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21話 ボス戦

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 新宿ダンジョン5階。転移石のある部屋から出ると、大きな扉が一つあるのみだ。

「いよいよ。ボス戦だ。二人とも作戦通りに頼むぞ」

「ウゥ!」
「はい!」

 グミとマリナが元気よく答え、手に持つタワーシールドをガチンとぶつけ合った。ちなみに本日の二人の格好はミニスカサンタだ。現在、五月である。

「今から扉を開ける……!」

 目つきが変わった。

 俺が手で触れると、扉が青白く光る。そして重い音を立てながら開いていく。

 左手で角野さん──石像を強く握った。

「ステータス・スワップ!」

 現在の視聴者数12032が攻撃力となる。残り9秒。

 完全にボス部屋が開いた。

 グミとマリナが飛び込むと、一際大きな犬頭のモンスター、コボルトキングが雄叫びをあげる。残り6秒。

「来るぞ……!」

 ──ダンッ! とコボルトキングが踏み込んだ。
 ギャリッ!! と金属が抉られる音。
 二人のタワーシールドが振るわれた爪を防ぐ。
 残り3秒。

「死ねェェェ……!!」

 二人が飛び退き、視界にキングの巨体。
 金属バットを防ごうと、毛むくじゃらの腕を出す。
 馬鹿め。

 バッシャァァァアアー!!

 前腕が消し飛び、衝撃が波となって全身に伝わる。

 パァァァンンンンン……!!!!

 残り0秒。コボルトキングが爆散した。

「よっしゃぁぁー!!」

 返り血でベトベトなところへ、グミとマリナが飛びついてくる。

「ウウゥゥウ!」
「おめでとうございます!」

「二人のおかげだ」

「師匠の実力です!!」

 マリナが俺の胸に顔を埋め、すりすりしている。もちろん、血塗れである。

「季節外れのミニスカサンタで視聴者を集めたのが大きい。二人と視聴者のおかげだよ」

 スマホを取り出し【死ぬ死ぬマンチャンネル】を見ると──。


『おめでとうぉぉおおおおー!!!!』
『スゲェェェェ!!』
『死ぬ死ぬマンさん、おめでとう御座います!!』
『開始10秒で討伐?』
『ちょうど10秒だったよ』
『最短記録だぁぁぁぁ!!』
『女の子二人を盾にするクズっぷり、たまんね~』
『マジそれなっ!!』
『女の子二人にエロい格好させて視聴者集めるクズっぷり』
『ほんそれ』
『今日でダンジョン探索者の勢力図変わったよな?』
『死ぬ死ぬマン、天下取れるぞー!!』
『ボス討伐初めてだろ? スキルオーブ出るぞ!!』
『そうだ! 出るぞ!!』
『スキルオーブ、私のところに持って来なさい。鑑定してあげるわ』

 ──い、一部にクズ扱いされてるけど! 概ね祝福されていた。

「師匠、スキルオーブがドロップしてますよ!」

 そうだ。人生で初めてダンジョンボスを倒した時にだけもらえる、確定レアドロップ。

 血溜まりの中にそれはあった。

「最短討伐記録みたいなので、期待できますね!」

 拾い上げると、七色に光る球体の中には何やら紋様が見える。

「よし、6階に一度降りたら、今日はもう上がろう。何のスキルオーブか気になる」

「ウゥ!」
「はい!」

 こうして、初めてのボス戦は呆気なく終わった。
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