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プロローグ 煉獄悲哀遊戯

第7話 悲嘆の雨に濡れるより、虚空の乾きが、この身を止める

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聖と海に行ってから数日後、
僕は、連れ帰った女の子を殺す為に試行錯誤していた。

まずは、凍結中の女の子に
高濃度の放射線を浴びせ、
細胞を破壊しようとしたが、
彼女の細胞は尋常じゃないスピードで再生し
無駄だった。

仕方ないので、
女の子を檻から出して
火炙りにしたり、
体をバラバラにしたり、
電流を流したり、
窒息させたりしたが、
全て無駄だった。

さらに、厄介なのは...

「やあ、調子はどうだい?
良いだろうな...」

僕は、異空間倉庫内に監禁している女の子に話しかけた。

「うん、調子良いよ~」

女の子は元気にそう応えて

「ねえ、今日はどうやって
私を愛してくれるの?」

と僕に抱きついて聞いてきた。

どうやら、あの男は女の子に
暴行を働き、それが愛だと洗脳したようで
女の子は、色々な方法で殺そうとする
僕に愛されていると思い込んでいる。

「なんども言うが
僕は、君を殺そうとしているんだ
愛している訳じゃない」

「も~う
照れちゃって!」

「だから、そうじゃない
君は、あの男に洗脳されて
そう思い込まされていただけなんだ
こんなのは愛じゃない」

そう言って、
僕は、女の子の右腕を青龍刀で切り裂いた。
すると、女の子は喜んで
僕に笑いかけた。

「私、あんまり難しい事はわからないけど
貴方は、こうして私を愛してくれてるじゃない
心では、わかっているの
貴方は、いつも私を構ってくれる
それは、愛でしょう?」

女の子は、屈託の無い笑みを浮かべ
そう言った。

ダメだ。
会話が通じない
そもそもこの子には、
発達障害の気さえある。
どうしても、理解して貰えない。

どうするか...
教えても聞かないし...

ん?
そうだ、良い事を思いついた。

僕も、こいつを洗脳して
理解させよう。
学習装置を作れば良い。
教えるのは、一般常識と僕の知識で良いな。

僕は、そう思いつくと
電気椅子の様な見た目の
機械を生成し
女の子をそこに座らせた。

「な~にこれ
どうするの?
なんでも良いか!
これは、私への気持ちなんだから!」

女の子は、そう言って僕に笑いかける。

こんなに純心な子どもを
変えてしまうのは果たして良い事なのだろうか...

まあ、良いか
僕の知ったことじゃない。

僕は、装置を起動した。

女の子は、雷に打たれた様な感じで
一瞬、眼を閉じて
眼を開けると
こちらを見つめた。

「どうだ、変わりないか?」

僕が、そう聞くと

「そうね
あんまり変わって無いかも
あれ?
ちょっと待って...
なにこれ...
ああ、
ああああああああああああッ!」

女の子は、少し考え込んだ後
発狂した。

「どうした!?」

僕が、驚いて尋ねると

「なに...これ...
私、こんな...
ストックホルム症候群?
あああああああああッ!
殺して!
ねえ、私を殺して!」

バンッ!

僕は、拳銃を取り出して
女の子の頭を撃ち抜いた。

「あああああああッ!
痛い!
痛いよ!」

バンッ!

僕は、女の子の頭を撃ち抜いた。

「あああああああッ!」

バンッ!

僕は、女の子の頭を撃ち抜いた。

「待って、やめて
もう、落ち着いたわ」

バンッ!

