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1話 配信命
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やばい! 視聴者数が落ちてきた! 身体が重い……。
上野ダンジョンのデコボコした地面に足を取られそうになる。これは全て、あのスキルのせいだ……。
俺には呪いのスキルがある。名前は【配信命】。視聴者数がそのままHPの上限になるというものだ。
こいつせいで24時間配信は当たり前。寝ている時は自分のPCで自分の配信に接続して、なんとか生きながらえている。視聴者がゼロになると死んでしまうからなぁ。
そもそもの話、普通の人のステータスにはHPなんて項目はない。俺だけのオリジナル。なんでこんなことになってしまったのか……。
いや、思い当たる節はあるのだ。
俺は幼い頃からダンジョン配信者に憧れていた。俺達のようなダンジョンネイティブ世代にとって、ダンジョン配信者はスポーツ選手やテレビタレントなんかより人気だ。
小学生になりたい職業についてアンケートを取れば、トップ5には必ず、ダンジョン配信者が入ってくるぐらいに。
だから、俺は願ったのだ。七夕の短冊に。
「ダンジョン配信者になってたくさんの視聴者に見られたい! 死ぬほど見られたい! 八幡タケシ」と……。
この願いは伝言ゲームの要領で誤って神様に伝わったらしい。「死ぬほど見られたい」が「見られないと死ぬ」となったに違いない。
そして先日、俺が高校を卒業して初めてダンジョン配信したタイミングで発症した。
「死んじゃうから! みんな見て!!」
ドローン型カメラに向かって叫ぶ。なるべく悲壮感を込めて。今いる視聴者を絶対に、逃してはならない。
『死ぬわけねーだろ』
『早くモンスターと戦えよ。死ぬ死ぬマン』
『はいはい。死ぬ死ぬ』
スマホを見ると【死ぬ死ぬマンチャンネル】に辛辣なコメントが来ている。ありがたい。アンチだろうと視聴者だ。ちなみに死ぬ死ぬマンとは、俺──八幡タケシ──のハンドルネーム。
「現在の視聴者は12人! つまりHPは12です! スライムの攻撃は一回で5はダメージが入るから! 三回攻撃くらったら死にます!!」
再びドローン型カメラに向かって叫ぶ。実は首に付けているアクションカメラでサブチャンネル配信しているから、HPはもう少しある。視聴者には言わないけど。
『HPなんてステータスにねーだろ』
『この配信者、本当にモンスターと戦わねえな』
『見るのやめよ』
『初めまして! 死ぬ死ぬマンさん! 面白い名前ですね』
『HPって回復しないの?』
「HPは1秒で1回復します! でも! 視聴者の数がHPの上限だから! 同時接続数がまさに命綱なんです!!」
よし。少し視聴者が増えてきた。そろそろやるか!! リュックからお手隙のアイテムを取り出す。
「今日はこの団子でスライムを倒したいと思います!」
『団子で……!?』
『倒せるわけねーだろ!!』
『えっ、投げるの?』
『何するつもりですか! 死ぬ死ぬマンさん!?』
辺りを慎重に窺い、スライムさんの気配を感じ取る。
この上野ダンジョンのスライムは飛び跳ねながら移動することで有名だ。少し待つと、遠くからポヨンポヨンと漫画のような効果音が聞こえてきた。そろそろ来る……。
──急いで地面に団子を並べた。
そのほとんどは普通に餡子の入った団子だ。しかしそれ以外も混ざっている。
俺は曲がり角に身を潜め、カメラだけ出してスライムの様子を配信する。
ポヨンポヨンとやって来た猫サイズの標的は、団子を見つけて飛びついた。体内に取り込み、消化を始める。
気に入ったようで次々と団子を貪る。餡子から手作りした甲斐があった。
そして、ついにスライムは当たりの団子に食らいついた!
