SUZAKU ~長谷雄卿異聞~

戸浦 隆

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SUZAKU ~長谷雄卿異聞~①

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      一、

 式部省の西の門を出た長谷雄卿は、左にそびえ立つ朱雀門に差し掛かった。
 東西七間(12.6メートル)の朱塗りの大門は、西日を受けてますます鮮やかを増し、五間(9メートル)の門扉の上、二層造りの瓦葺きの両端に反る鴟尾(しび)は黄金色に輝いている。だが、朱雀門のその威風堂々たる容姿も華麗な極彩色も長谷雄卿にはまるきり映っていなかった。うつむき、眉根を寄せ、苦い丸薬を奥歯で噛み締めているような顔つきで歩いていた。
 無理もない。この日、三善清行と口論に及び、散々に言い負かされたのだ。口惜しさ情けなさが噴き上げ、胃の腑をねじり上げていた。この憤懣やるかたない思いを地面に叩きつけ、沓(くつ)底で踏みしだきたいほどであった。
「中納言様………」
 背後から、声がした。
「中納言紀長谷雄(きのはせお)様ではございませんか」
 穴の底から木霊を返すたびに増幅し、膨らみうねりながら届けられたような声だった。それが耳にではなく、直接脳の芯に固い鉄の杭を打ち込まれたように響いた。
 長谷雄卿は振り向いた。
 冠をかぶり襖(あお・武官の礼服)を身に着けた、背丈の異常に高い男がにこやかに微笑み掛けている。黄昏(たそがれ)の鈍い光が男の顔の造作に影を落とし、印象を朧(おぼろ)にしていた。が、その眼はからめ取り否も応もなく引きずり込むような吸引力と、胸の内をまるごとふわっと包み込むような奥の広がりを湛(たた)えている。抗(あらが)いようのない、いや、抗うことを思いつくことさえさせない、不思議に惹かれる眼差しだった。
「きょうはご気分がすぐれぬようですな」
「そう見えるか」
「ははは、どこから見ましても。学は九流に渡り芸は百科に通じる、宮中きっての才人とはとても思えません。気の落ち込みを体全体で触れ歩いているようなものです」
 男の物言いは気の置けない友に対するような親しみを含み、知らず知らず長谷雄卿の気鬱を和らげ溶かしていく。
「中納言様は双六(すごろく)が極めての上手と聞き及んでおります。ひと勝負して憂さを晴らすのも一興。いかがです、わたくしでよければお相手いたしますが………」
「はてさて面白いことを言う。私と勝負しようとは、そなた余程の自信があるとみえる」
 一笑に付そうとした。だが待てよ、と長谷雄卿は思い直した。
 男の言うのももっともだ。どうせ悶々とこの夕べを過ごさなければならないのだ。一時(いっとき)なりとも気が紛れるやも知れぬ………。
「そうだな。打つとするか」
「ありがたい。実はこのところ、もの足らぬ相手ばかりで腕が泣いておりました。中納言様のような上手と打てるとは願ってもないこと。何とぞ手抜きはご無用に」
 そう言われて、負けず嫌いの虫がむっくり起き上がった。何事によらず生真面目で、突き詰めなければ気が済まない性分なのである。それがために退くことを知らず、是か非かと問い詰めてしまう。思い込みが激しく、それが頑(かたく)なさと脆(もろ)さを同居させもしていた。人一倍強い自尊心が負けることを許さず、また負けた時の粉微塵にされた思いの処し方を知らないだけに、勝つことに執着するのだった。きょうの三善清行との言い争いのように。
 ようし、こやつの鼻へし折ってくれるわと長谷雄卿、口論に打ち負かされたことなど早くも忘れ、頭に血が昇り勢い込んで言った。
「どこで打とうぞ」
「そうですな。中納言様のお邸(やしき)は遠ございます。それに何かと差し障りもありましょう。わたくしの住まいおるところではいかが。少々むさ苦しくはありますが」
「よし、決まった」
「では、こちらへ」
 男はすたすたと朱雀門の門柱に歩み寄ると、瞬く間に楼閣に登った。
「そなたの住まいおるところというのは………」
 唖然とする長谷雄卿に、男が言った。
「早くお登り下さい。人目につきますと都合が悪うございますゆえ」
「私には、無理だ」
「ならば………」
 言うが早いか、するすると降りて来た。長谷雄卿に有無を言う暇(いとま)も与えず背に負うと、男は苦もなく登ってしまった。


 長谷雄卿は眼を凝らした。楼閣の中は暗く何も見えない。埃(ほこり)臭く薄ら寒い、がらんとした空洞の中には異様な気配さえ感じられる。側に立っている男に顔を振り向けると、男の姿は掻き消えていた。ぽつんと一人取り残された長谷雄卿は身震いした。