僕は、女の子の頭を撃ち抜いた。
あっ、
間違えた。

「やめてって言ったのに!」

「ごめん、ごめん
それで、調子はどうだい?」

「最悪よ
私、生前あの男に攫われて
うさぎ用の檻に閉じ込められていたの
それで、実験台にされて...」

女の子は、悲しそうにそう言ったが、
僕は、それを無視して

「そう言えば、
君のあの体は、どうしたら変身するんだい?
僕が、殺そうとしていた時も
何度か変身したよな?」

「ああ、あれは
大量にオキシトシンが分泌されると
発動するの
聡は、これで人類のガン以外の病気は
撲滅するとか言ってたわ」

「それは、凄いな!」

僕が、喜んでそう言うと

「ねえ、なんで
そんな風に私に対して接する事が出来るの?
私は、誘拐されて体を改造されたのよ?
少しは、慰めてよ!」

女の子は、僕に対してそう怒ると

「君には、僕の知識を入れたから
わかるはずだ
感情は全てホルモンの分泌によるものだ
君が、どんなに辛かろうと
悲しかろうと
永遠に怒ったり、泣いたりする事は出来ない」

僕が、淡々とそう言うと

「ええ、そうね
わかってるわ」

女の子は、悲しそうにそう言った。
こいつ大分雰囲気変わったな。
生前にこれが出来れば、どんなに良かったか
僕は、そう考えながら彼女に

「それで、君はこれからどうする?
どこかに解き放てば良いか?」

「ちょっと嘘でしょ!?
私をほっぽり出す気!?」

「だって、君はほっといても
死なないだろ
勝手に天国に行ってくれ」

「嫌よ
天国に行って
一人でどうやって幸福になれば良いの?
私は、これから先
永遠の孤独を幸福な人達に囲まれながら暮らすの?
そんなの、ただの地獄じゃない!」

女の子が、そう言うと
こいつ、僕に少し似てきたな
いや、気のせいか
と思いつつ

「なら、一生氷漬けになるか?」

「そうね、その方が楽かもしれない...」

女の子は、心底悲しそうにそう言った。

「よし、わかった」

僕が、そう言って
彼女を閉じ込めていた檻と
液体窒素が入ったタンクを取り出すと

「待って!?
もう!?」

「だって、ずっと
ここで絶望していた方が辛いだろう?」

僕が、そう言うと

天帝シャンティー
ダメですよ!
慰めてあげてください
可哀想だと思わないんですか!?」

智慧ジュウホエが慌てて
僕を止めた。

慰めてあげてって言われて
無理やり慰められる方がよっぽど
惨めで可愛そうだ。

天帝シャンティー!」

わかったよ、
もう、うるさいな

「じゃあ、
僕の家に来て
映画でも見るか?
少し、気分を変えてから
これからを考えよう」

僕が、そう言うと

「ヒーロー物はある?」

と聞いてきた。
やっぱり、僕に似たな...
今度やる時は、一般常識だけにしよう。

僕が、そう考えながら
たくさんあるぞ
と女の子に言うと
女の子は、喜んでついてきた。

僕は、女の子を
屋敷のシアタールームに連れてきて
映画を見た。

一緒に映画を見ていると
女の子が何故か
僕の膝に座ってきて
うっとおしかったが、
ちょうど良いサイズの
ポップコーンホルダーになったので
そのまま座らせておいた。

映画は
改造されて不死身になったヒーローが
活躍するものだった。
正直、女の子に見せて良いものではないが
僕が、見たかったのでしょうがない。

一作目を見せると
女の子が続きを見たい!
と言ったので
二作目を見た。

すると、
最初は喜んでいた女の子だったが
ヒロインがヒーローの目の前で
殺される所を見て号泣した。
うるさい。
まだ、始まったばっかりだぞ
あまりに泣き止まないので
僕は、映画を止めた。
おかしいな結構コメディー要素強いのに

「一人ぼっちになっちゃった
私と同じだ...
あああぁーんっ!」

ああ、なるほど
共感したのか
まあ、ほっといたら
収まるだろ
続き見よっと

天帝シャンティー
何しに連れてきたんですか!」

こいつミュートに出来ないのか?

天帝シャンティー!」

わかった、わかった

僕は、慰め方が
よくわからなかったので
とりあえず、毛布を出して
女の子の肩に掛けると
ホットミルクを手渡して
頭を撫でた。

「ぐすん
なにそれ?
慰めてるの?」

 「ああ、そうだよ
早く泣き止んでくれ」

天帝シャンティー
いい加減
道徳を学んでください!」

うるせえ!
人外が道徳を語るな!