『あれ? スライム震えてない?』
『えっ、毒をもったの? スライムに?』
『最弱のモンスターをいちいち罠に嵌めるなよ!』
『あっ、スライムが溶け始めた!!』
『ウオオオオオオ!! 卑怯過ぎる!!』
『スライムにホウ酸食べさせるとああなるよ』
『死ぬ死ぬマンさん! ひどい!!』
よし、今だ!! 通路に飛び出し、ホウ酸団子の影響で体がぐずぐずになったスライムの前に立つ。まだ辛うじて生きているようだ。
「食らえ!!」
金属バットを振り下ろし核を潰す。するとスライムは完全に溶けてなくなり、小さな魔石だけが残った。上野のダンジョンショップに買い取ってもらえば一個10円ぐらいだろう。
「よし! 勝ったぞー!!」
『勝ったぞー! じゃねえよ! 普通に倒せよ!』
『スライム一匹にどんだけ時間かけるんだよ!』
『死ぬ死ぬマンさん、視聴者減って来ましたよ!』
『上野ダンジョンの一階とか小学生でも余裕だろ』
「だって仕方ないでしょ! 視聴者の数が少ないんだから! せめて同時接続が100ないと正面から戦えないよ! それに、ホウ酸団子を作るところから見てたら、絶対面白いから!!」
『そんな地味な配信見ねーよ』
『せめて死ぬ死ぬマンがイケメンだったらなぁ』
『死ぬ死ぬマン、めっちゃモブ顔だよね』
『有名なアイドル配信者を助けたりしてバズったらいいよ』
『今だとモンスターをペットにするのが流行ってますよ。モフモフの』
やっぱりそうだよなぁ。何かキッカケがないとバズらないよなぁ。
「分かりました! アイドル配信者を助けつつ、モンスターをペットにしてモフモフ配信をします! だから皆さんチャンネル登録してください! 24時間ずっと見てくれたら助かります!」
『仕方ないなぁ。まぁ、たまには見てやるかぁ』
『俺古参だけど死ぬ死ぬマン、本当に24時間配信してるぞ』
『古参って! まだチャンネル出来て一週間じゃん』
『興味出たのでチャンネル登録しました!』
「やっぱりアイドル配信者は秋葉原ダンジョンですよね! 今から移動しますので! チャンネルはそのままでお願いします!」
そう伝え、俺は上野ダンジョンの入り口に向かった。
上野ダンジョンのデコボコした地面に足を取られそうになる。これは全て、あのスキルのせいだ……。
俺には呪いのスキルがある。名前は【配信命】。視聴者数がそのままHPの上限になるというものだ。
こいつせいで24時間配信は当たり前。寝ている時は自分のPCで自分の配信に接続して、なんとか生きながらえている。視聴者がゼロになると死んでしまうからなぁ。
そもそもの話、普通の人のステータスにはHPなんて項目はない。俺だけのオリジナル。なんでこんなことになってしまったのか……。
いや、思い当たる節はあるのだ。
俺は幼い頃からダンジョン配信者に憧れていた。俺達のようなダンジョンネイティブ世代にとって、ダンジョン配信者はスポーツ選手やテレビタレントなんかより人気だ。
小学生になりたい職業についてアンケートを取れば、トップ5には必ず、ダンジョン配信者が入ってくるぐらいに。
だから、俺は願ったのだ。七夕の短冊に。
「ダンジョン配信者になってたくさんの視聴者に見られたい! 死ぬほど見られたい! 八幡タケシ」と……。
この願いは伝言ゲームの要領で誤って神様に伝わったらしい。「死ぬほど見られたい」が「見られないと死ぬ」となったに違いない。
そして先日、俺が高校を卒業して初めてダンジョン配信したタイミングで発症した。
「死んじゃうから! みんな見て!!」
ドローン型カメラに向かって叫ぶ。なるべく悲壮感を込めて。今いる視聴者を絶対に、逃してはならない。
『死ぬわけねーだろ』
『早くモンスターと戦えよ。死ぬ死ぬマン』
『はいはい。死ぬ死ぬ』
スマホを見ると【死ぬ死ぬマンチャンネル】に辛辣なコメントが来ている。ありがたい。アンチだろうと視聴者だ。ちなみに死ぬ死ぬマンとは、俺──八幡タケシ──のハンドルネーム。
