47 / 53
47話 逃亡生活
しおりを挟む
「くっそっ! 重たい」
新宿ダンジョン11階。俺は転移部屋の脇にある岩をひっくり返していた。ずっと同じ動作を繰り返しているせいで、酷く身体が重い。
「えっ! この岩に隠してたんじゃないの! 一体、どれよ? もうバッテリー切れちゃいそうなんだけど!! めっちゃ焦ってます!!」
本当は予備のバッテリーがあと三個ある。しかし、視聴者が差し入れしてくれたんだ。演出は大事。
『その横の大きい岩だよ!!』
『本当に差し入れしたのかよ……』
『差し入れ詐欺……!?』
『死ぬ死ぬマン、視聴者を疑うの?』
『死ぬ死ぬマン騒ぎで新宿ダンジョンめっちゃ混んでる』
『いいから、さっさと岩をひっくり返せよ!』
「うっ……おおおおっっ……!!」
両脚を開いて踏ん張り、地面と岩の間に指を突っ込んで一気に背筋を使う。
コロンと転がった大岩はダンジョンの壁にぶつかって鈍い音を立てた。
地面に掘られた窪みに黒いビニール袋。ドラッグストアでセンシティブな商品を買ったときに使われるやつだ。一体、どんな差し入れなのか……!?
「ありました! 視聴者さんからの差し入れです!! 早速開けてみますね!!」
首のアクションカメラを下に向け、ビニール袋の中を映す。
「カメラのバッテリー四つと、プロテインバー四つ!! あとエロ本!! ありがとうございます!! 後で皆んなで読みましょう!!」
グミとマリナがパーティーから離れてお色気要素が減ってしまったからな。エロ本朗読会は新しいコンテンツだ。現代人は紙の雑誌を読むことがないので、意外とエロ本配信は訴求力がある。
『おい、死ぬ死ぬマン! のんびりしてると奴等が来るぞ!』
『今、奴等のチャンネルで11階に向かうって言ってた!!』
『早く逃げて! 死ぬ死ぬマン!!』
『いや、もう殺ってしまった方がよくない?』
『それが難しいから逃げるんだろ?』
『タケシちゃん! 急いで!!』
クソ。また奴等か。本当に鬱陶しい。
転移石が青白く光、シルエットが三つ浮かび上がる。
それは徐々に実体化し、姿を現す。
「見つけたぞ! 死ぬ死ぬマン!」
「今度こそは逃がさないぞ!」
「ダンジョンの秩序は俺達が守る!」
赤、青、黄のコスチュームに身を包んだ三人が、俺のドローンカメラに向かってポーズをとる。
「「「ダンジョン戦隊ボウケンジャイ、見参!!」」」
よし。隙アリ。逃げよう。
完全に無視して転移部屋から駆け出す。
「待て!」
「卑怯だぞ!」
「ちゃんと戦え!」
「五月蝿え馬鹿! 人のカメラに向かってポーズ取ってんじゃねぇ!!」
一瞥もせず、怒鳴りながら走る。
攻撃を仕掛けているらしく、背中のHPの壁がカキン! カキンと音を立てて何かを弾いている。
『ボウケンジャイ! 拳銃撃ってるぞ!』
『戦隊ヒーローにあるまじき凶行!』
『死ぬ死ぬマンより、奴等を逮捕しろよ!』
『あのコスチューム、身バレ防止のためだろ!』
『まぁ奴等、実質殺し屋だし』
『手榴弾来るぞ!!』
目の前の地面に小さなパイナップルが転がる。
──ボンッ!! と爆発が起き、黒い煙が視界を奪う。
構わず進もうとすると目の前には壁だ。すぐ近くで足音がする。もう追いつかれた……!?
煙幕が晴れると、俺を囲むように三人が身構えていた。それぞれが手に怪しいアイテムを持っている。
「お前の弱点が状態異常だってことは分かっているんだ!」
「大人しく俺達に捕まれ!!」
「悪は滅びるのだ!!」
どうする……!? モフモフ化で解除出来ないステータス異常を喰らうと、詰んでしまう。ここはステータス・スワップでぶん殴って切り抜けるか……? しかし、拳銃で撃たれたら……。
考えがまとまらない。
三人はジリジリと距離を詰めてくる。もうやるしか──。
「待てぇ!!」
ダンジョンに声が響く。見ると、新たに三人のシルエット。
「何者だ!」
「邪魔をするんじゃない!」
「死にたいのか!!」
ボウケンジャイが凄んだ相手は仮面を付けた三人組だった。
新宿ダンジョン11階。俺は転移部屋の脇にある岩をひっくり返していた。ずっと同じ動作を繰り返しているせいで、酷く身体が重い。
「えっ! この岩に隠してたんじゃないの! 一体、どれよ? もうバッテリー切れちゃいそうなんだけど!! めっちゃ焦ってます!!」
本当は予備のバッテリーがあと三個ある。しかし、視聴者が差し入れしてくれたんだ。演出は大事。
『その横の大きい岩だよ!!』
『本当に差し入れしたのかよ……』
『差し入れ詐欺……!?』
『死ぬ死ぬマン、視聴者を疑うの?』
『死ぬ死ぬマン騒ぎで新宿ダンジョンめっちゃ混んでる』
『いいから、さっさと岩をひっくり返せよ!』
「うっ……おおおおっっ……!!」
両脚を開いて踏ん張り、地面と岩の間に指を突っ込んで一気に背筋を使う。
コロンと転がった大岩はダンジョンの壁にぶつかって鈍い音を立てた。
地面に掘られた窪みに黒いビニール袋。ドラッグストアでセンシティブな商品を買ったときに使われるやつだ。一体、どんな差し入れなのか……!?
