44 / 60
異世界との繋がり
森の民
しおりを挟む
「それは本当か! 袴田」
中野集落に受け入れられた俺達は、復興を手伝いながら気ままに過ごしていた。といっても作業を手伝うのは俺ばかりでニコは遊び呆けていたが……。
南側ゲートの穴を塞ぎ終え、ちょっとした打ち上げを開いていた時のことだ。車座になって酒を飲み、取り止めのない馬鹿話をしている中で、袴田がある存在についてさらりと言った。
「あぁ、エルフならいますよ。女の」
「なに! どっちのタイプだ!?」
俺の声に袴田はビクリと仰け反る。
「……タイプとは?」
「色白で貧乳な方か!? それとも褐色の肌に巨乳の方か!?」
「……褐色で巨乳の方です」
よし! ダークエルフの方だ! これは映えるぞ!!
「素晴らしい! 初めて役に立ったな! 袴田!!」
「そ、そんなぁ……」
不服そうな顔をしているが、無視だ。
「で、どこにいる!? 今すぐ案内してくれ!!」
「……ちょっと待ってください。もう夕方ですよ? 今から行っても夜になってしまいます。せめて明日にしてください。そうすれば集落の者に案内させますから」
「そこをなんとか!」
「……駄目です。危険です。明日の早朝から出かければ昼には着きます」
ちっ。仕方ない。ここは集落の長に従おう。
「分かった。明日早朝から頼むぞ」
「……はい」
俺は渋々了承し、ローストしたこおろぎを咀嚼した。エルフ……待っていろよ!
#
「重い」
俺に重なって眠るニコを退けてベッドから降りる。窓の外はまだ薄暗い。随分と早く目が覚めてしまった。
「ニコは寝ていろ。一人で行ってくる」
意外と眠りが浅かったのか、ニコは薄目を開けてこちらを見る。
「……駄目。一緒に行く。眠い。寝る」
「どっちだ。寝るのか一緒に行くのか」
「……おんぶ」
よし、置いて行こう。俺は素早く身支度を終え、朝食としてカメムシを齧る。ちょうど菓子パンの感覚。適度な甘味が脳を覚醒させる。
あてがわれた部屋を出ると、人影が見える。こちらに気付いて歩み寄り、男は頭を下げた。どうやら、この男が俺をエルフのところまで連れて案内してくれるようだ。
「ちょっとルーメン! わぁを置いていくつもり!?」
男との会話を聞いて目を覚ましたニコが、寝癖のついた頭で部屋から飛び出してきた。不満げだ。
「どんな危険があるか分からない。いいのか?」
「ルーメン、顔がニヤけてる! いやらしいことを考えているだろ!! 絶対に一人ではいかせないから」
ちっ。鋭いな
#
中野駅跡から北は深い森になっていた。
都市の森林化にはどうやら差があるらしく、この辺りは今まで歩いたどこよりも緑が濃い。樹木に挟まれるようにして崩れた住宅が行手を阻む。
案内を任された男は森歩きに慣れているらしく、スルスルと進んでいき、ニコも後に続く。
「ルーメン! 遅い!」
「いや、お前らはやすぎだ。もう少し手加減しろ」
最近、ボロボロとはいえ舗装された道ばかり歩いていたせいだろう。平らなところのない森の道程は体力を奪う。しかし、この先にはエルフがいる。しかも、ダークエルフ……。
「おっ、どうしたルーメン。急に元気になったな」
「目的を思い出したら活力がわいた」
「あっ、またいやらしい顔をしてる! 駄目だぞ! 絶対に駄目だからな!!」
ニコは拳を握り、グイっと見上げるように抗議する。
「それは誤解だ。エルフといえば森の民。きっと昆虫や森の生き物にも詳しい筈。俺はそれを目的にしている」
「嘘だ! ずっとニヤニヤしている!」
「これは未知なる昆虫へのニヤニヤだ!!」
「……あの、置いて行っちゃいますよ?」
男が腰に手を当て、呆れた様子でこちらを見ていた。
「すまない。急ごう」
森はさらに険しくなる。そして徐々にこの世ならざる雰囲気を帯び始めた。
中野集落に受け入れられた俺達は、復興を手伝いながら気ままに過ごしていた。といっても作業を手伝うのは俺ばかりでニコは遊び呆けていたが……。
南側ゲートの穴を塞ぎ終え、ちょっとした打ち上げを開いていた時のことだ。車座になって酒を飲み、取り止めのない馬鹿話をしている中で、袴田がある存在についてさらりと言った。
「あぁ、エルフならいますよ。女の」
「なに! どっちのタイプだ!?」
俺の声に袴田はビクリと仰け反る。
「……タイプとは?」
「色白で貧乳な方か!? それとも褐色の肌に巨乳の方か!?」
「……褐色で巨乳の方です」
よし! ダークエルフの方だ! これは映えるぞ!!
