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一話 第二王子side

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今日はあの子がやって来る。そう思うと緊張した。
落ち着くためにもあの子が来るまで本を読もう。

「おい、アダム。ミレクシアがお前を待ってる。…何、本なんか読んでるんだ。」
三歳上の兄さんがやって来た。慌てて時計を見るとあの子が来る予定の時間から三十分も経っていた。
本に栞を挟んで立ちあがると、不満そうな様子の兄さんが俺の手を引いた。
「早く行くぞ。」
「う、うん、ごめん。」
「謝るならミレクシアに、だろ。いいよな、お前は婚約者だから。」
…兄さんはあの子が好きらしい。でもあの子は俺の婚約者だ。だから…あの子は俺の物。
宝石みたいに綺麗なあの子。本に夢中になっていた俺をずっと待っていてくれた。
「ミレクシア、アダムを連れてきたぞ!」
「引っ張らないでよ、兄さん。」
あの子だ。俺の方を見て微笑んだ。
「ごめんなさい、アダム王子。待っていても来ないからどうしたのかなって聞いたら、親切なアレン王子が呼びに行ってくれたんだ。読書の邪魔しちゃった?」
どうして俺が本を読んでいて遅れたって分かるんだろう。あの子はとっても綺麗で不思議だ。そして優しい。
俺が悪いのに悲しそうな顔で読書の邪魔をしたと思っている。
「あ、いや、別に大丈夫。俺の方こそ忘れててごめん。」
もう時間を忘れて読書なんてしないようにしなければ。あの子を待たせるなんて本当はいけないことだ。
「さあミレクシア!歌とピアノだ!」
「アダム王子、本持ってきていいから一緒に行こう?」
「う、うん。」
こうやって俺のことを気遣ってくれる。優しい俺の婚約者ミレクシア

急いで大広間に行くと俺を待っていてくれたようであの子が歌いだす。
そっと本を開いて読書の続きをする。あの子を歌を聞いていると読書も捗る。
ちらりとあの子の方を見れば、あの子は目を閉じて気持ちよさそうに歌っていた。見ずにピアノが弾けるなんてすごい。
「ミレクシア、素晴らしい歌と演奏だった!なあ次は森と狩人の歌がいい!」
兄さんのリクエストに応えてあの子が歌う。綺麗な綺麗な歌声だった。
「凄い!流石ミレクシアだ、俺はこんなに綺麗な歌声の人は知らないよ!」
ああ、折角歌の余韻を楽しんでいたのに兄さんはうるさい。思わず眉間にしわが寄った。
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