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最後の晩餐は肉まん

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 学校の帰りいつもと同じように幼馴染と帰宅しながらコンビニに立ち寄る。日に日に寒さが身にしみるようになってきて何か暖かいものを食べたようかと話になり立ち寄った。いつもの店員がいつもとは違う表情をしながらも今日も同じようにレジに立ち店番をしている。肉まんとあんまんを頼み袋に包んでもらう。ホカホカと湯気の立っているそれは見ているだけで体が温まりそうだ。コンビニを出ると外で待っていた彼女が俺に気づいて歩いてきた。

「愛香、あんまんでよかったか?」
「うん、ありがとう。まーちゃん。」
俺からあんまんを受け取ると彼女は嬉しそうに微笑んでいる。近くの塀の淵に腰掛けるとそのまま袋から取り出して肉まんにかぶりつく。中の肉汁が溢れて火傷しそうなほど熱かった。寒い中食べる肉まんは本当に美味しい。彼女の方をみると小さな口で一生懸命頬張るすがたはリスのようで可愛らしかった。つい笑みがこぼれる。

「おいしいね。」
「あ、そうだな。」
自分の視線に気づいたのか少し恥ずかしそうにしながら微笑んできた。しばらくの間無言になって肉まんを食べていると彼女が俺のほうに声をかけてきた。

「まーちゃん。」
「ん?どうした。」
顔を向けると先ほどの笑みをなくし少し不安そうな顔をしていた。不思議に思い首をかしげて見つめると彼女が大きく息を吸い込んで吐いた。意を決したような目を向けて俺を真っ直ぐ見つめている。

「あたしね・・・・・・ずっと話したいことがあったの。あたしね、ずっと、まーちゃんのこと」
「待った。」
彼女の言葉をきちんとした瞬間、体が勝手に動いた。彼女の口に軽く手を置いて待ったをかける。ずっと分かっていた彼女の気持ちも自分の想いも。それでもこの関係が壊れることが怖くて黙っていたんだ。それはにしないといけない。

「え?」
「先に言わせて欲しい。」
驚いたように目を開いて固まっている彼女の手をそっと握る。ゆっくり口を開いた。寒さのせいで白い湯気が俺と彼女の間にすっと立ち上っては消えていった。

「愛香。好きだ。」
「ほんとに?」
「あぁ、本当だ。」
「嬉しい。あたしもずっとまーちゃ・・・・・・将人が好きだよ!」
唇を震わせているのは寒いせいなのかはたまた違う理由なのかはわからない。瞳いっぱいに涙をためてこちらに何度も確認してくる姿が愛おしくてたまらない。ジワジワと理解できたのか頬が赤くなったかと思うと満面の笑みを浮かべて嬉しそうに叫んだ。答えるように手を強く握り返してくる。

「ずっと一緒にいてくれる?」
「あぁ、までずっとそばにいるよ。」
「ありがとう。将人愛してる。」
「おれも愛してる。」
二人で手を握りあって空を見上げる。煌々と厚く燃えるように輝いている星はまるで俺たちを祝福しているようだ。もうすぐ寒さも感じなくなるだろう。それでも彼女とこうして想いを通じ合えたのは最高の日だ。
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