転生令嬢シシィ・ファルナーゼは死亡フラグをへし折りたい

柴 (柴犬から変更しました)

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第三章

49 事件 5

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 男たちの言った言葉を理解することを脳が拒否してる。


 ・ この無法者のバックにいる力のある貴族とはファルナーゼ家

 ・ ボスはシシィ・ファルナーゼ


 いや、無いわー。私がボスって言うのは勿論だけど、お父様がコイツ等のバックに付いて悪事をほう助して甘い汁を吸う?無いわー。天地がひっくり返っても無いわー。

 私にベタ甘のお父様だけど、公私のけじめはきっちりつける人だし、職務に忠実すぎて四角四面だの、固すぎて石を投げつけられたら石の方が割れるだの、真面目の上にクソが付くだの言われている人なのだ。


 隣にいるスピネルの真っ黒オーラが、オジサン達だけじゃなくて私にまで影響を及ぼしているので、ちとしんどい。


「これって、お父様が激おこする案件よね?」


 私がそういうと、スピネルのオーラが霧散した。多分、自分の手で制裁するよりもお父様に委ねた方が効果的だと判断したんだと思う。


「はい、旦那様ご自身の事よりもお嬢様を陥れようとする姦計にさぞお怒りになるでしょう。旦那様が怒り心頭に発して関係者を粉砕する未来が見えました」


 粉砕って何だ、粉砕って。あくまで冷静に怖い予見をするスピネルは、すでに目の前の男たちへの関心を失ったようでこめかみをポリポリと掻いている。確かに、お父様は立場柄もあって悪意や非難が自分に向けられることも、策略をもって自分を追い落とそうとする輩が出現したことも冷静に処理するだろう。

 けど、その策略に私を巻き込んだことは許容できないに違いない。


「実行犯を連れて帰れば、あとは旦那様がどうにでもしますよ」


 元々乗り気ではなかったスピネルのやる気が、もう微塵も見当たらない。私がどこまで突進していくのかと懸念していただろうが、お父様に丸投げ案件となってしまったのだから意気込みがゼロになってしまっても仕方ない。


「うん。フルボッコにしようと思ってたけど気の毒になったから、無力化してお父様へのお土産にするだけでいい」


 彼らの未来に合掌。


「お……、おい、コイツ等放ってさっさとずらかるぞ」


 私たちが余りにも余裕な顔をしているからだろう、男たちのうちの一人が逃げる算段をした。


「誰か一人が足止めして、残りでこのガキを連れて行こう」


「はっ、なにビビってんだよ。俺らのバックには、あの……」


 ファルナーゼか私の名前を出そうとしたのであろう男は、いつのまにかスピネルが持っていた小石を投げつけられ、眉間を割られたので続きは言えなかった。


 これで、残りは二人。


「スピネル、あの子を守って。私がこいつらを相手するから」

「逆にしてください、お嬢様。今は剣をお持ちではないのですから」

「平気。元々、無手の方が得意だから」


 前世では剣道よりも空手の方が向いていた。より好きなのは剣道の方だったからあまり芽が出なくても続けていたけれど、選手として伸びたのは空手だった。


「そういう意味じゃありません。剣を持っていないという事は、お嬢様の手があの下種野郎どもに触れるという事ではありませんか。それは許容しかねます。お嬢様が穢れる。穢れた剣は替えればいいですが、お嬢様のおては替えられないのですよ!?」


 は……ははは。触れたら穢れるってどういう事よ。と、混ぜっ返そうと思ったけど、スピネルの顔が余りにも真剣なので「ハイ」と言うしかなかった。


 腰が引けた男二人くらい、スピネルにとっては何の脅威でもなかった。

 スピネルが一歩足を踏み出しただけで、男たちはビクッと体をこわばらせたので、その隙をついて少女を奪取。私が男たちから距離を取るやいなやスピネルが二人の意識を刈り取る。


 簡単なお仕事でございました マル


「もう、大丈夫だからね。あの男たちは背後を吐かせたうえで厳罰に処すことを約束する」


 まだ体を震わせている少女の背を撫でながら言うが、少女の目から不安は消えない。


「でも……あいつら、お貴族様の後ろ盾があるって……。あ、いえ、ごめんなさい。助けてくれてありがとうございますっ」


 礼を言っていない事に気付いた少女が慌てて頭を下げる。


「うん、大丈夫。あいつらの言う後ろ盾って、私のことだから」

「ひぃっ」

「あ、違う違う。名前を語られていただけ!本当に私がアイツ等のボスとかじゃないから!お父様も、そんな人じゃないから!」


 誤解を与えてしまう物言いだったか、反省。真っ青になって震える少女に慌てて弁明するけれど、伝わった気がしない。


 私がわたわたしている間にスピネルは三人の男たちを後ろ手に拘束していた。仕事が早いな、偉いぞ、スピネル。手首を縛った上に、両手の親指同士も縛っている。男たちにそこまでする程の脅威を感じた覚えはないけれど、念には念を入れたようだ。細やかな神経に感服する。


 私は自分が大雑把な事を自覚しているから、スピネルの慎重さを尊敬している。


 まだ怯える少女を宥めつつ、数珠つなぎにした男たちを引き摺るスピネルと共に馬車に戻ったら、馬の暴走による事故の処理は済んでいたようで、青い顔をしている御者がぽつねんと馬車の傍に立っていた。


「お嬢様――――ッ。なんで馬車にいないんですかっ。スピネルもなにして……」


 そこまで声を上げてから、スピネルが引き摺っている男たちに気付いた御者は、短時間で一体何が……と呟き天を仰いだ。


 心配させてゴメン。でも、後悔はしていないのだ。


 路地に入ろうとした私たちに声を掛けてきたおばちゃんが目を丸くしている。あ、そうだ、町の噂話を証言してもらうために、うちに来てもらおう。


 私が名乗って同行を求めると、がたがたと震えながらも拒否する事も出来ずにいるおばちゃんも馬車に同乗してもらう。


 大丈夫、お父様は怖くないからね。


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