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スズカはエコライフのビルの地下駐車場にいた。車の後部座席の下に隠してあったいつものパーカーワンピースに着替えると、地べたで眠りこけているサツキの傍らに寄った。
「おーい、サツキくん。いつまで寝てるのー?」
ぱちぱちとサツキの頬を叩く。
「ん……」
数度頬を叩いたところでようやく、だらりと緩み切っていたサツキの表情筋が、ぴくりと反応する。
「んん……?」
眉がひそめられ、うっすらと目が開いた。濡れた瞳がスズカを捉える。
「お。やっと起きたか、僕ちゃん」
スズカがサツキから手を離すと、サツキの身体がずるりと地面に落ちた。
「あだっ!!」
サツキは素っ裸のまま、古びたビルの地下駐車場に転がった。
「たた……って、もう! なにするんですか、スズカさん!」
サツキが情けない声を上げる。そんなサツキをスズカは呆れ気味に見下ろした。
「いや、なにするんですかって……こっちのセリフなんだけど。サツキくんさぁ。そろそろクビにしてもいいかな? 君、今回もずっと素っ裸で伸びてただけでなんの役にも立ってないんだけど」
「はっ! そうでした!? って、きゃあ!?」
ぼんやりしていたサツキはようやく自分の置かれた状況を思い出した。そして、自分が布一枚もまとっていないことに気付き、慌てて手で大事なところを隠す。
サツキは瞳に涙を溜めて、スズカを睨んだ。
「すっ……スズカさん!! 見た!? 僕のその……見た!?」
「ないない」
スズカは真顔で手を振った。あからさまにホッと息を吐くサツキに、スズカはぴしゃりと言った。
「そもそも使えない後輩には興味がない」
「がーん! そんなぁ」
「バイトのお使いウサギたちの方がよっぽど使えるよ」
「はは。まぁそう言わないでくださいよ、スズカさん」
スズカの辛辣な言葉に、サツキは苦笑を漏らした。
「それにしても無事でよかったです。そういえば、タカミは……アイツら、どうなりました?」
「まったく、起きたら起きたできゃんきゃんうるさいなぁ……」
スズカはサツキを無視して軽自動車に乗り込むと、グローブボックスの中に隠しておいたもう一台のスマホを取り出し、いじり出した。
タカミの前で使用したスマホは、彼に拉致されたときに奪われたままである。あれはダミーで、スズカの情報はなにひとつ入ってないからいいのだが。
ほどなくして、液晶画面にドローンの映像が映し出された。
「おっ、もう臓器摘出始まってる」
「えぇっ!? 嘘、なに!? 誰の臓器!? え、僕生きてる?」
パニックになっているサツキを冷ややかに一瞥し、スズカはスマホに視線を戻す。
サツキはスズカの背後からスマホを覗き見た。
「うわぁ……マジか。これマジもんの臓器……うぇぇ、グロ」
サツキは眉を寄せ、スズカに抱きつきながらスマホ画面を凝視している。
「……サツキくん、苦しいってば」
「あ、ごめん」
スズカは絡みついてくるサツキをひと睨みしつつ、まだ伸びているタカミへ視線を移した。
まだ、仕事は終わっていない。
スズカはフードを被った。
「とにかく今はそいつをミカワさんとこに届けにいくよ。サツキくん、ぼさっとしてないで早く着替えて。タカミを拘束したら車に乗せて」
「了解です!」
元気よく返事をして、サツキは速やかに黒のロングパーカーに着替えた。スズカと同じデザインのものである。
続けてタカミの手足を拘束して荷台に詰め込むと、サツキは運転席に乗り込む。
シートベルトをしっかり締め、エンジンをかけながらサツキはちらりとスズカを見た。
「なに?」
サツキの視線に気付いたスズカが、スマホから顔を上げずに聞く。
「……いえ、あの……すみませんでした。僕、また役に立てなくて」
「……べつに。サツキくんにはハナから期待なんてしてないし」
「はは……そうですか……」
サツキはぽりぽりと頬をかいた。
「……でもまぁ、演技自体は上手かったよ。タカミ、全然疑ってなかったし」
スズカはスマホを操作しながら、淡々と言った。
不意に褒められたサツキは、嬉しさに頬を緩ませる。
「本当ですか!?」
スズカはちらりとサツキを見て、ため息を漏らした。
「……いや、なににやけてんのよ。演技以外はダメダメだったんだから喜ばない」
「はぁい」
サツキはにやけながら車を走らせる。
「まったく、単純ね」
「だって今日は運転するスズカさんも見られたし、デートできたし」
バカなのだろうか。スズカは呑気なサツキを殴りたくなった。スズカはスマホの画面を消し、車窓に肘をついてサツキを見た。その視線は冷凍ビームのごとく冷たい。
「へぇ……? 君、ちゃっかり擬似デート楽しんでたんだ? 随分余裕があったのねぇ? まあそうよね。君、私がカワイたちと対峙してる間、麻酔用マスク付けてぐーすか寝てたんだもんね」
恐ろしく低い声に、サツキは身震いした。車内の空気が五度くらい下がった気がする。
「……いや、あの……ハイ、すみませんでした」
サツキは内心しょんぼりとしながら、ハンドルを握り直した。二人を乗せた赤色の軽自動車は、すっかり薄闇に染まった街を滑っていく。
