この夢を見せている『誰か』の仕業なんだろうか。だから、夢の中では誰とも触れ合えず、話をすることもできないのやもしれない。それとも、今まで自分のしてきたことは全て無意味で、もし自分がここから居なくなっても誰も困る人間など居ないという暗示なんだろうか。考え始めたらキリがないことだが、いずれはどういう理由があってこの時代に来たのかを知るのだろう。自分では、新選組を守り、隊士たちを一人でも多く生き延びさせることだと思っているが、こんな夢をみてしまえば違う可能性も否めない。
「でも、どうしてわざわざ私の心の傷を抉る様な夢を見せるんだろう。 」
そこで丁度視界がぼやけてきて、気づくと蔵の中に居た。どうやら夢から醒めた様で、頭がボーッとしていた。千香は窓から見える夕焼けに、何処と無く切なさを覚えて胸が締め付けられた。
「...本当に、何しに来たんやろ。新選組助けるために来たんやないん。益々、分からんなってきたわ。 」
口を動かすのさえも億劫に感じられて、千香はもう今日は何もしまいと壁に寄りかかった。
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