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第五部 017〜020 四日目・昼~五日目・昼
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017 四日目 昼 ~スーパー~
(……あれは──)
親からのお使いで買い物に出て来ていた池上は、ふと見覚えのある二人組を見つけた。
「佐々木さん。……奇遇ですね」
「あら池上くんも買い物?」
声を掛けた、池上に気が付いたちとせは、何気ない会話を交わそうと言葉を放つも、あけぼのが一言差す。
「タイムセール始まりますよ」
「え、じゃあ行かないと!」
「行きましょう、ちとせさん」
「わかったわ! 池上くん、またね!」
二人のやり取りを静かに見ている池上は、その場から去るちとせに対して表情を浮かべることなく、池上は彼女に手を振る。
そして、二人が立ち去った後、池上は無意識にとある飴を手に取っていた。
それは、『千歳飴』とパッケージには書かれていた。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
018 昼下がり ~池上~
買い物を終えた池上は、自宅へ帰ってきた。自室へ入ると、床に座りこんで、考え事を始めた。
『ただの従兄のお兄ちゃんよ──』
ふと思い出したのは、ちとせとつい先日会ったばかりの従兄と呼ばれる男の事であった。
(ちとせ……)
気を紛らわそうと買ってきた千歳飴を一つ口の中に放り込む。
しかし、予想していなかった甘みを感じ、池上は体育座りでついうずくまってしまう。
(あっま……)
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
019 五日目 朝 学校
「じゃあ私、学校行ってくるから」
ちとせは玄関先で猫に向かってそう伝えると、猫は片手を振って見送る。
「いってらっしゃいませ」
そして、学校に着くちとせだったが、自分の机でため息を吐いていた。
「でさー、アイツさなんて言ったと思う?」
「えー、何だろぉー」
教室ではそんな会話が響いていた。
一人で虚空を眺めていると、声を掛けられた。
「佐々木さん」
虚を突かれたちとせは、驚きの表情を露わにし、固まる。
右斜め上を見ると、そこには池上がいた。
「いい天気ですね」
「そうね……」
何気ない会話。しかし、その会話で退屈そうだったちとせの表情は微笑に変わっていた。
しかし池上はそんなことなど気が付かなかった。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
020 五日目 昼 ~餌やり~
──ちとせが学校に行っている間、暇になってしまったあけぼのは、バケツを片手に近くの河原へ来ていた。
川沿いを歩いていると、子猫があけぼのについていく。しかし、あけぼのはその子猫が鬱陶しく感じてしまい、追い払ってしまった。
そして、河川敷を降りて川のそばに来ると、あけぼのに気が付いたのか金魚があけぼのの側に集まって来ていた。
あけぼのはこの金魚に用があったのだ。
持ってきたバケツの中からパンくずを放り投げる。そして金魚たちに話しかける。
「お久しぶりですね……。私ですよ、あけぼのです。……あれから私は『あの人』の所に戻ることが出来ました。でも、こんな姿になっちゃいました。あはは……」
あけぼのは一人で、パンくずを放りながら返事もしない金魚に向かってそう話しかけていた。
(……あれは──)
親からのお使いで買い物に出て来ていた池上は、ふと見覚えのある二人組を見つけた。
「佐々木さん。……奇遇ですね」
「あら池上くんも買い物?」
声を掛けた、池上に気が付いたちとせは、何気ない会話を交わそうと言葉を放つも、あけぼのが一言差す。
「タイムセール始まりますよ」
「え、じゃあ行かないと!」
「行きましょう、ちとせさん」
「わかったわ! 池上くん、またね!」
二人のやり取りを静かに見ている池上は、その場から去るちとせに対して表情を浮かべることなく、池上は彼女に手を振る。
そして、二人が立ち去った後、池上は無意識にとある飴を手に取っていた。
それは、『千歳飴』とパッケージには書かれていた。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
018 昼下がり ~池上~
買い物を終えた池上は、自宅へ帰ってきた。自室へ入ると、床に座りこんで、考え事を始めた。
『ただの従兄のお兄ちゃんよ──』
ふと思い出したのは、ちとせとつい先日会ったばかりの従兄と呼ばれる男の事であった。
(ちとせ……)
気を紛らわそうと買ってきた千歳飴を一つ口の中に放り込む。
しかし、予想していなかった甘みを感じ、池上は体育座りでついうずくまってしまう。
(あっま……)
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
019 五日目 朝 学校
「じゃあ私、学校行ってくるから」
ちとせは玄関先で猫に向かってそう伝えると、猫は片手を振って見送る。
「いってらっしゃいませ」
そして、学校に着くちとせだったが、自分の机でため息を吐いていた。
「でさー、アイツさなんて言ったと思う?」
「えー、何だろぉー」
教室ではそんな会話が響いていた。
一人で虚空を眺めていると、声を掛けられた。
「佐々木さん」
虚を突かれたちとせは、驚きの表情を露わにし、固まる。
右斜め上を見ると、そこには池上がいた。
「いい天気ですね」
「そうね……」
何気ない会話。しかし、その会話で退屈そうだったちとせの表情は微笑に変わっていた。
しかし池上はそんなことなど気が付かなかった。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
020 五日目 昼 ~餌やり~
──ちとせが学校に行っている間、暇になってしまったあけぼのは、バケツを片手に近くの河原へ来ていた。
川沿いを歩いていると、子猫があけぼのについていく。しかし、あけぼのはその子猫が鬱陶しく感じてしまい、追い払ってしまった。
そして、河川敷を降りて川のそばに来ると、あけぼのに気が付いたのか金魚があけぼのの側に集まって来ていた。
あけぼのはこの金魚に用があったのだ。
持ってきたバケツの中からパンくずを放り投げる。そして金魚たちに話しかける。
「お久しぶりですね……。私ですよ、あけぼのです。……あれから私は『あの人』の所に戻ることが出来ました。でも、こんな姿になっちゃいました。あはは……」
あけぼのは一人で、パンくずを放りながら返事もしない金魚に向かってそう話しかけていた。
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