スズカは再びスマホをいじり出した。
「おーい、サツキくん。いつまで寝てるのー?」
ぱちぱちとサツキの頬を叩く。
「ん……」
数度頬を叩いたところでようやく、だらりと緩み切っていたサツキの表情筋が、ぴくりと反応する。
「んん……?」
眉がひそめられ、うっすらと目が開いた。濡れた瞳がスズカを捉える。
「お。やっと起きたか、僕ちゃん」
スズカがサツキから手を離すと、サツキの身体がずるりと地面に落ちた。
「あだっ!!」
サツキは素っ裸のまま、古びたビルの地下駐車場に転がった。
「たた……って、もう! なにするんですか、スズカさん!」
サツキが情けない声を上げる。そんなサツキをスズカは呆れ気味に見下ろした。
「いや、なにするんですかって……こっちのセリフなんだけど。サツキくんさぁ。そろそろクビにしてもいいかな? 君、今回もずっと素っ裸で伸びてただけでなんの役にも立ってないんだけど」
「はっ! そうでした!? って、きゃあ!?」
ぼんやりしていたサツキはようやく自分の置かれた状況を思い出した。そして、自分が布一枚もまとっていないことに気付き、慌てて手で大事なところを隠す。
サツキは瞳に涙を溜めて、スズカを睨んだ。
「すっ……スズカさん!! 見た!? 僕のその……見た!?」
「ないない」
スズカは真顔で手を振った。あからさまにホッと息を吐くサツキに、スズカはぴしゃりと言った。
「そもそも使えない後輩には興味がない」
「がーん! そんなぁ」
「バイトのお使いウサギたちの方がよっぽど使えるよ」
「はは。まぁそう言わないでくださいよ、スズカさん」
スズカの辛辣な言葉に、サツキは苦笑を漏らした。
「それにしても無事でよかったです。そういえば、タカミは……アイツら、どうなりました?」
「まったく、起きたら起きたできゃんきゃんうるさいなぁ……」
スズカはサツキを無視して軽自動車に乗り込むと、グローブボックスの中に隠しておいたもう一台のスマホを取り出し、いじり出した。
タカミの前で使用したスマホは、彼に拉致されたときに奪われたままである。あれはダミーで、スズカの情報はなにひとつ入ってないからいいのだが。
ほどなくして、液晶画面にドローンの映像が映し出された。
「おっ、もう臓器摘出始まってる」
「えぇっ!? 嘘、なに!? 誰の臓器!? え、僕生きてる?」
パニックになっているサツキを冷ややかに一瞥し、スズカはスマホに視線を戻す。
サツキはスズカの背後からスマホを覗き見た。
「うわぁ……マジか。これマジもんの臓器……うぇぇ、グロ」
サツキは眉を寄せ、スズカに抱きつきながらスマホ画面を凝視している。
「……サツキくん、苦しいってば」
「あ、ごめん」
スズカは絡みついてくるサツキをひと睨みしつつ、まだ伸びているタカミへ視線を移した。
まだ、仕事は終わっていない。
スズカはフードを被った。
「とにかく今はそいつをミカワさんとこに届けにいくよ。サツキくん、ぼさっとしてないで早く着替えて。タカミを拘束したら車に乗せて」
「了解です!」
元気よく返事をして、サツキは速やかに黒のロングパーカーに着替えた。スズカと同じデザインのものである。
続けてタカミの手足を拘束して荷台に詰め込むと、サツキは運転席に乗り込む。
シートベルトをしっかり締め、エンジンをかけながらサツキはちらりとスズカを見た。
「なに?」
サツキの視線に気付いたスズカが、スマホから顔を上げずに聞く。
「……いえ、あの……すみませんでした。僕、また役に立てなくて」
「……べつに。サツキくんにはハナから期待なんてしてないし」
「はは……そうですか……」
サツキはぽりぽりと頬をかいた。
「……でもまぁ、演技自体は上手かったよ。タカミ、全然疑ってなかったし」
スズカはスマホを操作しながら、淡々と言った。
不意に褒められたサツキは、嬉しさに頬を緩ませる。
「本当ですか!?」
スズカはちらりとサツキを見て、ため息を漏らした。
「……いや、なににやけてんのよ。演技以外はダメダメだったんだから喜ばない」
「はぁい」
サツキはにやけながら車を走らせる。
「まったく、単純ね」
「だって今日は運転するスズカさんも見られたし、デートできたし」
バカなのだろうか。スズカは呑気なサツキを殴りたくなった。スズカはスマホの画面を消し、車窓に肘をついてサツキを見た。その視線は冷凍ビームのごとく冷たい。
「へぇ……? 君、ちゃっかり擬似デート楽しんでたんだ? 随分余裕があったのねぇ? まあそうよね。君、私がカワイたちと対峙してる間、麻酔用マスク付けてぐーすか寝てたんだもんね」
恐ろしく低い声に、サツキは身震いした。車内の空気が五度くらい下がった気がする。
「……いや、あの……ハイ、すみませんでした」
サツキは内心しょんぼりとしながら、ハンドルを握り直した。二人を乗せた赤色の軽自動車は、すっかり薄闇に染まった街を滑っていく。
スズカは再びスマホをいじり出した。
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