「素晴らしい! 初めて役に立ったな! 袴田!!」
「そ、そんなぁ……」
不服そうな顔をしているが、無視だ。
「で、どこにいる!? 今すぐ案内してくれ!!」
「……ちょっと待ってください。もう夕方ですよ? 今から行っても夜になってしまいます。せめて明日にしてください。そうすれば集落の者に案内させますから」
「そこをなんとか!」
「……駄目です。危険です。明日の早朝から出かければ昼には着きます」
ちっ。仕方ない。ここは集落の長に従おう。
「分かった。明日早朝から頼むぞ」
「……はい」
俺は渋々了承し、ローストしたこおろぎを咀嚼した。エルフ……待っていろよ!
#
「重い」
俺に重なって眠るニコを退けてベッドから降りる。窓の外はまだ薄暗い。随分と早く目が覚めてしまった。
「ニコは寝ていろ。一人で行ってくる」
意外と眠りが浅かったのか、ニコは薄目を開けてこちらを見る。
「……駄目。一緒に行く。眠い。寝る」
「どっちだ。寝るのか一緒に行くのか」
「……おんぶ」
よし、置いて行こう。俺は素早く身支度を終え、朝食としてカメムシを齧る。ちょうど菓子パンの感覚。適度な甘味が脳を覚醒させる。
あてがわれた部屋を出ると、人影が見える。こちらに気付いて歩み寄り、男は頭を下げた。どうやら、この男が俺をエルフのところまで連れて案内してくれるようだ。
「ちょっとルーメン! わぁを置いていくつもり!?」
男との会話を聞いて目を覚ましたニコが、寝癖のついた頭で部屋から飛び出してきた。不満げだ。
「どんな危険があるか分からない。いいのか?」
「ルーメン、顔がニヤけてる! いやらしいことを考えているだろ!! 絶対に一人ではいかせないから」
ちっ。鋭いな
#
中野駅跡から北は深い森になっていた。
都市の森林化にはどうやら差があるらしく、この辺りは今まで歩いたどこよりも緑が濃い。樹木に挟まれるようにして崩れた住宅が行手を阻む。
案内を任された男は森歩きに慣れているらしく、スルスルと進んでいき、ニコも後に続く。
「ルーメン! 遅い!」
「いや、お前らはやすぎだ。もう少し手加減しろ」
最近、ボロボロとはいえ舗装された道ばかり歩いていたせいだろう。平らなところのない森の道程は体力を奪う。しかし、この先にはエルフがいる。しかも、ダークエルフ……。
「おっ、どうしたルーメン。急に元気になったな」
「目的を思い出したら活力がわいた」
「あっ、またいやらしい顔をしてる! 駄目だぞ! 絶対に駄目だからな!!」
ニコは拳を握り、グイっと見上げるように抗議する。
「それは誤解だ。エルフといえば森の民。きっと昆虫や森の生き物にも詳しい筈。俺はそれを目的にしている」
「嘘だ! ずっとニヤニヤしている!」
「これは未知なる昆虫へのニヤニヤだ!!」
「……あの、置いて行っちゃいますよ?」
男が腰に手を当て、呆れた様子でこちらを見ていた。
「すまない。急ごう」
森はさらに険しくなる。そして徐々にこの世ならざる雰囲気を帯び始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる