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厄介事2
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「ジョスイ。精霊石について教えてくれ」
「了解ですじゃ。儂の知っていることを伝えますじゃ」
いつもは俺しかいない宿の部屋にマノンとジョスイがいると随分と手狭に感じる。どうやら人に聞かれるのはあまり良くない内容のようなので、わざわざ宿にまで戻ったのだ。
「まず精霊石の前に精霊の説明からですじゃ。ハクロウ殿、精霊については知っておられるか?」
「うーん、自然現象を司る偉いやつ?」
「なるほど。そのように考えている人は多いかもですじゃ。しかし、それは違いますじゃ。別に精霊がおらんでも自然現象は起きますじゃ。例えば、火の精霊がおらんでも火は付きますじゃ」
「ああ、まあそうかも」
「精霊とは単純に属性を帯びた力が意思を持ったものですじゃ」
「分からないわ!ジョスイ、説明下手ね!」
「ちょ、ちょ、マノン殿。この精霊に対する解釈は一般的なもので別に儂が言い出したものでは……」
「マノン、要はしゃべる火が精霊だ」
「なるほど!ハクロウは説明が上手ね!」
「……うぅ、マノン殿」
「それでジョスイ。精霊石ってのは?」
「……ふう。精霊石は精霊の力、もしくは精霊そのものが封じられたものと考えられておりますじゃ」
俺は水色に輝く精霊石を手に取る。
「この中に精霊がいるかもしれないと」
「……ですじゃ。ただ、儂も精霊石を見るのは今回が初めて故、その辺りの判断はなんとも」
「そんなに珍しいのか?」
「この国の国宝の1つにヒノカグツチという剣がありますじゃ。その剣の柄には火の精霊石が埋められているそうですじゃ」
「ヒノカグツチって昔の勇者の剣じゃないか」
「そうですじゃ。烈火の聖印の勇者の愛剣ですじゃ」
烈火の聖印ね。そういえば今回の勇者にも居たな。烈火の聖印を授かった奴が。思い出すと、なんとなく心がモヤモヤする。これは嫉妬なのか。
「つまり国宝級ってことね!ジョスイ、王都で家を買ったら金貨何枚ぐらいかかるの?」
「えっ、家?そうですなー、場所の悪いところでも50枚くらいはするかと」
「ファッ◯!あのギルド長、金貨5枚とか言ってたわ!舐めやがって!」
「その通りですじゃ。あのギルド長の提案は我々を馬鹿にしたものですじゃ」
「なぁ、ジョスイ。もし俺達が精霊石を持っていることが国や貴族に知られたらどうなる?」
「……譲ってくれと言ってくる者が次々と現れるでしょうな。それに……」
「力ずくで奪いにくる者もいる。と」
「その通りですじゃ」
「上等よ!そんな奴等は全員ぶっ飛ばして逆に身包み剥いでやるわ!この前みたいに!」
「……この前?何かあったのですかな?」
「ああ。ちょっと前に勇者に襲われてな。返り討ちにしてついでに金をもらった」
「……なんと、まぁ」
「マズかったか?」
「その勇者が何処に属しているかに依りますじゃ。聖印騎士団とかに所属しているなら厄介ですじゃ。あそこには歴戦の勇者がウジャウジャおります故」
「それは大丈夫だ。この前の奴等が着ていた鎧は聖印騎士団のものではなかった。何処かの三流貴族に抱えられたのだろう」
「それならひとまず安心ですじゃ。しかし、どうしますかのう?」
皆が精霊石に視線を向けた。さて、どうしたものか。あれこれ話したものの、結局その日に結論が出ることはなかった。
「了解ですじゃ。儂の知っていることを伝えますじゃ」
いつもは俺しかいない宿の部屋にマノンとジョスイがいると随分と手狭に感じる。どうやら人に聞かれるのはあまり良くない内容のようなので、わざわざ宿にまで戻ったのだ。
「まず精霊石の前に精霊の説明からですじゃ。ハクロウ殿、精霊については知っておられるか?」
「うーん、自然現象を司る偉いやつ?」
「なるほど。そのように考えている人は多いかもですじゃ。しかし、それは違いますじゃ。別に精霊がおらんでも自然現象は起きますじゃ。例えば、火の精霊がおらんでも火は付きますじゃ」
「ああ、まあそうかも」
「精霊とは単純に属性を帯びた力が意思を持ったものですじゃ」
「分からないわ!ジョスイ、説明下手ね!」
「ちょ、ちょ、マノン殿。この精霊に対する解釈は一般的なもので別に儂が言い出したものでは……」
「マノン、要はしゃべる火が精霊だ」
「なるほど!ハクロウは説明が上手ね!」
「……うぅ、マノン殿」
「それでジョスイ。精霊石ってのは?」
「……ふう。精霊石は精霊の力、もしくは精霊そのものが封じられたものと考えられておりますじゃ」
俺は水色に輝く精霊石を手に取る。
「この中に精霊がいるかもしれないと」
「……ですじゃ。ただ、儂も精霊石を見るのは今回が初めて故、その辺りの判断はなんとも」
「そんなに珍しいのか?」
「この国の国宝の1つにヒノカグツチという剣がありますじゃ。その剣の柄には火の精霊石が埋められているそうですじゃ」
「ヒノカグツチって昔の勇者の剣じゃないか」
「そうですじゃ。烈火の聖印の勇者の愛剣ですじゃ」
烈火の聖印ね。そういえば今回の勇者にも居たな。烈火の聖印を授かった奴が。思い出すと、なんとなく心がモヤモヤする。これは嫉妬なのか。
「つまり国宝級ってことね!ジョスイ、王都で家を買ったら金貨何枚ぐらいかかるの?」
「えっ、家?そうですなー、場所の悪いところでも50枚くらいはするかと」
「ファッ◯!あのギルド長、金貨5枚とか言ってたわ!舐めやがって!」
「その通りですじゃ。あのギルド長の提案は我々を馬鹿にしたものですじゃ」
「なぁ、ジョスイ。もし俺達が精霊石を持っていることが国や貴族に知られたらどうなる?」
「……譲ってくれと言ってくる者が次々と現れるでしょうな。それに……」
「力ずくで奪いにくる者もいる。と」
「その通りですじゃ」
「上等よ!そんな奴等は全員ぶっ飛ばして逆に身包み剥いでやるわ!この前みたいに!」
「……この前?何かあったのですかな?」
「ああ。ちょっと前に勇者に襲われてな。返り討ちにしてついでに金をもらった」
「……なんと、まぁ」
「マズかったか?」
「その勇者が何処に属しているかに依りますじゃ。聖印騎士団とかに所属しているなら厄介ですじゃ。あそこには歴戦の勇者がウジャウジャおります故」
「それは大丈夫だ。この前の奴等が着ていた鎧は聖印騎士団のものではなかった。何処かの三流貴族に抱えられたのだろう」
「それならひとまず安心ですじゃ。しかし、どうしますかのう?」
皆が精霊石に視線を向けた。さて、どうしたものか。あれこれ話したものの、結局その日に結論が出ることはなかった。
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