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異世界

エロフの言い分

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「まーず、皇帝陛下は貴族の子女達をどんな奴等だと思っておる?」

リビングに移動したルベリートは腕を組み、胸を見せつけながら尋ねた。

「……えっ、いや、どんなって。その前に服を着てくれませんか?恥ずかしくて」

「はぁー。これはいかんぞ、ネギシ。教育がなっとらん」

ルベリートは顔をしかめる。

「フィロメオ。女の下着姿ぐらいで一々動揺していては国なんて治められないぞ。それに、服を着て貰いたいならもっと別の言い方があるだろう?」

「ちょっとそちらの方面は疎くて」

フィロメオは顔を真っ赤にしながら弁明した。

「皇族は学校に行かんのじゃろ?その弊害じゃな。貴族の子女なんてもんは、表面を取り繕っとるだけで見栄と欲望の塊ぞ」

「……それは流石に言い過ぎかと」

ルベリートがリビングのローテーブルに脚を投げ出した。

「言い過ぎなもんか。奴等は自分が流行の最先端である事が何より重要なんじゃ。最も、それは帝国貴族全体に言えることじゃがな」

フィロメオが苦々しい顔をする。地球の技術に飛び付いた自分の兄や貴族達のことを考えているのだろう。

「じゃから、国を統べるには皇族が流行の先端である必要があるんじゃ。その辺は陛下の兄弟達も分かっておった筈じゃ」

「……それは確かにそうですが、今回の件は──」

「阿呆か!色欲こそ貴族の心を最も掴むのじゃ!」

ルベリートの声にフィロメオが背筋を伸ばした。

「今回の件はフェルミーナと相談して始めたことじゃ。奴は貴族の子女についてよー分かっとる。皇帝の姉の役割を全うするつもりじゃ」

そういえば最近フェルミーナまでもが婚約を破棄していた。フィロメオの姉2人は揃って帝国に残るつもりだ。

「それに、もう次の手も決まっておるのでな……」

「……次の手ですか?」

「そーじゃ。ちょっとまっとれ」

ルベリートが寝室から何かを取ってきて、ローテーブルに置いた。

「これは?ポーションか何かですか?」

フィロメオが瓶に入った透明な液体を指差す。

「はずれ。ローションじゃ。それも特別な成分が配合されとる」

うん?まさかルベリートの奴。

「ルベリート。お前、コニーの果実を使ったのか!?」

「かかか!流石はネギシじゃ!鋭いのー。コニーの果実を絞ったものがこのローションには含まれておる」

「効果あるんですか?」

「中毒になっては困るからの。効果は控えめじゃが、普通のローションに比べたら雲泥ぞ。陛下の姉上も絶賛しとった」

フィロメオが見つめるローションの瓶を、ルベリートが手に取って自分の胸に挟んだ。

「ほーら、陛下。欲しくなったじゃろ?持って行ってもええんじゃぞ」

「い、いりません!」

「かかか!愛いのう」

「それで、このローションもフェルミーナの名前を使って広めるつもりか?」

「ワシとしては陛下の名前で広める方がええと思ったんじゃが──」

「姉上の名前でお願いします!」

以降、フェルミーナの小瓶は貴族の間で高額で取引されるようになった。皇族の求心力を高めたのは言うまでもない。
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