鍋にしましょう ノベライズ版

兎猫まさあき

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第七部 025~028 六日目・昼~同日・夜遅く

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025 六日目 昼 ~オムライス~

「コト……」

 食事用の机の上に一つの楕円型の皿であるプラターが置かれる。その上にはオムライスが乗っていた。
 これは、ちとせのためにあけぼのの作ったものである。
 目の前に置かれたオムライスを見ると、ちとせはスプーンを手に取るとお礼を言う。

「あ、ありがとう……」

 そう言って、ちとせはオムライスをモグモグと言わんばかりに食していく。
 そんな彼女の姿をあけぼのは無言で見つめる。彼女はあっという間に完食してしまう。

「学校……休んじゃいましたね……」

 そんなタイミングを見計らってか、あけぼのは声を掛ける。

「うん……」
「……落ち着きましたか?」
「うん……」
「逢いに……行きますか?」

 あけぼのが放った言葉に、ちとせは少し考えこむ。まだ決心するには時尚早ときしょうそうのようであった。
 そんな時、玄関がノックされる。

       ☆☆☆ ★★★ ☆☆☆

026 六日目 夕方 ~訪問者~

「はーい」

 全身人の姿になったあけぼのが「ガチャ」と玄関を開けると、そこにはちとせのクラスメイトである池上がいた。

「あ……こんにちは……。あの、佐々木さんがお休みだったので、プリントを……届けに……」
「あー、ありがとうございます。ちとせさんに渡しておきますね」

 あけぼのはその場を乗り切るつもりで池上と言葉を交わしていると、奥からちとせが出てくる。

「あら……。……池上くん……?」
「あ、佐々木さん」

 ちとせの姿を見た池上は、少し微笑んだ。

「プリント……届けてくれたの?」
「あ……うん……」
「やだ、悪いじゃない。上がって上がって! あ茶でも出すわ」
「あ……うん……」

 そんなドタバタするちとせを一縷も見ることもなく、あけぼのは不服そうに顔をしかめる。
 そして、池上は言われるがままに家に上がるのであった──。

       ☆☆☆ ★★★ ☆☆☆

027 六日目 夜 ~三人~

 じっと押し黙るちとせ、あけぼの、池上。三人とも、じっと卓上机を囲む形で正座(←あけぼのは不明)で座り込んでいる。

(なんか重苦しい……)

 その場の空気からふとそう思ったのは池上であった。
 同時に、ちとせもあけぼのも考えていた。

(無言ね……)
(どうしてこうなった……)

 そして、静寂な時間が流れ続けるのであった──。

       ☆☆☆ ★★★ ☆☆☆

028 六日目 夜遅く ~糸が切れた~

「あの……」

 静寂の続く部屋でその静寂を破ったのは、池上であった。突然の声にあけぼのは肩をびくりと震わせた。

「そろそろ帰りますね……」

 そう言って立ち上がる池上をちとせとあけぼのは見送る。
 「ふー……」とちとせは玄関の扉にもたれかけ、息を吐いた。

「人が家に来たのなんて初めてだから緊張したわ……」

 そう言うちとせに対してあけぼのは不敵な笑みを浮かべる。

「ふふふ……。良かったですね」

 そう言うあけぼのを見たちとせは顔をしかめる。

「ちょっと……。尻尾でてる」

 あけぼのの背中からは尻尾が飛び出ていたのだ。
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