虫食べる系配信者が退廃未来へタイムスリップ!〜魔物化したゲテモノを食べて超絶バフで生き延びる〜

フーツラ

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東京

集落

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「あれは……大井競馬場……?」

 腕を折られた父親に代わり、リヤカーを引いていたのだが……。案内に従って進んだ先に見えてきたものは、知っている建物だった。ボロボロになっているものの、これは大井競馬場で間違いない。

「えっ、知ってるんですか?」
「……てっきり、東京は初めてかと」

 リヤカーの荷台に乗る親子が疑問の声を上げた。うーむ。もう色々と言ってしまったほうが早そうだな。俺はリヤカーを止めて振り返る。親子は少し警戒した表情をしている。

「この時代の東京は初めてだ」

「……この時代?」
「……どういうことですか?」

 親子は状況が掴めないようだ。二人して眉間に皺を寄せている。

「俺は過去からタイムスリップして来たらしいんだ。この時代の地球に……」

「えっ! そんな小説みたいなことがっ!」
「……まぁ、もう地球はなんでもありですからなぁ」

 なんでもあり。オークのことや巨大化した昆虫等のことを言っているのだろう。父親の方にはあっさりと受け入れられたようだ。

「集落についたら、地球に何があったのか詳しく聞かせてくれないか?」

「……ええ。あまり楽しい話にはならないと思いますが、私達の知っていることならば……」

 父親は暗い顔をした。どうやらこの時代の地球は悲惨なことになっているらしい。

 俺は少しだけ重たくなったリヤカーを再び引き始めた。親子の住む集落──大井競馬場──に向けて。


#


 近づいてみると大井競馬場の周りには三メートルはあろうかというバリケードが張り巡らされていた。安心して暮らすにはこれぐらいの高さが必要なのだろう。

 バリケードの奥にある物見櫓に人影が見える。双眼鏡を構えてこちらを見ている。

「戻ったよー!!」

 リヤカーの荷台から娘が手を振る。物見櫓の男も手を振り返した。

「今、開けてくれるんでちょっと待ってください!」

 娘は集落についてホッとしたのか声を弾ませる。

 ──ガガガガガガガ! っと重い音が響き、ちょうどリヤカーが通れるだけバリケードが開いた。可動式だったようだ。

 バリケードを通ると、それはすぐに閉じられる。振り返ると10人近い男がバリケードを押していた。随分と大変な作業なようだ。

「……何があった?」

 四十前後だろうか。顔に傷のある大男が声を掛けてきた。歓迎ムードでは……ないな。大男の背後にはバリケードを開閉していた男達がいて、鋭い視線を俺に向けている。

「温泉を汲んだ帰り、オークに襲われちゃって……」
「……この有様です」

 父親が添え木をした腕を上げる。

「何!? 奴等、また活動を始めたのか……」

「……はい。でも、このルーメンさんに助けてもらいました! ルーメンさんも一条院さんと同じ能力者みたいで、オークをパンチ一発で倒しちゃったんです!」

 能力者? この、一条院という大男は何か能力を持っているのか? 俺のはただのバフだが……。

「ほお……。能力者か。ルーメンとやら、歓迎するぞ」

 右手が差し出された。しっかりと握りかえす。一条院の額に血管が浮かんだ。握力比べか? こんなこともあろうかと、俺は今、フナムシのバフ三多重だぞ?

「ムンッ!」

 一条院の身体が青く発光する。すると、握力が跳ね上がった。右手の軋む音がする……。しかしな、フナムシのバフはそんなもんじゃないんだよ! 後悔しろ──。

「オラッ!」

 一条院の右手のカタチが変わる。随分と歪だ。

「うっ……! 参った」

 ふん。見た目よりも根性がないな。もう少し締め上げよう。

「痛ダダダッ! た、試すようなことをしてすまなかった!! もうやめてくれ!!」

「ルーメンさん! お願いします!」

 娘の声を聞いてスッと力を抜いた。一条院が右手を大事そうにさすっている。

「長旅で疲れているんだ。くだらん駆け引きをするつもりはない」

「悪かった。大井町集落を代表して、ルーメンを歓迎する」

 一条院がそう宣言すると、俺に向けられていた敵意が消えた。ようやく、集落に迎えられたらしい。スマホを取り出してコメント欄の反応を見る。


 コメント:なんか、身体が光ってたぞ!
 コメント:これは強化系のスキル!?
 コメント:ルーメン強すぎじゃね?
 コメント:ルーメンさんが脳筋に
 コメント:ルーメン、調子乗るなよ!!
 コメント:未来人にオラつくルーメン!


 脳筋じゃねぇ! やり方を合わせただけだし!! クソッ!!

「……どうかしたか?」

 一条院が不思議そうな顔をしている。

「いや、大丈夫だ。ちょっとコメント欄の反応が予想と違っててな」

「……コメント欄?」

「その辺の事情が複雑でな。少し説明する時間をくれ。それにこの世界に起きたことも知りたいしな」

 俺の言葉を聞いて、一条院はその厳つい顔に更に皺を刻むのだった。
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