 朱雀門は大祓(おおはらえ)の行われる場所である。六月と十二月の晦日(みそか)、天皇が親王以下在京の百官を広場に集め万人の罪穢(ざいわい)をお祓いする。つまり、都を護る四神の一つである朱雀(南を司る想像上の神鳥)の名を冠したこの門に一切の穢(けが)れを棄て封じ込め、他界に流そうというのである。他界への入口でありまた他界からの出口でもある朱雀門には、侵入して来ようとする悪鬼や怨霊、それらを追い払おうとする神鬼などが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する、と考えられていた。そういう領域に足を踏み入れてしまったのだ。怖じ気が長谷雄卿の足を一歩後ずさりさせた。
 その時、がらんどうの闇の中にぼおぅと灯りが二つ燈(とも)り、長谷雄卿の踏み掛けた二の足を止めた。
「さあ、こちらへ」
 たぐり戻すように、男の声が楼閣に響いた。逃げ出したい気持ちとは裏腹に、自分の足が男の方へ擦り寄って行く。
 男の側には二つの燭台と双六の盤が置かれていた。盤の上には駒石と賽(さい)の入った八角の筒長の箱が置かれている。盤にも筒箱にも見事な螺鈿(らでん)細工が施され、一目見て名工の手になる最上級の品と分かった。長谷雄卿は思わず見とれてしまった。
「さて、賭けものは何になさいます。わたくしが負けましたなら、わたくしの持つ四つの宝のうちの一つを差し上げましょう。あなた様は………」
 長谷雄卿は坐り込み、ためつすがめつ八角の筒と盤を眺めた。
「うむ。そうだな。私にはこれといって宝と呼べる代物(しろもの)は持ち合わせてはおらぬが………」
「では、あなた様の魂をでもいただきましょうかな。ははは………」
 男は長谷雄卿の正面に坐ると筒を取り、駒石を盤に広げた。
「始めるといたしましょうか、中納言様」
 長谷雄卿は駒石を手に取った。磨き上げられた石は燭台の灯りに映え、宝玉のような光沢を湛えている。指に滑る感触は天鵞絨(ビロード)のように心地よい。白の駒石を自陣に並べながら、長谷雄卿は雲の上に坐ってでもいる気がしていた。
 男に促されるままに筒の蓋を手に持った。長年使いこなした愛着深いもののように手に馴染む。賽を入れて腕高く振ると、カランカランと軽やかな音がこれまで聞いたこともない楽を奏でた。日がな一日この音と戯れていたい。そう思わせる余韻が耳の奥に響いた。
「お気に召しましたか。この双六の盤と駒石筒は、天竺(てんじく・現在のインド)から唐の皇帝に献上された『婆羅奥塞(ばらおうそく)』と呼ばれるものです。これがわたくしの自慢の宝のうちの一つ」
「さぞかし由緒あるものだろうと思っていたが。なるほど」
 頷きながら、長谷雄卿は賽を振り出した。
 三と四の目が出た。
 続いて男が振り、一と五。合計数で長谷雄卿の先番と決まった。
 双六は陣取りである。盤は中央に一条の空間が設けられている。その空間に隔てられ、自陣と相手の陣には縦に十二条の線が引いてある。黒白の石を互いの陣地に並べ、二個の賽を振って出た目の合計の数だけ石を進める。相手の陣地に全ての自石を先に入れた方が勝ちとなるのだ。先番は、六割がた有利と言われているから、双六上手の長谷雄卿は勝ったも同然の気になった。
 ところがこの男、賽の目を自由に操ることが出来るのではないかと思わせるほどの腕前である。たちまち四、五手先を越されてしまった。
 長谷雄卿も並の打ち手ではない。相手の出す賽の目の癖を読み、こちらの石を防ぎに使い、なおかつ進める。勝負は一進一退、各々十五個の黒白の石が盤面に入り乱れ、予断を許さない闘いとなった。
 長谷雄卿は賽を振る手に意識を集中し、石の動きに気を注ぎ、体中の神経という神経を総動員して盤面を睨み据えていた。白熱した勝負に興奮するあまり体は火照り、顔は紅潮し、額には汗さえ滲んでいる。今はもう楼閣の奥の薄気味悪い闇の広がりも、流れて戻らない時間も頭には無い。二つの燭台の灯りが照らす仄(ほの)かな空間に埋没し切っていた。
 勝負は最終盤にまでもつれ込んだ。形勢はわずかに男に傾き、長谷雄卿はほんの一、二手押し込まれている。
 最後の一投が、それぞれに残されていた。
 先番の長谷雄卿の後、男が指に挟んだ賽をおもむろに筒に放り入れた。カラカラと賽が音を立てて筒の中で転がっている。
「中納言様。いよいよでございますな」
 男は、勝ち誇ったように言った。
 もう、これまでか………。長谷雄卿諦めかけた。
「では、参りますぞ」
 えいっ、という気合いとともに男が賽を振った。
 筒から賽が飛び出す。二つの賽は踊り、回転し、互いにぶつかって弾ける。勢いを減じた片方の賽が、三の目を出して動きを止めた。
 ああ、もう駄目だ………。
 もう一つの賽がどんな目を出そうと、長谷雄卿の負けだ。額から汗がひと筋尾を引いて流れ、眼に入った。長谷雄卿は思わず眼をつぶった。
 その時である。
「うむっ!」
 うなるような男の声に、長谷雄卿は袖でぬぐった眼を見開いた。
 回転を弱めていたもう一つの賽の角が、止まっていた賽の角に当たった。すると、賽はひょいと三の目の賽の上に乗ってしまったではないか!
