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リスラムの巫女
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「リスラム様~!!どこにお隠れになりましたか?!」
とある国の大きな神殿で世話係の大声が鳴り響く。彼は慌てた様子で誰かを探しているようだった。あっちこっちといったりきたりとしている姿はまるで、どこぞの物語に出てきそうな忙しないウサギのようにみえる。
「はぁ、はぁ。すいません、リスラム様見ませんでしたか?」
「見てないよ。また巫女様は消えてしまったんかい?」
「はい、午後から大事な予定があったのに。リスラムさまぁあああ!!!」
神殿中に世話係の泣くような叫び声があがる頃。当の本人はといえば・・・・・・。
「はぁ、脱出できた!!今日はどこ行こうかな?」
鼻歌交じりに町へ歩いていく。足が動くたびにシャンシャンとアンクレットについている鈴が楽しげに揺れている。胡桃色の長めの髪が風にのってふわりと靡く。その顔は中世的で男性にしては美しい顔立ちをしていた。さらに印象的にさせているのがその桃色に輝く瞳であろう。あまりに神秘的な色合いにだれもが彼を振り向いて眺めてしまう。
「巫女様また逃げてきたのかい?」
「巫女様だ~!!」
「よう、巫女様。美味しい果物が手に入ったんだ。ひとつもらってくれよ。」
「巫女様今日もステキです!!」
一度、町を歩いていれば誰も彼も彼に話しかける。老若男女とわず我先にと言わんばかりに巫女を愛でている。彼は声をかけてくれる一人ひとりと挨拶を交わしていく。この国の中で花の加護を持つリスラムの巫女の地位はかなり高い。
それは精霊使いを多く輩出しているならではの理由がある。精霊が好む幻の花が存在する。それがリスラムだ。そのリスラムの加護を受けている物は多くの精霊に好かれる。さらに花の加護を持つものが住まう地域の人々もその恩恵を受けることが出来るのだ。だからこそ彼は多くの民から愛される巫女として存在している。
あまりに多くの人が集まりすぎて世話係に見つかることを恐れた彼は周りに声をかけながらその場から足早に過ぎ去った。町の中央通からはずれた場所へとやってきた。住宅や店などから離れた場所にあり、様々な植物が綺麗に咲いているこの場所は町の憩いの場でもある。芝生に寝転がっている物がいたり、楽器を引いている物がいたり。はたまた熱心に植物を書き写している者もいたりと様々である。
「んん~!!気持ちいい!」
万歳と両手をあげて体を伸ばす。つま先立ちになり体を大きく広げている。その場に寝るように倒れる。芝生のちくちくとした感触が少しくすぐったくて気持ちい。目の前にはどこまでも広がる青い空がまぶしく光っている。目を細めて手で覆うように隠すとそのまま眠気に誘われてしまいそうになる。
「あ、シドーじゃん。また逃げてきたのか?」
「その声はヴォルフ?」
起き上がって声の方向に顔を向ければ顔なじみの人物が見える。自分の幼馴染だ。そして俺のことをきちんと名前で呼んでくれる貴重な存在でもある。リスラムの加護を貰って以来、周りは俺のことを名前で呼ばなくなってしまった。すごく大事にしてくれているのはわかるけどそのことだけは少し寂しく感じている。
「今日どっかの国の偉い人と面会なんだって。めんどくさい。」
「すっぽかしていいのか?」
「いいんじゃない?」
「だめだろうよ。」
体を丸めて芝生を眺める。葉っぱの先を指先でつまんだり曲げたりと弄りまわす。そんなおれの要するに呆れてたような声を上げて隣に腰を落とす。しばらく何を話すでもなくただ座っている。
「ヴォルフ。」
「どうした、シドー。」
「おれ、時たま思うんだ。もし俺が加護がなかったらどんな生活していたかなって。皆やさしいけど、だれもおれを見てくれている気がしてないんだ。」
皆すごく良くしてくれる。優しいし、美味しい物や新しい物はすぐくれる。でも彼らに本当の俺が映っているのだろうか?俺を通して花の加護を見ているだけなのではないか。こんなこと思うこと自体、優しくしてくれる彼らに申し訳なく感じる。それでもふと考えてしまう時がある。
「シドーニウス。」
彼から呼ばれて顔を上げる。彼の方向に顔を向けるとパンと子気味いい音が聞こえる。そのまま頬全体がじんわりと熱がおびる。彼に両頬を握られるように叩かれたことに気づく。痛みから顔を歪ませ彼を睨む。
「そんな弱気でどうする!!お前は巫女だろうがなんだろうがオマエなんだよ。シドーニウス!!」
おれの頬を掴んだままニンマリとした表情を浮かべている。
「それに案心しろ。みんなはな、オマエが巫女だがら優しいんじゃない。巫女がお前だから皆好きなんだ。」
「俺だから、好き?」
「あぁ、そうだ。みんなお前だから好きなんだ。」
「そっか、ありがとう。」
彼の言葉が俺の心にじわりじわりと染み込んでいく。彼の言葉を鸚鵡返しで繰り返しようやく頭で認識できるようになる。心までポカポカと温かくなってくる。その時、一陣の風にのってふわりふわりとどこからか花びらが舞い上がってやってきた。その美しい光景に目を細める。まるで、俺の気持ちを祝福するかのようだった。
