本当に死んだら異世界なんて転生しない。あるのは悲壮感だけ。

ななし

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12話 初めてのデート

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 大学はいよいよ長い夏休みに入った。
 僕は莉奈との同棲生活にも慣れ始め、寧ろ心地よく感じていた。
 莉奈は夜職の為、同棲を開始した最初はすれ違いが起きていたが、それを気にしてか莉奈は以前よりもキャバクラで働く日数を減らしていた。人気キャバ嬢だから別に働く日数を減らしたところで、ここで生活していくには十分な稼ぎは確保していたので特に問題はなかった。

「キャバクラで働くと嫉妬したりする?」

 莉奈は僕の心配もしてくれた。
 まぁ、知らない男と飲んだりする商売なのは理解しているが、あまり気持ちいい事ではなかったのが事実だ。
 その心を見透かしてか、それとも莉奈の優しさなのか、今後キャバクラで働かなくてもいいように考えとくと言ってくれた。

 そしてなにもしないまま夏休みが1週間過ぎた。
 僕はいつも通り莉奈と晩御飯を食べていた。すると莉奈は

「デートした事ない」

 箸を止め唐突に言ってきたのだ。
 確かに僕達は軽い買い物程度はした事があったが、カップルがよくするようなデートはした事がなかった。

「そうだね、したことないね。莉奈行きたいとこあるの?」

「人生でデートらしいデートをした事がないから、デートらしいデートスポットでデートしたい」

 行きたい場所を聞いた筈なのに、とても抽象的に返してきた。そして難解に何回もデートを使う辺り、よほどデートをしたいようにも思える。

「そもそもデートらしいデートって、なに?」

 莉奈は少し上を見て考え、少し頭を横に傾けながら考えた。

「遊園地とか、水族館とか、星を見に行くとか?」

 莉奈は容姿端麗で人気キャバ嬢だ。僕と違いモテるはずなのにそういったデートをした事がないのは少し意外だ。
 というか、嘘なんじゃないかと疑いたくなった。

「莉奈モテそうなのに、デートした事ないの?」

「ない。今まで付き合ってもすぐダメになったし。何回かヤッて終わり。デートまでした事がない。というか、手を繋いだ事もこないだが初めて」

 真顔の莉奈を見るに嘘ではないのだろう。
 確かに僕も似たようなものだ。
 よく恋愛は段階があるというが本当なのだろうか?
 僕の経験上、手を繋いで、デートして、一緒に寝る、という順番で物事進んだ事はない。寧ろいつも逆から物事が進んでいた気もする。

「じゃあ、莉奈明日休みだし、明日行こうか。デート」

「うん」

 そう無機質で答えたが、その中にも嬉しそうなのを隠している様だった。

「じゃあ、何処行こうかな……そだ。莉奈みなとみらい行ったことある? あそこデートの定番だし、行ってみようよ」

「いいよ。みなとみらい行った事ないし」

 僕達は神奈川の溝の口という場所に住んでいるので、電車で近い場所でもあるみなとみらいは理想の場所だった。そして横浜のデートスポットと言えばみなとみらいである。

「もう10時か。なら早くお風呂入って寝ようか。明日は午前中に出るし」

「そうだね」

 莉奈は残った唐揚げを食べ、ビールをクイっと飲み干し、遅めの晩御飯を食べ終えた。

「あっ、ちなみに今日は寝るだけだから。すぐ寝るから、なにもしないよ」

 僕は自分の睡眠時間を確保したいので、念のために釘を刺しておいた。

「なんで、今10時じゃん。大丈夫」

 莉奈は少し強めの目で訴えてきた。

「2人がお風呂上がったら12時になるじゃん。だからダメだよ。明日準備もあるし9時には起きないとさ」

「なら、二人で軽くシャワー済ませればいいじゃん。そうしたら、11時前にベッドインできる」

 うん、と一人で莉奈は頷いていた。
 どうしてもベッドイン後のイベントは回避出来ないらしい。僕は観念したように

「分ったよ……」

 と呟いた。
 それに対して莉奈は満面の笑みを浮かべていた。納得のご様子だ。
 正直明日どこ行くかとか、寝る前に色々調べたかったのだが、莉奈の笑顔を見てそんな事は僕もどうでもよくなった。

「まぁ、明日電車で適当に考えるか」

 僕は食器をシンクに運びながらそんな事を考えていた。
 食器を水で浸して、横を振り返ると莉奈は2枚のバスタオルを抱え、まるで散歩前の犬のような感じでキョトンと待っていた。

「ほら、片付け終わったから。シャワー行くよ」

「はーい」

 明日のデートが楽しみなのだろう。莉奈の足取りは軽く、少し跳ねたようにシャワーへ向かって行った。
 そしてそんな様子を見て、微笑んでる僕もきっと楽しみにしているのだろうと、思ったのだった。

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