「こ、これは………」
 長谷雄卿は奇跡のような賽の重なりを、信じがたい思いで見入った。
「しまった。無効賽だ」
 男はあからさまに舌打ちをした。無効賽では石を動かすことは出来ない。振り手が代わるのである。
 長谷雄卿の体から強張(こわば)りがすとんと抜けた。ほおうっ、と安どの吐息が胸の奥から漏れ出た。
 最大の難を逃れたのだ。だが、それでも男の優位が変わるわけではない。最高の目を出さない限りは長谷雄卿の勝ちは無い。チリチリと燃え尽きてゆく命運に、再び脳は熱を帯び硬直し始める。賽を拾う指がおびえを憶(おも)い出して震え、筒を持つ手が自分のものでなくなっていた。
 これが最後の、本当に最後の一投か………。
 そう思えば思うほど、集中しようとする意識が乱れる。我が身の軸が定まらず、逡巡が泥の沼で足掻(あが)くのである。
 カラカラ、カララン、カララ、カラン………。
 振る筒の、賽の音だけが楼閣に響き渡る。
 カラカラン、カララ、カラ、カラン………。
 ああ、いつまでも聞き入っていたい音だ。幼い頃あやされながら聞いたような懐かしい音、太古から続く揺籃(ようらん)の音………。この音に耳を傾けることは至福であるのかも知れない。音………。そうだ、音だ。この音に気を合わせるのだ。音にすべてを任せよう。人知を超えた采配に運を託そう。
 混沌の闇に差し入る一条の光明にすがる思いで、長谷雄卿は賽の奏でる音と心音とが重なる瞬間を待った。
 ここだ!
 時を逃さず、長谷雄卿は祈りを込めて筒を振りだ。
 頼む! 出ろ! 出てくれ!
 転がり出た賽の、一つは六の目を上にして滑り、そのまま止まった。もう一つの賽は正六面体の対角線を軸に回転している。呼吸することも忘れ、長谷雄卿は食い入るように賽を注視した。
 男も、眼を外さない。
 賽はやがて回転を弱め、揺れ始める。
 長谷雄卿は体を前に乗り出し、両の拳(こぶし)を握り締めた。
 ああ、お願いだ。今一つも六の目を!