とある国の大きな神殿で世話係の大声が鳴り響く。彼は慌てた様子で誰かを探しているようだった。あっちこっちといったりきたりとしている姿はまるで、どこぞの物語に出てきそうな忙しないウサギのようにみえる。
「はぁ、はぁ。すいません、リスラム様見ませんでしたか?」
「見てないよ。また巫女様は消えてしまったんかい?」
「はい、午後から大事な予定があったのに。リスラムさまぁあああ!!!」
神殿中に世話係の泣くような叫び声があがる頃。当の本人はといえば・・・・・・。
「はぁ、脱出できた!!今日はどこ行こうかな?」
鼻歌交じりに町へ歩いていく。足が動くたびにシャンシャンとアンクレットについている鈴が楽しげに揺れている。胡桃色の長めの髪が風にのってふわりと靡く。その顔は中世的で男性にしては美しい顔立ちをしていた。さらに印象的にさせているのがその桃色に輝く瞳であろう。あまりに神秘的な色合いにだれもが彼を振り向いて眺めてしまう。
「巫女様また逃げてきたのかい?」
「巫女様だ~!!」
「よう、巫女様。美味しい果物が手に入ったんだ。ひとつもらってくれよ。」
「巫女様今日もステキです!!」
一度、町を歩いていれば誰も彼も彼に話しかける。老若男女とわず我先にと言わんばかりに巫女を愛でている。彼は声をかけてくれる一人ひとりと挨拶を交わしていく。この国の中で花の加護を持つリスラムの巫女の地位はかなり高い。
それは精霊使いを多く輩出しているならではの理由がある。精霊が好む幻の花が存在する。それがリスラムだ。そのリスラムの加護を受けている物は多くの精霊に好かれる。さらに花の加護を持つものが住まう地域の人々もその恩恵を受けることが出来るのだ。だからこそ彼は多くの民から愛される巫女として存在している。
あまりに多くの人が集まりすぎて世話係に見つかることを恐れた彼は周りに声をかけながらその場から足早に過ぎ去った。町の中央通からはずれた場所へとやってきた。住宅や店などから離れた場所にあり、様々な植物が綺麗に咲いているこの場所は町の憩いの場でもある。芝生に寝転がっている物がいたり、楽器を引いている物がいたり。はたまた熱心に植物を書き写している者もいたりと様々である。
「んん~!!気持ちいい!」
万歳と両手をあげて体を伸ばす。つま先立ちになり体を大きく広げている。その場に寝るように倒れる。芝生のちくちくとした感触が少しくすぐったくて気持ちい。目の前にはどこまでも広がる青い空がまぶしく光っている。目を細めて手で覆うように隠すとそのまま眠気に誘われてしまいそうになる。
「あ、シドーじゃん。また逃げてきたのか?」
「その声はヴォルフ?」
起き上がって声の方向に顔を向ければ顔なじみの人物が見える。自分の幼馴染だ。そして俺のことをきちんと名前で呼んでくれる貴重な存在でもある。リスラムの加護を貰って以来、周りは俺のことを名前で呼ばなくなってしまった。すごく大事にしてくれているのはわかるけどそのことだけは少し寂しく感じている。
「今日どっかの国の偉い人と面会なんだって。めんどくさい。」
「すっぽかしていいのか?」
「いいんじゃない?」
「だめだろうよ。」
体を丸めて芝生を眺める。葉っぱの先を指先でつまんだり曲げたりと弄りまわす。そんなおれの要するに呆れてたような声を上げて隣に腰を落とす。しばらく何を話すでもなくただ座っている。
「ヴォルフ。」
「どうした、シドー。」
「おれ、時たま思うんだ。もし俺が加護がなかったらどんな生活していたかなって。皆やさしいけど、だれもおれを見てくれている気がしてないんだ。」
皆すごく良くしてくれる。優しいし、美味しい物や新しい物はすぐくれる。でも彼らに本当の俺が映っているのだろうか?俺を通して花の加護を見ているだけなのではないか。こんなこと思うこと自体、優しくしてくれる彼らに申し訳なく感じる。それでもふと考えてしまう時がある。
「シドーニウス。」
彼から呼ばれて顔を上げる。彼の方向に顔を向けるとパンと子気味いい音が聞こえる。そのまま頬全体がじんわりと熱がおびる。彼に両頬を握られるように叩かれたことに気づく。痛みから顔を歪ませ彼を睨む。
「そんな弱気でどうする!!お前は巫女だろうがなんだろうがオマエなんだよ。シドーニウス!!」
おれの頬を掴んだままニンマリとした表情を浮かべている。
「それに案心しろ。みんなはな、オマエが巫女だがら優しいんじゃない。巫女がお前だから皆好きなんだ。」
「俺だから、好き?」
「あぁ、そうだ。みんなお前だから好きなんだ。」
「そっか、ありがとう。」
彼の言葉が俺の心にじわりじわりと染み込んでいく。彼の言葉を鸚鵡返しで繰り返しようやく頭で認識できるようになる。心までポカポカと温かくなってくる。その時、一陣の風にのってふわりふわりとどこからか花びらが舞い上がってやってきた。その美しい光景に目を細める。まるで、俺の気持ちを祝福するかのようだった。
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