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「10年後」「保健室」「背徳感」をテーマにした

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 あの時、彼女と出会ったのは保健室だ。当時、俺は教育実習生として母校に来ていた。怪我の治療のために保健室へ行くとそこで一人の養護教諭に出会った。凛とした空気をまとい、流れるような黒髪がステキな美しい女性だった。
 俺は石ころが転がるように簡単に恋に落ちてしまっていた。その後、度々彼女に会いに保健室に通うことになる。会うたびに優しく俺を迎えてくれて相談にも真剣に乗ってくれた。まるで天使みたいで純粋な人だった。それでも当時の俺は白衣の隙間からちらりと見える艶かしい足に欲情を起こしていたのを覚えている。今すぐその白衣を脱がして彼女を欲望のままに犯したい。さらには学校の保健室という状況が背徳感をひどく感じさせ興奮していた。
 結局は犯罪に手を染めることなく実習を終え無事に教員となる。母校に帰ってきたのは10年振りだ。結婚していた彼女はあの当時のまま俺に優しく声をかける。その笑顔に俺はひどく案心したのを覚えた。
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