 ふらふらと揺れる中に賽の目の数が見えて来る………。
 四だ! ああ………。
 賽が回る勢いを止めようとした。その寸前、男の眼がひときわ大きく見開かれ、ぐいっと力が込められた。
 賽は何につまずいたのか、定まり掛けた四の目をゆっくりと横に傾(かし)がせ、替わって隣の六の目を表に見せてコトリと立った。
「………か、勝った。勝ったぞ!」
 長谷雄卿は盤面を見ながら、躍り上がらんばかりに喜んだ。突き上げて来る歓喜に酔い痴(し)れる長谷雄卿は、しかし別段口惜しがるふうでもないその男がにやりと笑みを浮かべたことに気づく筈もなかった。
「いやいや、惜しいところで勝ちを逃してしまいました。さすがは、中納言様。読みの深さ、勝負の勘所、詰めの鋭さ。どれを取りましても、さすが当代随一の双六の名手。ほとほと感服いたしました。わたくしなんぞ、まだまだ赤児でございますな」
「何を言う。そなたほどの腕前の者、この都にそうそういるものではない。おかげで双六の醍醐味、久方ぶりに堪能させてもらった」
 確かに男は図抜けた才能の持ち主だった。舌を巻くほどの技量に首の皮一枚残すところまで追い詰められたのである。醍醐味を味わい堪能するどころか、すっかり冷や汗をかかされた。だが今は勝利の安堵と優越感が、長谷雄卿に相手を褒めねぎらう余裕すらもたらしている。


「さて。中納言様にわたくしの宝を差し上げねばなりませんな」
「おお、そうであった。確か宝は四つあると」
「その通り。一つはただ今使いました、この『婆羅奥塞』でございます」
「うむ。他の三つは」
「はい。『葉二(はふたつ)』という横笛。この笛は名手が吹けば聴く者ことごとく我を忘れ、桃源郷に遊ぶがごとき夢を見ます。聴き終われば己の見た夢は思い出すことかなわず」
「ほう。それは摩訶不思議な」
「次に『玄象(げんじょう)』という琵琶。これは手入れを怠ったり、また弾き手がつたなければ機嫌を損じて鳴りません」
「まるで気難しい人間のようだな」
「まさに。ある時火事に遭いまして、なにぶんにも火の回りが速く誰一人取り出せずにいたところ、何とこの『玄象』、自ら庭に出て来ましてな」
「そこまで至れば、何だか空恐ろしくさえあるが………。それで、最後の一つは」
「これは物ではございません」
「物ではない、と………」
「はい。女です」
「女? 人間か」
「名はまだありません。顔立ち、姿、気性、いずれを取りましても中納言様に不満足ということは決してありますまい。この世に二人といない絶世の美女ですが。さて、いずれをご所望されますかな」
 長谷雄卿は、しばし考えた。自分は学問ばかりの男だ。管弦は生来の不器用で手にしたことがない。聴いてもその善し悪しが解りかねる。琵琶や笛など、それこそ宝の持ち腐れというものだ。漢詩は多少心得ているが、歌を詠めば失笑を買うばかりで歌合(うたあわせ)にはまるで縁が無い。陰陽道にさえ暗いから宮中においては表立って口にはしないものの、堅物(かたぶつ)だの物分かりの悪いやつだのと思われているのは薄々感じている。百芸に通じているなどと、あれは学に浅い連中のやっかみの裏返し、皮肉なのだ。唯一の愉しみといえば双六だが、それとて道具に凝ろうとまでは思わない。まして由緒ある貴重な名品となれば、それで人と打てよう筈もない。いかに詮索され不審に思われることか。とすると、残るは………。
「その、女だが………」
「お決めになられましたか」
「いや。その女というのは、本当に私に見合う女性(にょしょう)なのか。私はこれまで勉学一辺倒で、実のところ女というものを知らないのだ」
「ははは。ご心配には及びません。中納言様の望むことなら、いかようにも応えてくれます。ただ………」
「ただ、何だ」
「この女には魂が入っておりません。ゆえに名が無いのです。百日待っていただかなければなりません」
「百日も………」
「待てませんか」
「約束を反故にされても忘れてしまっているほどの長さだな」
「では、こう致しましょう。女は明晩にでも連れて参ります。魂は中納言様に入れていただくということにして」
「魂を入れるなどと、そんなことがこの私に出来るのか」
「造作もないこと。方法は連れて参りましたその折に」
 それでは下までお送りしましょうと促し、男は長谷雄卿を朱雀門の下に運び降ろした。
 夜はすっかり帳(とばり)を下ろし、更待月(ふけまちづき・二十日の月)が冴え冴えと中天に掛かろうとしている。月明かりの中に二条大路北側に架かる橋が浮かび、その向こう羅生門にまで続く朱雀大路が、半ばから先を闇の底に消していた。
 長谷雄卿は何かを確かめたいような気持ちに誘われ、振り返った。
 男の姿は跡形も無い。ただ真っ黒な朱雀門の輪郭が、眼の前に覆いかぶさるようにそそり立っているばかりだ。
 頭の芯が痺れている。長谷雄卿は、きょう一日の出来事が果たしてあったことなのかどうか実感が無かった。遠い昔の淡いもののようであり、また夢うつつに見た幻のようでもある。なぜ自分はこんな遅い時分にこんな所に立っているのか。それさえ説明しようとすれば難しい気がした。断片のいくつかが燈っては消え、消えては燈る。爆とした靄(もや)を払うように頭を二、三度振り、長谷雄卿は覚束ない足を家路に向けた。
 朱雀門の方から、朗々と詩を誦(しょう)する声が聞こえて来る。足を止めて聴こうとするとたちまち消え、歩き出すと再び聞こえて来る。長谷雄卿はその声に送られるように夜の道を辿(たど)った。
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