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短編向け

番外編・下

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 ━━2024年5月13日 上東京刑務所

「ありがとうございました」
「ああ。もうこんな所に来るような事はするなよ」

 あの事件から5年、雛也に刑務所からの釈放命令が出た。
 彼はこの5年、とても長かった。と思っていた。
 しかし、しっかり役務えきむは果たしていた。
 役務中、彼は復讐を企てていた。

 ━5年前、巍を殴った。しかし、生きていた。
  今度こそ巍を......いや、あの妻をるのも楽しそうだな......!━

 雛也はそんな本来してはならない考えをしていた。
 そして今日、こうして釈放された。

 ━復讐を始めよう。━

 雛也は復讐がバレないように、ちゃんと反省したと思わせる為、刑務官にお礼を言って巍の妻を探し始めた。
 意外と巍の妻も有名なようで、すぐに大学病院に勤めていることが分かったため、彼はその大学病院へと向かった。
 そして彼は途中の工事現場から再び鉄パイプを取ってきていた。

 ━━同日、大学病院 3階 ナースステーション

 雛也は目的の人物を見付けた。そう、秋音だ。

 ナースステーションに居たのは秋音ともう一人、看護師だけだった。壁の陰に隠れ、彼女達の動きをじっと見ていた。
 間もなく、もう一人の看護師が立ち上がってどこかへ出て行った。
 こんな好機チャンスを逃すようなバカはいないだろう。
 雛也はナースステーションへとそっと入り、後ろから秋音を鉄パイプで力一杯殴った。

 ギュゥン! ......バキリ! ......

「キャッ! ............」

 秋音は短い悲鳴を上げただけでそれ以上声を上げなかった。
 そこへ、さっきの看護師が帰ってきたようで、秋音を見たのか大きな声で「キャー!」と叫んでどこかへ消えていった。
 雛也はこれ見よがしに去ろうとしたが、間もなくやってきた警備員によって再び取り押さえられてしまった。

 そして、再び警察で事情聴取をされた。

 今度は羨ましいなどという感情は無かった。
 ただ憎いという感情だけしか残っていなかった。
 警察は雛也を更生する術がないと悟ったのか、もうそれ以上問い詰めることは無かった。

 翌朝、雛也は秋音が亡くなった事を聞かされた。
 嬉しかった。復讐を果たせたのだから。
 これで雛也は満足だった。
 しかし......

 数日後の裁判で下された判決は『』だった。

 その判決から間もなく、雛也は人生に悲観し自殺してしまった。
 刑務所では、自殺を防ぐ為に紐を引っ掛けることの出来ない作りになっていた。
 そんな刑務所内で雛也が自殺した方法とは「」のだった。

 そして、この事件は報道各社にて熱く報道された後、報道各社が共同で未来の子に向けて「悲惨な事件ファイリング」という名目で本が出版され、その中に巍たちの事件が載せられていたのだった。

 雛也は生まれ変わったら、ちゃんとした人間になりたいと最期に思っていたのだそう......


 ━━おしまい。
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