告白1秒前

@るむば√¼

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新しい友達

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「木原君.......!
    私、木原君のことが、好きなの!」
木原君は気まづそうに言った。
「篠原、俺ー」


半年前

桜咲く4月。
私、篠原ミヤと藤山詩音は大きく張り出されたクラス表の前に立っていた。
「みて!またミヤとクラス一緒!」

「あ、ほんとだ。良かった~」
今年の春から高校二年生になった私達は幼なじみ。
小中高と同じ学校に進学し、絆を深めてきた。
コミュニケーションが苦手で友達が少ない私にとっては大切な存在だ。

「でも、やっぱ知らない人ばっかだね。うちら全然他クラスと関わってなかったら。」

「そうだね。コミュニケーション取れるか心配.......」

「今年こそはミヤのコミュ障直さないとね。笑」

「コミュ障って程ではないけど...」

「それに、そろそろ彼氏欲しいし!!」

「そんな性格じゃ無理だよ。」

「おい!コミュ障のお前が言うな!笑」

「コミュ障じゃないって言ってるでしょ!」

「まあ、ミヤも頑張んなよ。高校生活は少ないんだから。すぐ終わっちゃうよ?」

「そうだね。コミュ障を直すところから始めないと!」

「何年かかるのよ笑」

「うるさい」

こんな感じのいつもの無駄話をしながら私達は2Dの教室に向かった。
教室には顔見知りもいれば見たことない人もいたり。
なんだか緊張してきた。
ほんとに新生活が始まるんだな。
彼氏できちゃうかもな笑
そんなことを考えながらミヤは自分の席に座った。
すると、見たことない隣の席の男子が話しかけてきた。

「なあなあ、俺佐久間 優一 って言うねんけど、もし良かったら友達になってくれへん?」



ミヤは突然のことだったので上手く対応ができなかった。

「あ、あ、えっと、はい。いいですよ。」

「名前なんていうん?」

「えっと、し、篠原ミヤです。」

「へぇー。篠原っていうねんな。
よろしくな!」

「あ、よろしくね。」

わわわ。ヤバい。めっちゃキョドっちゃった。
絶対印象良くない。最悪だ。
ミヤがへこんでいることに気付かず、佐久間君は話を続ける。

「俺な、高一の時に大阪からこっち来たんやけどあんま友達出来んくてさ。友達出来て良かったわ!」

「あ、いや、私なんて」

「私なんてなんて言ったらアカンで。篠原さん普通に可愛いやん」

「え、え?え?え、あ、いや可愛いくなんてないよ!」

男の子に可愛いなんて言われたのはじめてだ。
お世辞だと分かっていても嬉しい。

「まあ、ようは自分に自信もちやってことやよ。」

「うん。ありがとうね」

やっぱりコミュ障については早く手を打っておくべきだった。
まさか男の子とこんなに長く会話をすることになるなんて。
こんなんじゃ彼氏は100年先も無理だ。
本当に自分のコミュニケーション力の無さには毎回呆れてしまう。
詩音みたいに話し上手になれたらな。
詩音の方を見やると、もうすでに女子が何人か集まっていて楽しそうに話してる。
やっぱりすごいなぁ。
女子って本来どんな事を話すんだ?メイクとか、ファッションのこととか、あと恋バナもするのかな。
好きな人もいない私にとっては恋バナなんて夢のまた夢だけど。
そうだ。彼氏を作りたいっていう気持ちだけじゃダメなんだ。
まず大前提としてみんな好きな人がいるのか。
でもコミュ障だしな。やばい。
やっぱり彼氏は私には無理か...

そんな永遠に続きそうなミヤの自虐ネガティブ発想は先生が教室に入ってきたことで断ち切られた。

「皆さん、進級おめでとうございます。私は担任の山下です。このクラスには将来のことを見据え、一生懸命努力し、明るく、幸せな学校生活を送ってもらいたいと思っています。なので、私は君たちのことをこの1年間、全力でサポートします。1年間よろしくお願いします。
さて、早速ですか、自己紹介をしていきたいと思います。
名前、趣味、好きな物、部活
を言ってください。
じゃあ、出席番号1番からできるかな?」

淡々と山下先生が私達を仕切っていく。
この様子だとすぐに私の番がきそうだ。
何を言おう.....
篠原ミヤです...趣味はお菓子作り...好きなものは徳島浩史の小説...あ、でもな。みんな知らないよな。変な子に思われるかも。
どうしよう。適当に言っておこうかな。

すると、佐久間くんがまた話しかけてきた。

「好きなものって難しいよな。篠原さんはなんて言うん?」

「え!うーん一応徳島浩史の小説が好きなんだけど...」

「徳島浩史?知らんなー」

「そうだよね。変な子に思われるかな?」

「いやいや!自分の好きなものなんやから胸張って堂々と言った方がええで!」

「あ、ありがとう!」

私に出来るだろうか。本当は胸を張って、徳島浩史の小説が好きだっ!って言いたい。でも.......

「では、次は藤山さん。」

詩音の番がきた。
詩音は明るく話し始める。

「藤山詩音です!趣味はダンス、好きなものは、ジャニーズの〇〇君です!部活は吹奏楽部に所属しています!1年間よろしくお願いしまーす!!」

詩音に拍手が送られる。
さすが詩音だ。
なんでも明るく話すし、性格は良いし、可愛いし、完璧だ。
きっとすぐ彼氏なんて出来るだろう。私も詩音みたいになれたらな。徳島浩史の小説が好きだと言えたら少しは詩音に近づけるだろうか。

「では次、佐久間くんどうぞ。」

「はーい!ほな、行ってくるな!」

「あ、うん。頑張ってね」

佐久間くんは私にそう言い、元気に教卓の前に向かっていった。
教卓の前に立って、佐久間くんは私を一瞬みてから口を開いた。

「佐久間優一です。趣味はサッカー、好きなものはお笑いです。
サッカー部に入ってます。
よろしくお願いします。」

佐久間くんはニコニコしながら席に向かってきた。

「なんで関西弁で話さなかったの?」

「あー、関西の人って知られると距離置かれるかな思て。」

「いやいや!佐久間くんは優しいし、すごい良い人だよ!だから自分を隠さないで。」

「ありがとう!そうやよな!自分が生きづらくなるだけやし。もう隠さんわ。」

「うん!」

初めて自分から話しかけた。
でも、ちゃんと自分の気持ち伝えられて良かった。自分の気持ちを伝えられるってこんなに嬉しいんだ。だったら、徳島浩史の小説が好きだってみんなに伝えられたらもっと嬉しいんじゃ.......

「次、篠原さんね」

ついに私の番がきた。
一気に心拍数が上がる。
手が震えてきた。
私があんまり不安そうな顔をしていたのか佐久間くんが話しかけてきてくれた。

「大丈夫か?篠原さんなりに頑張りや!」

その言葉を聞いて気が楽になった。

「ありがとう!頑張る!」

「おう!」

まだドキドキしてる。
でもきっと大丈夫だ。
ミヤは勇気を振り絞り教卓の前に向かった。
教卓の前に立ち、息を吸う。
私も佐久間くんのほうを一瞬みた。
そうしたら、佐久間くんがニコッと笑ってくれた。
ミヤはその顔を見てから話し始めた。

「篠原ミヤです。趣味はお菓子作り、好きなものは徳島浩史の小説です。部活には入っていません。
1年間よろしくお願いします。」

 ミヤはぺこっと頭を下げた。
ミヤに拍手が送られる。
しっかり自己紹介出来たのだ。
一気に緊張が解け、顔が緩む。
席に戻ると佐久間くんが褒めてきてくれた。

「篠原さんすごいやん!堂々と出来てて立派やったで!」

「いやいや、佐久間くんの方がすごいよ。」

「俺は自分のこと誤魔化して最低や。足元にも及ばへんよ。」

「でも、成功できたのは佐久間くんがアドバイスしてくれたからだよ!ほんとありがとう」

「そんなお礼言われたら俺照れてまうで!!」

無事全員の自己紹介が終わり、休み時間になった。
私はトイレに行こうと思い立ち上がった。
すると、見たことない男子が話しかけてきた。

「篠原さん、だよね?徳島浩史の小説好きなの?」

「え、あ、うん!す、好きだよ。」またしても突然のことすぎて上手く対応出来なかった。

「そうなんだ!俺もめっちゃ好きでさ!俺、木原流星。よろしくな!」

「うん、こちらこそよろしく」

木原流星くんか。普通にイケメンだな。
私には一生手に入らない宝って感じ。
きっとモテるんだろうな。
ちょっとでも話したら女子の嫉妬とかヤバそう。
あんまり関わらないでおこう。

「ミヤ!あんたどうしたのよ!あんなに堂々と自己紹介しちゃって!まるでミヤじゃないみたいだった!」

「うん。佐久間くんが色々アドバイスくれてね。」

「へぇ。佐久間くんか。優しそうだもんね。」

「うん」

「今の所彼氏候補?!」

「ばかっ!違うよ!」

「まあ、良かったじゃん!友達出来たんだし。」

「うん。なんとかやってけそう。」

それから今日は半日授業だったので詩音と帰った。
新しく友達も出来たし、私にしては自己紹介もだいぶ頑張った。
自分で言うが、今日の私は上出来だ。
明日からもっと頑張ろう。


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