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『7.ベツレヘムの星』
ふたりのクリスマスケーキ
しおりを挟むようやく仕上がった
ケーキを前に、
俺たちはダイニングテーブルに 向かい合って座っていた。
テーブルの上には、
小さなロウソクが灯り、
柔らかな光が部屋を包んでいる。
「……甘い。しあわせの味だ」
シリウスがケーキを一口運び、
楽しそうに微笑む。
その表情を見ただけで、
俺の心臓は大きく跳ねた。
「B-Bien sûr (そ、そりゃあな)! 俺が手を尽くしたんだから、完璧に決まってるだろ?」
照れ隠しに胸を張る俺を、
シリウスはじっと見つめた。
その星のような瞳に
捕らえられると、
胸の奥が甘く疼く。
「お前と食べるものなら何だって美味いさ」
低くて静かな声。
その声に込められた、
優しさが胸を締め付ける。
思わず視線を落とし、
手元のフォークを握りしめる俺に、
シリウスがそっと囁いた。
「ルシ…ありがとう。クリスマスがこんなにあたたかいものたなんて初めて知った⋯⋯」
その言葉に、
熱さと切なさが
俺の中でせめぎ合った。
ケーキを食べ終わる頃、
ふと窓の外に目を向けると、
静かに雪が降り始めていた。
シリウスも視線を窓に向け、
静かに息を吐いた。
「……雪か」
「うん、きれいだね。星が降ってきたみたい」
その横顔は、
ローマの彫刻みたいに美しい。
黒髪に映える月光が、
彼をさらに神秘的に彩っていた。
「ルシファー」
彼が俺の名前を呼ぶ。
いつもより甘く、やわらかく。
「なに?」
シリウスは
穏やかに笑っていた。
その瞳には、
子供の頃から変わらない
きらめく星が光っていた。
「今日、この時間をくれたこと……本当にありがとう。この年になって、クリスマスの幸せを知れるとは思わなかった」
その言葉に、
俺はぎゅっと
胸を締め付けられる。
「⋯⋯そんなに喜んでもらえたなら良かったよ」
涙が出そうなのを
堪えながら、
俺は言葉を紡いだ。
「……また来年も、楽しいクリスマスをやろう。クリスマスだけじゃなくて、誕生日も、季節の色んなイベントも」
「それは楽しみだ。お前となら、何だって楽しいからな」
子供の時みたいに、
無邪気に笑うシリウスを見て、
俺もくしゃっと笑った。
***
暖炉の炎が揺らぎ、
パチパチと薪の弾ける音が
耳をくすぐる。
俺たちは暖炉の前に座り、
クリスマスの残り香を
楽しんでいた。
やたら熱を帯びた
シリウスの視線が、
俺に注がれているのは
気のせいじゃない――
「……そんなに見ないでよ」
そっぽを向きながら言うと、
彼が低く笑う声が聞こえた。
「見るだろう。今日はお前が、特別に可愛いからな。サンタクロースに感謝だ」
思わず顔が熱くなる。
けど、返事をする間もなく、
シリウスの腕が俺を引き寄せた。
「あっ、おい、シリウス――」
あたふたと抗議する俺の口を、
やつが強引にふさぐ。
甘くやわらかい感触――
それだけで、身体が熱くなる。
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