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『3.ふたりの夜、開幕』
やさしいムッツリ野郎
しおりを挟むその後俺は、
シリウスに連れられて
劇団メテオへ戻った。
あの舞台袖で聞いた言葉、
どこまで本気なのか、
確かめたくなった。
性悪な俺は、
挑発して、嗤って、
俺に振り回されてくれるあんたに
安堵していたんだ。
そして……
プレッシャーに潰れそうな時は、
舞台裏で誘ったりもして――
本当はあんたに
堕ちるつもりなんか、
これっぽっちもなかったのにね。
**
「今となっては思い出だね。色んな意味でさ」
回想から目覚めた俺は、
やつの後ろ姿をじっと見つめる。
一番星のプレッシャーを
和らげてくれたこの男──
俺は、あんたの元で
にさらに輝いてみせる。
"あんたの"一番星としてね。
「あんたって、ほんと面白いよね、シリウス。動向探っちゃうくらい、あの時から好きだったの? 俺のこと」
シリウスは振り向くと、
ニヤリと笑いながらも、
一瞬言葉に詰まったように
喉を鳴らした。
「ん⋯⋯そうかもな」
なんだよ、急に赤面しちゃってさ。
こっちまで……
恥ずかしくなるだろ。
顔の赤らみをごまかすように
シリウスはそっぽを向いて促した。
「さあ、早く帰るぞ。あの時のお前の衣装を思い出したら、また抱きたくなったからな」
「⋯⋯っ、この、ムッツリ野郎⋯最後の一滴まで搾り取るから覚悟しとけよ」
憑き物が落ちたような顔で
佇むやつに対し、
俺は色々思い出して一人赤面する。
……まあ、あの観客たちから
ねっとりした視線を浴びるのも
悪くなかったけどね。
「⋯⋯だが、あの衣装は良かったな。次の舞台でお前に着せようか」
「あんたが望むなら何だって着てやるよ……どすけべめ」
舌を出して挑発しながら、
俺は荷物を背負い上げた。
……自分の心臓が
こんなにも強く、
脈打つなんて知らなかったよ。
さて、あのショーの後、
俺たちの関係がどう変わっていったか。
次はシリウスに語ってもらおうか!
『ふたりの夜、開幕 』おわり
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