星に溺れるカーテンコール 〜これは愛か執着か? 今宵もきみに溺れる~

うまうま

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『9.星の子たち〜子役時代〜』

天性のかがやき

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翌日――。

スポットライトが
照らす稽古場に、
星々のように散らばる
舞台道具たち。

木製の舵、さびた錨のレプリカ、そして大きな帆布――

どれもが「海」を連想させる。  


ルシファーはすでに
舞台中央に立っていた。
ピーター・パンの衣装を纏い、
幼い少年の無邪気さと
反骨心をその小さな身体に
宿している。
 
彼の瞳は宝石のように輝き、
口元にはいたずらっぽい笑みが浮かんでいた。  

「フック船長!」  

いきなりルシファーが
声を張り上げる。
オレは思わず立ち止まった。 

稽古はまだ始まっていないのに、
彼はすでにピーター・パンとなっていた。  

「お前を倒す日を楽しみにしてるよ!」  

手にした短剣を掲げ、
舞台の端にいるオレを指差した。

天使が笑うような声が
稽古場全体に響き、
まばらに集まっていた役者たちの目が彼に向けられる。  

「おいルシ。勝手に幕を開けるなよ」  

オレは肩をすくめながら歩み寄った。
胸の奥、羨ましい気持ちを燻らせながら。

――どうしてこんなにも、
一番星みたいに輝けるんだろう。
こんなにも眩しく。

「準備なんて必要ないだろ、フック!」  

ピーターはオレを見上げ、
満面の笑みを浮かべる。
その無邪気さが、
オレの中にある、
小さな苛立ちをすべて溶かしてしまうようだった。  

「……まあ、いいけどさ。オレの部下たちが来るまで、もう少し待てよ」  

オレは舞台袖にいる
他の役者たちを見た。

舞台袖では大人の役者たちが、
フックの「手下」に扮している。

屈強な身体の彼らは、
威圧感のある衣装を身にまとい、
剣やロープを手にして
稽古の準備をしていた。  

「おいおい、俺たちはいつ登場すればいいんだ?」  

副官役のアルデが声をかけてきた。


おどけながらも、
彼の低い声には威厳があり、
オレのフック船長としての
立ち振る舞いが、
試されているように感じた。  

「今からだよ。全員、舞台に上がってくれ!」  

オレが手を振ると、
彼らはぞろぞろと舞台に登場した。
一瞬にして舞台が現実となり、
ピーター・パンと海賊たちの
対立が浮かび上がる。  

「おや、子供一人が相手なのに、随分と大勢だな」  

ルシファーが剣を掲げたまま、
挑発するように
短剣を振りかざした。

「ピーター・パン!」  

オレは笑いながら彼を見つめる。ここからがオレの見せ場――
フック船長の威厳を見せる時だ。  

「このフックを挑発するとは良い度胸だ。しかしすぐに、その軽口を後悔するだろう!」  

稽古用の木製フックを掲げながら、
オレは低い声で台詞を放った。
手下たちが一斉に「おお!」と声を上げ、雰囲気を盛り上げる。

「さあ、野郎ども、この愚かな少年を捕らえろ!」  

海賊たちがルシファーに向かって突進する。 


しかし彼は素早い動きで
舞台を駆け回り、
まるで本当に空を飛んでいるかのように軽やかだ。  

「捕まるもんか!」  

ルシファーが叫びながら、
華麗に剣を振り回す。

「船長! やつが逃げていきます!」  

アルデがフックに向かって
声を上げた。

オレは焦る素振りを見せながらも、胸の奥で少し笑っていた。

「ここまでおいでよ! 弱っちい海賊ども!」

 ……お前はほんとに強いやつだよ。本当に楽しそうに演じてさ。

「逃がすな! やつを囲め!」  

オレが叫ぶと、
海賊たちが再びピーターを
追い詰める。

その時、ルシファーは突然立ち止まり、振り返った。  

「覚悟しろ、フック船長!」  

ピーターは剣を構え、
オレの目を真っ直ぐに見つめた。
その紅い瞳には
挑戦の光が宿っている。

オレ――
いやフックは気迫を込めて応えた。  

「その短剣が、このフックに勝てると思うなよ!」  

舞台の上、
ルシファーとオレの対峙は
静かに、ぴりりとした空気に包まれていた。  

「ウェンディたちを離せ!」

ピーターは紅い瞳を燃やし、
オレへ短剣を向けた。

「かかってこい、フック!」  
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