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第十九章 五番目の大陸
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結婚式は、座標院の中庭で行われた。
世界中から祝福の使者が訪れた。機械帝国からはグスタフが、アクアダクト王国からは宰相が、北東の大陸からはガルドとミーシャが——そして、辺境伯家の人々が。
「ハカル殿」
辺境伯——リーネの父——が、測に声をかけた。
「娘を——頼みます」
「お任せください」
測は深々と頭を下げた。
式は、簡素だが温かいものだった。派手な演出はなく、大勢の参列者が二人を祝福するだけ。だが、その祝福は——心からのものだった。
「これで——私たち、家族ね」
リーネは測の隣に座りながら言った。
「ああ。家族だ」
「……嬉しいわ」
「俺も、嬉しい」
二人は微笑み合った。
その夜、測は窓の外を見つめていた。
空には二つの月が浮かんでいる。オレンジ色の大きな月と、青い小さな月。この世界に来て最初に見た光景だ。
「どうしたの?」
リーネが傍に来た。
「……考えていた」
「何を?」
「この世界に来て——何が変わったのか」
測は月を見つめ続けた。
「俺は——元の世界では、ただの測量士だった。地味な仕事を、黙々と続けていた。誰にも注目されず、特別な存在でもなかった」
「今は違うの?」
「今は——」
測は考えた。
「今は——まだ測量士だ。地味な仕事を続けている。でも——」
「でも?」
「仲間がいる。生徒がいる。家族がいる。俺の仕事を、誰かが必要としてくれている」
測はリーネを見た。
「それが——変わったことだと思う」
リーネは微笑んだ。
「あなたは——最初から特別だったわ。ただ、気づいていなかっただけよ」
「そうか?」
「そうよ。測量士としての誠実さ、技術への情熱、人を思いやる心——全部、特別よ」
「……ありがとう」
測は照れくさそうに視線を逸らした。
「さあ、寝ましょう。明日も——仕事があるでしょう?」
「ああ。明日は——新入生の入学式だ」
「楽しみね」
二人は並んで、寝室へ向かった。
────
入学式の日。
座標院の講堂には、三十人の新入生が集まっていた。各地から——辺境伯領だけでなく、隣国からも、遠い大陸からも——測量を学びに来た若者たちだ。
「皆さん、入学おめでとう」
測は壇上に立ち、挨拶を始めた。
「私は、座標院の校長——いや、名誉校長だ。今は、教えるのは主に卒業生たちがやっている」
学生たちが笑った。
「でも、今日は——私から、一つだけ伝えたいことがある」
測は学生たちを見回した。
「測量とは何か。それは——世界に座標を刻むことだ」
「座標があるから——人は迷わず目的地に着ける」
「座標があるから——建物は正しく建つ」
「座標があるから——国と国は正確な境界を持てる」
測は言葉を切った。
「でも、もっと大切なことがある」
学生たちは、真剣な表情で聞いている。
「測量は——真実を知ることだ」
「世界がどうなっているか。どこに何があるか。それを正確に知ること。それが、測量の本質だ」
「真実を知ることは——時に辛いこともある。でも、真実から逃げても、問題は解決しない」
「だから——測量士は、真実を恐れてはいけない。どんなに辛くても、目を逸らさず、正確に測り続ける。それが、測量士の役目だ」
測は微笑んだ。
「皆さんは、これから測量の技術を学ぶ。でも、技術だけじゃなく——この心も、忘れないでほしい」
「以上だ。皆さんの入学を、心から歓迎する」
学生たちが拍手した。
測は壇上を降りながら、思った。
——これが、俺の役目だ。
技術を教え、心を伝える。測量士としての誇りを、次の世代に継承する。
スキルを失っても——この役目は、変わらない。
世界中から祝福の使者が訪れた。機械帝国からはグスタフが、アクアダクト王国からは宰相が、北東の大陸からはガルドとミーシャが——そして、辺境伯家の人々が。
「ハカル殿」
辺境伯——リーネの父——が、測に声をかけた。
「娘を——頼みます」
「お任せください」
測は深々と頭を下げた。
式は、簡素だが温かいものだった。派手な演出はなく、大勢の参列者が二人を祝福するだけ。だが、その祝福は——心からのものだった。
「これで——私たち、家族ね」
リーネは測の隣に座りながら言った。
「ああ。家族だ」
「……嬉しいわ」
「俺も、嬉しい」
二人は微笑み合った。
その夜、測は窓の外を見つめていた。
空には二つの月が浮かんでいる。オレンジ色の大きな月と、青い小さな月。この世界に来て最初に見た光景だ。
「どうしたの?」
リーネが傍に来た。
「……考えていた」
「何を?」
「この世界に来て——何が変わったのか」
測は月を見つめ続けた。
「俺は——元の世界では、ただの測量士だった。地味な仕事を、黙々と続けていた。誰にも注目されず、特別な存在でもなかった」
「今は違うの?」
「今は——」
測は考えた。
「今は——まだ測量士だ。地味な仕事を続けている。でも——」
「でも?」
「仲間がいる。生徒がいる。家族がいる。俺の仕事を、誰かが必要としてくれている」
測はリーネを見た。
「それが——変わったことだと思う」
リーネは微笑んだ。
「あなたは——最初から特別だったわ。ただ、気づいていなかっただけよ」
「そうか?」
「そうよ。測量士としての誠実さ、技術への情熱、人を思いやる心——全部、特別よ」
「……ありがとう」
測は照れくさそうに視線を逸らした。
「さあ、寝ましょう。明日も——仕事があるでしょう?」
「ああ。明日は——新入生の入学式だ」
「楽しみね」
二人は並んで、寝室へ向かった。
────
入学式の日。
座標院の講堂には、三十人の新入生が集まっていた。各地から——辺境伯領だけでなく、隣国からも、遠い大陸からも——測量を学びに来た若者たちだ。
「皆さん、入学おめでとう」
測は壇上に立ち、挨拶を始めた。
「私は、座標院の校長——いや、名誉校長だ。今は、教えるのは主に卒業生たちがやっている」
学生たちが笑った。
「でも、今日は——私から、一つだけ伝えたいことがある」
測は学生たちを見回した。
「測量とは何か。それは——世界に座標を刻むことだ」
「座標があるから——人は迷わず目的地に着ける」
「座標があるから——建物は正しく建つ」
「座標があるから——国と国は正確な境界を持てる」
測は言葉を切った。
「でも、もっと大切なことがある」
学生たちは、真剣な表情で聞いている。
「測量は——真実を知ることだ」
「世界がどうなっているか。どこに何があるか。それを正確に知ること。それが、測量の本質だ」
「真実を知ることは——時に辛いこともある。でも、真実から逃げても、問題は解決しない」
「だから——測量士は、真実を恐れてはいけない。どんなに辛くても、目を逸らさず、正確に測り続ける。それが、測量士の役目だ」
測は微笑んだ。
「皆さんは、これから測量の技術を学ぶ。でも、技術だけじゃなく——この心も、忘れないでほしい」
「以上だ。皆さんの入学を、心から歓迎する」
学生たちが拍手した。
測は壇上を降りながら、思った。
——これが、俺の役目だ。
技術を教え、心を伝える。測量士としての誇りを、次の世代に継承する。
スキルを失っても——この役目は、変わらない。
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