天帝シャンティー!」

なんで、こいつに
主導権を持っていかれるんだ?
ロボット三原則はどこに行ったんだ?

「もう!
良いから早く慰めてください!」

わかったよ、もう

「それで、どうして欲しいんだ?」

僕が、ぶっきらぼうにそう聞くと

女の子は、少し照れながら

「じゃあ、少しこうさせて...」

と言って僕に抱きついて
頭を埋めた。

体温無いから、
意味無いだろ
それ...

僕は、そう思いながら
彼女の頭を暫く撫でていた。

落ち着くと
女の子は

「ねえ、私ずっと
ここにいても良い?」

と聞いてきた。

断って良いか?

「ダメに決まってるじゃないですか!」

はいはい...

「ああ、良いぞ
君が、それで安らげるなら」

僕が、そう言うと
女の子は、変身して
僕にキスをした。

うっわキモ
顔恐ッ!

「流石にこのビジュアルは
普通の人でも...
いえ、耐えてください!」

マジか!
なんか食われそうなんだけど!?

「大丈夫ですよ
女の子ですよ?」

僕らが、そう話していると

「私、貴方が好きになっちゃった
だから、ねえ良いでしょ?」

そう言って
女の子は、僕の下半身に手を伸ばす。

ほらな
食われそうだ
見たか
僕が、正しい!

「...
きっと、今まで色々あったんですよ」

智慧ジュウホエは、遠い目で彼女を擁護する。
僕の良心もお手上げのようだ。

僕は、女の子が
下半身の違和感に戸惑っている所に

「この体は、
機械だから、探してる物はない
良いか、
そんな事を事をして
取り入らなくても
ここに置いてやる
だから、自分を安売りするな!」

僕が、そう言うと
女の子は再び泣き出して

「違う
違うよ!
私は、優しくして貰えたから
貴方が、私に尽くしてくれたから
それで、
それで...」

「そんな簡単な事で
人を好きになるな
犬か何か?
君に優しくしてくれる人は
僕だけじゃ無いぞ?」

僕が、そう言うと

「確かに、貴方だけじゃ無かった
聡も、色々されたけど
優しくしてくれた
でも!
それだけ
私に優しくしてくれるのは
この世界でたった二人だけなの!」

彼女が、僕にしがみつく様にして
そう言うと

「君の両親は?」

「両親は、私に優しさをくれなかった
私を、実験動物としか見てなかった!
私のお母さんは、
子供の心理学者で
お父さんは
人類進化学者だった
二人とも、私にくれるのは
機械の様に冷たい
成長経過報告だけ
愛している素振りなんて
一度も見せてはくれなかった!
だから、
優しくしてくれた
聡を好きになったの
だから、
痛くて苦しい実験にも耐えれたの!
彼が、私を愛してくれたから!
でも、
その聡は、貴方が殺した!
私から、一方的に愛を奪ったなら
私に愛を返す義務が
貴方にはあるわ
だから、お願い
何を、しても良いから
何でも言う事を聞くから
私を...
愛して...」

ダムが決壊した様に
気持ちを吐き出して
女の子は僕に縋った。

僕は、それを聞いて

「わかった
君を愛そう
でも、それは
家族としてだ
僕は、君にそうする事でしか
愛を与えられない
だから、わかってくれ
君は、性的な愛情を
突発的な優しさの対価にするが
それは、間違いだ
愛とは、対価を求めずに
対象を幸福にするという誓いだ
君が今まで求めていた物は、
虚しい人生を埋める為に湧き上がった
自己顕示欲を満たす何者かと
君を哀れんでくれる誰かだ
どちらも、愛じゃない
それは、ただの傲慢な義務の押し付けだ
そのままでは、
君は誰からも愛されない」

僕が、そう言うと

「じゃあ、何故
貴方は家族として私を愛すると言ってくれたの?」

彼女が、悲しそうにそう言うと

「それは、僕が
君と似ているからだ
僕も生前
誰かの優しさが欲しかった
だから、年長者として
君を愛する義務がある
ヒンドゥー教の教えの様に
家も無く
飢えて彷徨う誰かは
助けなくちゃいけないんだ
それが、僕が求めた
正しい人間だから」