「現在の視聴者は12人! つまりHPは12です! スライムの攻撃は一回で5はダメージが入るから! 三回攻撃くらったら死にます!!」
再びドローン型カメラに向かって叫ぶ。実は首に付けているアクションカメラでサブチャンネル配信しているから、HPはもう少しある。視聴者には言わないけど。
『HPなんてステータスにねーだろ』
『この配信者、本当にモンスターと戦わねえな』
『見るのやめよ』
『初めまして! 死ぬ死ぬマンさん! 面白い名前ですね』
『HPって回復しないの?』
「HPは1秒で1回復します! でも! 視聴者の数がHPの上限だから! 同時接続数がまさに命綱なんです!!」
よし。少し視聴者が増えてきた。そろそろやるか!! リュックからお手隙のアイテムを取り出す。
「今日はこの団子でスライムを倒したいと思います!」
『団子で……!?』
『倒せるわけねーだろ!!』
『えっ、投げるの?』
『何するつもりですか! 死ぬ死ぬマンさん!?』
辺りを慎重に窺い、スライムさんの気配を感じ取る。
この上野ダンジョンのスライムは飛び跳ねながら移動することで有名だ。少し待つと、遠くからポヨンポヨンと漫画のような効果音が聞こえてきた。そろそろ来る……。
──急いで地面に団子を並べた。
そのほとんどは普通に餡子の入った団子だ。しかしそれ以外も混ざっている。
俺は曲がり角に身を潜め、カメラだけ出してスライムの様子を配信する。
ポヨンポヨンとやって来た猫サイズの標的は、団子を見つけて飛びついた。体内に取り込み、消化を始める。
気に入ったようで次々と団子を貪る。餡子から手作りした甲斐があった。
そして、ついにスライムは当たりの団子に食らいついた!
『あれ? スライム震えてない?』
『えっ、毒をもったの? スライムに?』
『最弱のモンスターをいちいち罠に嵌めるなよ!』
『あっ、スライムが溶け始めた!!』
『ウオオオオオオ!! 卑怯過ぎる!!』
『スライムにホウ酸食べさせるとああなるよ』
『死ぬ死ぬマンさん! ひどい!!』
よし、今だ!! 通路に飛び出し、ホウ酸団子の影響で体がぐずぐずになったスライムの前に立つ。まだ辛うじて生きているようだ。
「食らえ!!」
金属バットを振り下ろし核を潰す。するとスライムは完全に溶けてなくなり、小さな魔石だけが残った。上野のダンジョンショップに買い取ってもらえば一個10円ぐらいだろう。
「よし! 勝ったぞー!!」
『勝ったぞー! じゃねえよ! 普通に倒せよ!』
『スライム一匹にどんだけ時間かけるんだよ!』
『死ぬ死ぬマンさん、視聴者減って来ましたよ!』
『上野ダンジョンの一階とか小学生でも余裕だろ』
「だって仕方ないでしょ! 視聴者の数が少ないんだから! せめて同時接続が100ないと正面から戦えないよ! それに、ホウ酸団子を作るところから見てたら、絶対面白いから!!」
『そんな地味な配信見ねーよ』
『せめて死ぬ死ぬマンがイケメンだったらなぁ』
『死ぬ死ぬマン、めっちゃモブ顔だよね』
『有名なアイドル配信者を助けたりしてバズったらいいよ』
『今だとモンスターをペットにするのが流行ってますよ。モフモフの』
やっぱりそうだよなぁ。何かキッカケがないとバズらないよなぁ。
「分かりました! アイドル配信者を助けつつ、モンスターをペットにしてモフモフ配信をします! だから皆さんチャンネル登録してください! 24時間ずっと見てくれたら助かります!」
『仕方ないなぁ。まぁ、たまには見てやるかぁ』
『俺古参だけど死ぬ死ぬマン、本当に24時間配信してるぞ』
『古参って! まだチャンネル出来て一週間じゃん』
『興味出たのでチャンネル登録しました!』
「やっぱりアイドル配信者は秋葉原ダンジョンですよね! 今から移動しますので! チャンネルはそのままでお願いします!」
そう伝え、俺は上野ダンジョンの入り口に向かった。
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