転生令嬢シシィ・ファルナーゼは死亡フラグをへし折りたい

柴 (柴犬から変更しました)

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第二章

19 拾ったのではなくお友達です

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 お父様の誤解を解くべく、私は森で遭遇した出来事について話をした。

 二頭の馬が喧嘩をしていた事、原因が林檎だった事、おやつに持って行ったアップルパイで二頭が仲直りした事。


「そして!白い馬さんと黒い馬さんが友達になってくれたんです!拾って来たんじゃないよ?」


 お父様に力説していると、スピネルがゴホンと咳をした。おや?と思ってそちらを見ると、彼は視線を合わせないままに「一番は僕です」と……わーっ、スピネル、可愛いねぇ。

 自分が一番だと主張するスピネルが余りにもぷりちーなので、抱きつこうと両手を広げて近づいたら私が寄った分以上に後ずさられた。

 うん、ごめん、匂いが怖いんだった。分かってるけど悲しい。


「お父様、一番最初のお友達はスピネルです!白いお馬さんと黒いお馬さんは、二番目と三番目のお友達」


 私の言葉を聞いて口を尖らせつつも小さく頷くスピネル。あー、もー、かーわいいーなー。


『シシィ、どちらが二番だえ?』


「ん?それ大事?」

 そういえば、スピネルも”一番”に拘っていた。デレたスピネルを思い出すと顔が緩んでしまう。


『あら、わたくしに決まっているでしょう?”白い馬と黒い馬””二番目と三番目”と言ってたのをメスカマキリは聞いてなかったかしら?』

『名を出した順に意味などないわ。妾が二番だろう。女狐より先に友になろうと言ったのは妾じゃしな』

『ほほほ。言ったもの勝ちだと言う訳かしら?そんな順番よりシシィの気持ちの方が大切じゃなくて?』

『なら、ますます妾が二番目の友と決まったようなものじゃな』


 黒い馬さんが鼻で笑うと、白い馬さんが苛立ったか前足でカツカツと地面を蹴った。

 あれれ。せっかく仲直りしたのにまた喧嘩すんのかな。さっきの喧嘩の原因は林檎だったし、今度は友達になった順番か。争いのトリガーになる物が小さすぎやしないだろうか。


「二人とも二番!同率二位!だから、次のお友達は四番。それでいいでしょ?喧嘩は無し」


 お馬さん達は長だの女王だのと言っているから決して年若い訳じゃ無いと思うんだけど、こんな子どもの喧嘩してて周囲に呆れられているんじゃないだろうか。威厳とかなさそうだ。

 あ、周りに見られないようにわざわざ裏側からこっちにやってきて喧嘩してたのかも。


 私の仲裁で大人しくなった二頭を生暖かい目で見ていると、お父様が私と彼女たちとを見比べて首を傾げた。


「シシィ、お前は馬の言葉が分かるのか?」


 はい?


「分かるも分からないもないよ。普通にお喋りしてるし」


 スピネルを見て「そうだよね?」と聞けば、彼もうんうんと頷いた。まさか、お父様は彼女たちの言葉が分からないのだろうか。

 疑問に思って訊ねると、お父様は彼女たちが嘶いているようにしか聞こえないという。お父様に付き従っていた使用人たちも、お父様に賛同している。


「そうなんだ?何でだろうね?お友達だからかな?」

「お嬢様、お友達になる前からお話しされておりました」

「あ、そうか。ねぇ、お馬さん達、なんで私とスピネルはお話しできるのに、お父様たちは出来ないの?」


 考えても分からない事は聞くに限る。


『何故かのぅ。理由は分からぬが、以前も話の出来るものと出来ぬものはおったのぅ』

『でも、話の出来るものはとっても少なくてよ?』


 ほうほう、お話しできる人間はレアなのか。私とスピネルだけじゃなく、探せばもっといるんだろう。

 お父様たちにはお馬さん達の言葉が分からないので、聞く傍らから通訳する。


「以前とは?」

『以前とは以前じゃ。そうさの、妾たちが表に出なくなる前は、この国は戦をしておったの。妾もまだ長ではなく、遊びまわっていた覚えがあるわ』


 お父様の質問に黒い馬さんが答える。お馬さん達の言葉は分かる人と分からない人がいるのに、人間の話す言葉はお馬さん達に通じるようだ。不思議だね。


「この国が戦争をしていた頃だって」

「はぁ!?」


 お父様は声を上げた後、頭を抱えて座り込んだ。

 こんなお父様の姿を見たのは初めてだ。いつもの穏やかで優しくて冷静なお父様は何処へ行ってしまったんだろう。


「シシィ。先の戦争はもう300年も前だ。この馬は……いや、シシィ、あの角はまさか本物ではないだろう?お前が遊びで付けたものだ、そうだろう?」


 ”うん”と言え!いや、言ってください!とばかりのお父様の懇願だが嘘は付けない。


「ううん、本物。白いお馬さんがユニコーンで、黒いお馬さんがバイコーンだって」

「ユニコーン……バイコーン……」


 座り込んでいたお父様はとうとう膝をついて崩れ落ちてしまった。見れば使用人のみんなも尻もちをついたり膝を付いたりしている。なんだなんだ。よもや、流行り病に皆がかかって一斉に発病したとか?水当たりとか食当たりとか?


 何も言わなくなってしまったお父様をどうしようかと思っていると、お馬さん達が自分たちを構えとばかりに鼻面を私に押し付けてきたので、思わずよろけた。

 白いお馬さんも黒いお馬さんも、サイズの違いを考慮してほしい。私は、こんなにちっちゃいんだから、悪気が無くてもその巨体とそれに見合う力を持っているお馬さん達がじゃれついて来たら倒れちゃうよ。


『なにやら取り込みの様子じゃの。日を改めるとしよう』

『そうね。家の場所も覚えましたわ。また会いましょう、小さな子』

『それまでに良き名を考えておくのじゃぞ?』

『また会う時にはアップルパイを用意してくれると嬉しくてよ』


「うん、五日後にまた!ちゃんと名前を考えておくからね」


 私が手を振ると、白い馬さんと黒い馬さんの姿が掻き消えた。まるで最初からそこにいなかったかのようだが、巨体につけられた足跡がそれを否定する。


「ほぉぉぉおおお。お馬さんたち凄い」


 感心して拍手した私を、お父様が物申したげに見つめている。一緒に拍手したらいいのに。


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