「ありました! 視聴者さんからの差し入れです!! 早速開けてみますね!!」
首のアクションカメラを下に向け、ビニール袋の中を映す。
「カメラのバッテリー四つと、プロテインバー四つ!! あとエロ本!! ありがとうございます!! 後で皆んなで読みましょう!!」
グミとマリナがパーティーから離れてお色気要素が減ってしまったからな。エロ本朗読会は新しいコンテンツだ。現代人は紙の雑誌を読むことがないので、意外とエロ本配信は訴求力がある。
『おい、死ぬ死ぬマン! のんびりしてると奴等が来るぞ!』
『今、奴等のチャンネルで11階に向かうって言ってた!!』
『早く逃げて! 死ぬ死ぬマン!!』
『いや、もう殺ってしまった方がよくない?』
『それが難しいから逃げるんだろ?』
『タケシちゃん! 急いで!!』
クソ。また奴等か。本当に鬱陶しい。
転移石が青白く光、シルエットが三つ浮かび上がる。
それは徐々に実体化し、姿を現す。
「見つけたぞ! 死ぬ死ぬマン!」
「今度こそは逃がさないぞ!」
「ダンジョンの秩序は俺達が守る!」
赤、青、黄のコスチュームに身を包んだ三人が、俺のドローンカメラに向かってポーズをとる。
「「「ダンジョン戦隊ボウケンジャイ、見参!!」」」
よし。隙アリ。逃げよう。
完全に無視して転移部屋から駆け出す。
「待て!」
「卑怯だぞ!」
「ちゃんと戦え!」
「五月蝿え馬鹿! 人のカメラに向かってポーズ取ってんじゃねぇ!!」
一瞥もせず、怒鳴りながら走る。
攻撃を仕掛けているらしく、背中のHPの壁がカキン! カキンと音を立てて何かを弾いている。
『ボウケンジャイ! 拳銃撃ってるぞ!』
『戦隊ヒーローにあるまじき凶行!』
『死ぬ死ぬマンより、奴等を逮捕しろよ!』
『あのコスチューム、身バレ防止のためだろ!』
『まぁ奴等、実質殺し屋だし』
『手榴弾来るぞ!!』
目の前の地面に小さなパイナップルが転がる。
──ボンッ!! と爆発が起き、黒い煙が視界を奪う。
構わず進もうとすると目の前には壁だ。すぐ近くで足音がする。もう追いつかれた……!?
煙幕が晴れると、俺を囲むように三人が身構えていた。それぞれが手に怪しいアイテムを持っている。
「お前の弱点が状態異常だってことは分かっているんだ!」
「大人しく俺達に捕まれ!!」
「悪は滅びるのだ!!」
どうする……!? モフモフ化で解除出来ないステータス異常を喰らうと、詰んでしまう。ここはステータス・スワップでぶん殴って切り抜けるか……? しかし、拳銃で撃たれたら……。
考えがまとまらない。
三人はジリジリと距離を詰めてくる。もうやるしか──。
「待てぇ!!」
ダンジョンに声が響く。見ると、新たに三人のシルエット。
「何者だ!」
「邪魔をするんじゃない!」
「死にたいのか!!」
ボウケンジャイが凄んだ相手は仮面を付けた三人組だった。
0
あなたにおすすめの小説
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった
椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。
底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。
ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。
だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。
翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
アーク戦記〜どこにでもいる貴族の平凡な三男が不老不死になって経験チート!?魔王の娘とイチャイチャしたり女の子と暮らす人生は好きですか!?〜
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
俺の名前はゼスティ!どこにでもいる貴族の普通の三男!剣も弓も槍も、得意な物が何も無い平均的で特徴の無い男だ!そんなある日、俺の仕えるアーク帝国が滅亡するわ、俺は不老不死になるわ。もー大変!?魔王の娘と良い感じになったり、女の子を子育てしてり、勇者の女の子と一緒に旅をしたり、聖女を助けたり!?なんで平凡な俺がこんな旅をしなくちゃ行けないの〜!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる