104 / 129
第四章
101 婚約者とその兄のこと
しおりを挟む
帰りの馬車の中、誘拐されているときに邂逅して後回しにしたスピネルのお兄さんについて話す。
「スピネルー、お兄さんにどうやって復讐する?」
「復讐?」
だってそうでしょ。スピネルは散々お兄さんに虐められて、薬を盛られて暴力を振るわれて捨てられて、危うく暗黒竜になるところだったんだ。
お兄さんが何しに来たのか知らないけど、ここであったが百年目(初めましてだけど)。恨み晴らさでおくべきか。
「ああ、その話は異母兄の預かり知らぬところだったらしいよ」
そう言ってスピネルはお兄さんから聞いた事を話してくれた。
でもさ、お兄さんが知らないところでお兄さん派?の人たちが勝手にした事だから関係ないってことはないと思うんだ。下のモンがやったことは上のモンが責任とるべきだ。少なくともお父様なら、家門の誰かがしでかしたことを「知らなかった」で済ましたりはしないと思う。
「問題ないよ」
「あーりーまーすーっ」
問題だらけだわっ!そもそもお兄さんがスピネルを虐めてたのは実際にあった事だという。もしも、お兄さんがスピネルを庇護してくれていればこんなひどい目に遭ったりしてなかっただろう。
それをいうならスピネルに関わってこなかったという竜王もそうだ。
子どもに無関心になるなら子ども作らなきゃいい。立場上もあって子を儲けることが義務であったのなら、自分の代わりにちゃんと育てて守ってくれる人を付けろ。
王様なんだからそれくらい余裕で出来ただろっ。
「だって、それが無かったらシシィに会えなかった」
「あー……うー……」
いや、確かにね?それが無ければ私とスピネルが出会うことはなかったと思う。けど、それとこれとは別というか、私の気持ちの収まりがつかないというか。スピネルがずっと竜王国にいたら作れただろう人間関係も出会いもあった筈で……とか考えたらムカムカしてきた。
これはあれか、嫉妬とか独占欲とかそういうものか?
ということは私はスピネルのことがそういう気持ちで好きなんだろうか。
んー、難しい。例えばお父様やお母様が出会わなかったとして、それぞれ別の相手と結婚して子どもを儲けていたらと考えらたらやっぱりムカつくし。
独占欲であることは間違いないけれど、それが何に由来して起きた感情なのかを判断するのが難しい。
みんな、どうやって愛だの恋だの理解するんだろう?
「スピネルはお兄さんの事を恨んでないの?」
「特に、何も」
「いいの?」
「ああ、どうでもいいな」
ああ……これはお兄さんがちょっとだけ気の毒になる。スピネルが言うには、お兄さんは番との出会いがあり、その番な彼女の影響で自分が弟にした仕打ちを後悔し謝罪に来たのだという。番さんはよっぽど出来た女性なんだろう。お兄さん的には自分を鑑みる機会と成長する機会を貰ったんだから、女神として讃えるべきだ。
と、それはともかく。
”どうでもいい”って結構きつい言葉だと思う。
お兄さんを擁護する気持ちは全くないけど、どうでもいいと言われるくらいなら恨み言を言われた方がよっぽどいいだろう。加害者側が償う機会を与えられずに放置されたら、罪はいつまでも薄れずに澱となるだろうから。
……これは、王子さまにも言えることだろうか。
王子さまは”前回”のシシィ・ファルナーゼに冤罪を被せ断罪した。前回の王子はそれを冤罪と知らず、罪を犯したシシィ・ファルナーゼに罰を与えたつもりでいて、彼女の死後にそれが冤罪だと分かった。
償おうにも、償いようのない醜行。
巻き戻ってやり直しの人生で償おうにも、前回のシシィ・ファルナーゼとは別人となった私がいる。
王子さまの罪は生涯彼について回るのだ。
なんだ、そう考えたらお兄さんはラッキーなんじゃん。王子さまと違って、謝罪をする相手は生きている。例え「どうでもいい」と言われようが歯牙にもかけてもらえなかろうが、お兄さんにはこれからとれる行動があるだろう。
「そっか、どうでもいいのかぁ」
「そう、どうでもいいな」
「じゃ、私もそう思う事にする」
お兄さんが許されることはないかもしれない。だって、スピネルはお兄さんの行いを責めていないのだから。
無関心って、罵倒よりキツイとはおもうが仕方ない。私はどうあってもスピネルの味方しかできないからね。
「私が大事なのはシシィ。そして、シシィが大事にしているもの。それ以外はどうでもいい」
うん、諦めたんだよ、もう。スピネルが周囲に目を向けるのも私の為。ファルナーゼ家を大事にするのも私の為。レナやヴィヴィアナ様に友好的なのも私の為。それを本人が良しとしているので私にはどうもできない。
こんな愛の重い婚約者を持った私が出来ることは、真っ当に生きること。
私が道を踏み外したら暗黒竜出現!なんてのは、己を正す抑止力として最強じゃなかろうか。
「ごめんね、愛が重くて?」
うん、諦めた。
「スピネルー、お兄さんにどうやって復讐する?」
「復讐?」
だってそうでしょ。スピネルは散々お兄さんに虐められて、薬を盛られて暴力を振るわれて捨てられて、危うく暗黒竜になるところだったんだ。
お兄さんが何しに来たのか知らないけど、ここであったが百年目(初めましてだけど)。恨み晴らさでおくべきか。
「ああ、その話は異母兄の預かり知らぬところだったらしいよ」
そう言ってスピネルはお兄さんから聞いた事を話してくれた。
でもさ、お兄さんが知らないところでお兄さん派?の人たちが勝手にした事だから関係ないってことはないと思うんだ。下のモンがやったことは上のモンが責任とるべきだ。少なくともお父様なら、家門の誰かがしでかしたことを「知らなかった」で済ましたりはしないと思う。
「問題ないよ」
「あーりーまーすーっ」
問題だらけだわっ!そもそもお兄さんがスピネルを虐めてたのは実際にあった事だという。もしも、お兄さんがスピネルを庇護してくれていればこんなひどい目に遭ったりしてなかっただろう。
それをいうならスピネルに関わってこなかったという竜王もそうだ。
子どもに無関心になるなら子ども作らなきゃいい。立場上もあって子を儲けることが義務であったのなら、自分の代わりにちゃんと育てて守ってくれる人を付けろ。
王様なんだからそれくらい余裕で出来ただろっ。
「だって、それが無かったらシシィに会えなかった」
「あー……うー……」
いや、確かにね?それが無ければ私とスピネルが出会うことはなかったと思う。けど、それとこれとは別というか、私の気持ちの収まりがつかないというか。スピネルがずっと竜王国にいたら作れただろう人間関係も出会いもあった筈で……とか考えたらムカムカしてきた。
これはあれか、嫉妬とか独占欲とかそういうものか?
ということは私はスピネルのことがそういう気持ちで好きなんだろうか。
んー、難しい。例えばお父様やお母様が出会わなかったとして、それぞれ別の相手と結婚して子どもを儲けていたらと考えらたらやっぱりムカつくし。
独占欲であることは間違いないけれど、それが何に由来して起きた感情なのかを判断するのが難しい。
みんな、どうやって愛だの恋だの理解するんだろう?
「スピネルはお兄さんの事を恨んでないの?」
「特に、何も」
「いいの?」
「ああ、どうでもいいな」
ああ……これはお兄さんがちょっとだけ気の毒になる。スピネルが言うには、お兄さんは番との出会いがあり、その番な彼女の影響で自分が弟にした仕打ちを後悔し謝罪に来たのだという。番さんはよっぽど出来た女性なんだろう。お兄さん的には自分を鑑みる機会と成長する機会を貰ったんだから、女神として讃えるべきだ。
と、それはともかく。
”どうでもいい”って結構きつい言葉だと思う。
お兄さんを擁護する気持ちは全くないけど、どうでもいいと言われるくらいなら恨み言を言われた方がよっぽどいいだろう。加害者側が償う機会を与えられずに放置されたら、罪はいつまでも薄れずに澱となるだろうから。
……これは、王子さまにも言えることだろうか。
王子さまは”前回”のシシィ・ファルナーゼに冤罪を被せ断罪した。前回の王子はそれを冤罪と知らず、罪を犯したシシィ・ファルナーゼに罰を与えたつもりでいて、彼女の死後にそれが冤罪だと分かった。
償おうにも、償いようのない醜行。
巻き戻ってやり直しの人生で償おうにも、前回のシシィ・ファルナーゼとは別人となった私がいる。
王子さまの罪は生涯彼について回るのだ。
なんだ、そう考えたらお兄さんはラッキーなんじゃん。王子さまと違って、謝罪をする相手は生きている。例え「どうでもいい」と言われようが歯牙にもかけてもらえなかろうが、お兄さんにはこれからとれる行動があるだろう。
「そっか、どうでもいいのかぁ」
「そう、どうでもいいな」
「じゃ、私もそう思う事にする」
お兄さんが許されることはないかもしれない。だって、スピネルはお兄さんの行いを責めていないのだから。
無関心って、罵倒よりキツイとはおもうが仕方ない。私はどうあってもスピネルの味方しかできないからね。
「私が大事なのはシシィ。そして、シシィが大事にしているもの。それ以外はどうでもいい」
うん、諦めたんだよ、もう。スピネルが周囲に目を向けるのも私の為。ファルナーゼ家を大事にするのも私の為。レナやヴィヴィアナ様に友好的なのも私の為。それを本人が良しとしているので私にはどうもできない。
こんな愛の重い婚約者を持った私が出来ることは、真っ当に生きること。
私が道を踏み外したら暗黒竜出現!なんてのは、己を正す抑止力として最強じゃなかろうか。
「ごめんね、愛が重くて?」
うん、諦めた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる