他力で開拓!?〜気がつけばそこは自分の国だった〜

久耀

文字の大きさ
8 / 21
始まりの森

第8話

しおりを挟む

白い朝靄あさもやがまだ森の中に立ち込めている中、洞窟の拠点で目が覚めた。

「ん~…あぁ…神様のせいでなんか寝た気がしないな…」

「でもお陰で気になることも沢山わかったな…全部夢だったかもしれないから軽い気持ちで捉えておこう…」

とはいえ夢だったとしても、薬草は良いこと聞いたな。早速ゴーレム連れて集めに行ってみるか。


出発前に作業ゴーレムの追加と、機動力を高くした狼型のゴーレムを2体作った。狼型ゴーレムは探索に連れて行って試してみよう。



というわけで薬草を探しに行く為、狼型ゴーレム2体と神様のアドバイス通りに改良した小鳥型ゴーレムを3体、護衛用ゴーレムを2体と運搬用ゴーレムを1体だけ連れて出発した。

狼型ゴーレムには前線で警戒、小鳥型ゴーレムには周囲を飛び回ってもらい、警戒と薬草の探知をしてもらっている。あとは護衛と運搬なので言わずもがなだが、今までのゴーレム全てを、知能特化型のゴーレムと感覚を共有させているので、逐一ちくいち命令せずとも自立した行動をとってくれている。

「初めて森に入った頃に比べると凄く楽に探索できるようになったな…。」


そして森の深部、まだ足を運んでいないエリアへ進んでいくと、そこには探し求めていた薬草の群生地があった。
この周囲だけ薄らと明るく、神聖な雰囲気さえただよっている。

が、この辺りを縄張りにしているであろう狼達が周りを包囲していた。しかし小鳥型ゴーレムによる警戒と映像で予め察知していたので、更にその外側から狼型のゴーレムを配置していた。そして一点集中で先手を取らせ、そこに駆け込み、ゴーレム達と包囲網を抜けた。小鳥型のゴーレム達も援護をしてくれ、護衛用ゴーレム達と共に殲滅していく。



そして残すところあと数匹となった頃、1匹の小鳥型ゴーレムから巨大な狼がこちらに向かっている映像が届いたかと思うと、突然小鳥型ゴーレムからの映像が途絶えた。おそらく襲われたんだろう。


そうこうしている内に着いたようだ…木々の間から、バキバキとなぎ倒しながら、悠然と現れた。

「なんて大きさの狼だ…これはさすがにやられるかもしれない…。」

人間を軽くひと飲みにできそうなほどの大きさを持ったその狼は、きっとこの森の主なのであろう。今まで今にも飛びかかってきそうだった狼達が、ボスの指示を待つかのようにすっかり大人しくなっている。

主はこちらを睨み、警戒している。まずは主の周りにいる狼達から倒さないと邪魔をされそうだ。
小鳥型ゴーレムに気を引いてもらい、周囲の狼をこちらの狼型ゴーレムに任せ、主と対峙する。


ジリジリと続く睨み合いの中、パキッと足元で小枝が折れる音がした。その刹那、それがまるで合図かのように、隙を突いて主が飛びかかってきた。

護衛のゴーレムの1体が前に出ている間に、もう1体と共に横に避け、木を盾にしながら弓を射る。前に出た護衛ゴーレムが丸呑みにされてしまったが、それに気を取られたであろう主の前足に矢が深く刺さった。おそらくこれで機動力が削がれたはずだ。その為の犠牲が大きいが…。

しかし気にも止めないような勢いで何度も飛びかかってくる主を、回避し続けている間に、気づかれぬように仕込んでいた運搬ゴーレムの準備が整ったようだ。
主は足の怪我もあるが、口からの血を見るに、どうやら胃袋で丸呑みにしたゴーレムが攻撃しているようで、体力がどんどん消耗されているみたいだ。そろそろ主の限界も近いはずだ。

そう思っていた矢先、主は最後の力を振り絞ったのか、今までにない速さで飛びかかってきた。
先ほどまでと同じように回避をするが、飛びかかったその先に運搬ゴーレムに用意させた大きな丸太で作った杭があり、主の喉元へ深く突き刺さった。短時間であった用意した杭だが、その先端は「返し」がついていて、そう簡単には抜くことはできない。
苦しそうな声をあげる主だが、暴れるせいでどんどん肉が抉られ、しばらくしてその悲鳴も途絶えた。


「ふぅ…何度か死にかけたけど何とかなった…本当に危なかった…。」

主の死体を杭から抜き、体内から飲まれてしまったゴーレムを救い出す。護衛も小鳥もどちらも無事なようだ。

しかしこれほどの巨体、そのままにしておくのは勿体ないので、処理をして運搬ゴーレムに運ばせることにする。

「よし、こんなもんで良いかな…。」

忘れずに薬草も採取し、いくつかは根元から採取し、栽培できるかも試してみることにする。主を担がせているせいで採取できる量は格段に少なくなってしまったが、場所も分かり、縄張りにしている狼達を倒したので、ゴーレム達に来させよう。

こちらへ向かっている頃には予想してなかった疲労を感じながら帰路についた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

処理中です...