それを聞くと
女の子は、泣くのをやめて
僕の眼を見つめ

「わかった
私は、家族として
貴方の愛を貰う
だから、
いつか私がその愛を
真に理解する日まで
私は、貴方の愛で
この渇いた心を潤すわ
それが、愛されると言う事でしょう?」

女の子は、微笑んで
明るくそう言った。

天帝シャンティー
感動しました
私は、信じていましたよ!」

智慧ジュウホエがそう言うと

「じゃあ、これで
君は、今日から僕の家族だな」

「うん!
よろしくね!」

「ああ、よろしく
これからは、僕の事は
お兄様と呼んでくれ」

僕が、そう言うと
女の子は、明るい笑顔で

「じゃあ、
私の事は咲って呼んでね?
お兄様!」

と言った。
おお、これやっぱり良い!

天帝シャンティー...?」

「じゃあ、
次は、この服を着てみてくれ」

そう言って
僕は、咲のサイズのメイド服を作った。

咲は、僕の目の前で着替えて
少し、恥じらいながら

「ど、どう?
似合ってる...?」

「ああ!
最高だよ!
じゃあ、今度はお兄様とお風呂に入ろうか」

「うん!
背中流してあげるね
お兄様!」

おおおおお!
僕は、咲きをお姫様抱っこして
浴場に走った。

天帝シャンティー!」

智慧ジュウホエが、怒るが
気にしない。

浴場について
中に入ると
急いで、服を脱ぎ
咲の服を脱がせた。

「もう
お兄様
一人で脱げるよ~」

咲は、照れながらそう言った。
おおおおお!良い!

僕が、浴室に入ろうと
ドアを開けると

「ふん、ふん、ふ~ん
あら?
旦那様~
一緒に入りたくなっちゃったんですか?
も~う
しょうがないですね~...」

先に、風呂場にいた
聖と目が合って
僕は、汗が止まらなくなった。

「旦那様
その子は?」

聖が、ゴミを見るような目で僕を見て
そう言った。
すると、咲が

「初めまして
樋口 咲です!
今日から、お兄様の家族になりました!」
と明るく言うと

「そうなの~
咲ちゃん
私は、森 聖
旦那様の妻よ~
よろしくね」

と聖が優しく言った。

「うん
お姉様も一緒に入ろう!」

咲がそう言うと

「ええ、
一緒に入りましょう!」

と聖が優しく言った。

...助かったのか?

「いや~
二人が仲良くしてくれて
嬉しいよ~」

僕がそう言って浴室に入り
暫く団欒しながら入浴を済ませた後、
聖が咲を着替えさせて
部屋に案内し

「咲ちゃん
ちょっと待っててね~」

「は~い!」

と咲を部屋に置いてくると

「旦那様、
わかってますよね?」

聖が、優しく微笑んで言った。
可愛い。
顔がニヤつくを通り越して
膝が笑ってる。

「はい...」

僕が、そう言うと
聖が髪を伸ばし
僕を縛り上げると
そのまま浴場まで運び

「何を考えてるんですか?
私に何の相談も無く
子供をさらって来るなんて!」

聖が、そう言うと
僕を逆さ吊りにして
頭だけ浴槽に沈めた。

ごぼぼぼぼぼぼぼぼ

暫くすると
引き上げられて

「待ってくれ
これには深い理由が!」

「どんな理由があったら
正当に子供を誘拐出来るんですか!」

「攫ったんじゃない
僕が、保護者を殺したから
一人残ったあの子を引き取ったんだ」

「そんな戯言には付き合えませんよ!」

聖は、再び僕を沈めた。

ごばばばばばば

くそう、
僕が入っていなきゃ
この残り湯を大量に飲むのも
やぶさかじゃ無いのに

そんな事を思いつつ
僕は、聖の気が済むまで
永遠と拷問された。

聖が落ち着いた後
ちゃんと説明したら
メイド服とお風呂の件以外は
許してくれた。
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