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第1章 辺獄妄執譚

第57話 愛の翼

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アキレウスが、ピキニ・カイカイへと叫ぶとピキニ・カイカイは、空中で体勢を立て直し拳銃でアキレウスの足を撃った。

だが、アキレウスはそれを槍で弾き銃弾を落とすと、凄まじい速さでピキニ・カイカイに近づき、ピキニ・カイカイの腹を槍で突いた。

ピキニ・カイカイは、それを避けようとシェイプシフターで作った翼を羽ばたかせるが、アキレウスのあまりの速さに避けきれず右上部の翼を落とされる。

「うわ!」

ピキニ・カイカイがバランスを崩すと、アキレウスは高速で背後に周りピキニ・カイカイの背中に向かって思い切り槍を投げた。

「貰ったァァァッ!」

アキレウスの槍をピキニ・カイカイは咄嗟に左上部のシェイプシフターを触手に変えて防ごうとしたが、槍の威力に負けシェイプシフターを貫いた槍が少しそれてピキニ・カイカイの右肩に突き刺さった。

「ぐあああッ!」

ピキニ・カイカイは、急いで着陸してアキレウスの方を向き、左手に拳銃を持ち替えてアキレウスを撃ったが、アキレウスは銃弾を弾いて傷一つ付かなかった。

六体のシェイプシフターを落とされたピキニ・カイカイは、アキレウスから後ずさりながらシェイプシフターを二つとも触手に変えてアキレウスを攻撃した。

アキレウスは、シェイプシフターを切り落とそうと、槍を振るったがピキニ・カイカイは、シェイプシフターで影になり見えない様にアキレウスへ向けて能力で生成した球状のカプセルをアキレウスへ投げつけた。

アキレウスは、触手を捌きつつそのカプセルを銃弾と同じ様に槍で切り裂いた。

カプセルは、アキレウスの顔の近くまで飛んだ所を切られ、その衝撃で中身が吹き出した。カプセルの中身の液体はアキレウスの顔全体にかかり、アキレウスは液体が顔にかかると悶絶した。

「うあああああああああああッ!
なんだこれッ!ヒュドラの毒か?クソがッ!」

アキレウスは、そう言いながら絶叫し、顔を抑えて踞るとピキニ・カイカイはそんなアキレウスの様を見て笑いながら

「はははははっ!
お前らは、皆この方法に引っかかるな
原始人どもめ!」

と愉快そうに笑いながら言うと、アキレウスの頭に銃弾を撃ち込んだ。

「あああああッ!
ああああ、ああああああああああッ!
ちくしょうッ!
てめえッ!ふざけんなッ!」

と、アキレウスが痛みに悶えながら叫ぶと、ピキニ・カイカイは、

「流石は、神話に名高きアキレウスこれじゃ倒せんか。だが、貴様の弱点など私の時代の人間はアホなグラスホッパー以外は全員知ってるぞ!」

と、言うと腰に挿していた短剣を抜いてアキレウスに近づいた。

近くでそれを見ていたペンテシレイアは、アキレウスの苦しむ様を見て

「アキレウスっ!
貴様ッ!やめろッ!」

と叫び、背中に背負った弓を取ってピキニ・カイカイに矢を射った。

だが、ピキニ・カイカイはそれをシェイプシフターの触手で防ぎ、

「咲、その邪魔者を片付けてくれ」

と頼むと、咲は

「わかった!任せて~」

と、ペンテシレイアに棍棒を振りかざして襲いかかった。

ペンテシレイアは、咲が近づくと矢を数本咲へと射った後に、弓を捨て腰につけた戦斧を取った。

咲は、矢を軽く躱しながら勢い良くペンテシレイアに向かって跳んでペンテシレイアの頭に棍棒を叩きつけようとした。

だが、ペンテシレイアは棍棒を頭突きで弾き、その衝撃で後方に飛んだ咲を追って跳び、咲の首を掴むと地面に叩きつけた。

「がはッ!」

咲は、地面に叩きつけられるとペンテシレイアに向かって吐血の代わりに強酸を吐いてペンテシレイアの腕にかけた。

「うあああああッ!
クソッ!腕がァッ!」

ペンテシレイアの腕は強酸に触れると、ガントレットのついていない上腕部を溶かし、骨を剥き出しにさせた。

すると、咲はペンテシレイアの腕を押しのけてペンテシレイアをひっくり返し、腹を踏みつけると彼女の腹を幾度も踏みつけた。

「がはッ!
ああああああああッ!」

ペンテシレイアが、吐血すると咲は彼女の横腹を蹴りひっくり返してうつ伏せにすると、馬乗りになって、彼女の髪を左手で掴み右手から鋭い爪を伸ばして彼女の首に突き刺した。

「あがあああああッ!」

ペンテシレイアは、苦しみながらアキレウスの方を見て

「ああ……アキレウス……
今、助けるから……」

と、呟くと突如アキレウスとペンテシレイアの背中から大量の黄金の粒子が噴き出し、天使の翼の形になった。

翼が出てきた衝撃で咲はペンテシレイアの背中から吹き飛び、ペンテシレイアは立ち上がると、アキレウスの方を見て

「アキレウス!
こんな奴らに負けていられないわ
一緒に地獄の主の作る理想郷で暮らすって言ったでしょう?さあ、立って!」

と、言うとアキレウスは、翼をはためかせピキニ・カイカイを吹き飛ばすと立ち上がり

「ああ、そうだな
一緒に行こう俺達が二度と嘆く事の無い理想郷へ」

と、言い二人顔を見合わせて

「彼女を」 「彼を」

「「癒せッ!大天使の翼ラファエル・ウィング!」」

二人がそう叫ぶと、二人の体を黄金の粒子が包み込み受けた傷を治した。

完全に回復した二人は、それぞれの敵を追い槍と戦斧を持って襲いかかった。

聖遺物の加護で全身の身体能力が強化された二人は、アキレウスは高速でピキニ・カイカイの首を掴み持ち上げ、ペンテシレイアは咲の頭を戦斧で叩き潰した。

アキレウスは、ピキニ・カイカイの首を掴むと地面に叩きつけ、馬乗りになってピキニ・カイカイの顔を殴りつけた。

「形勢逆転だな
こうなったらもう、お前に勝ち目は無いぞ!」

アキレウスが、そう言いながらピキニ・カイカイの顔を殴り続けると、ピキニ・カイカイは

「それは、どうかな?
押し潰せッ!シェイプシフター!」

ピキニ・カイカイは、アキレウスに殴られながら今までにアキレウスに切られたシェイプシフターを密かに集めアキレウスの体を覆うように背後から近づけていた。

アキレウスは、驚いて避けようとしたが、ピキニ・カイカイが殴りつけられた腕を掴んで離さなかった為に逃げられずにいた。

シェイプシフターが、アキレウスの体を覆いピキニ・カイカイが、アキレウスの腕を離すとシェイプシフターが徐々に縮んでいった。

「うああああああッ!」

アキレウスは、シェイプシフターに押し潰され、絶叫した。

ピキニ・カイカイはそれを悲鳴と思い、喜んでシェイプシフターを動かしアキレウスをどかして立ち上がると、シェイプシフターは何故か徐々に元の大きさに戻って行った。

「何ッ!?」

ピキニ・カイカイが、急いでその場から離れると、シェイプシフターは勢い良く膨らんで破裂してしまった。

中から、出てきたアキレウスはピキニ・カイカイに向けて再び槍を向けて走った。

ピキニ・カイカイは、それに対し短剣で応戦する。

凄まじい速さで繰り出されたアキレウスの突きについていけずに、ピキニ・カイカイは、脇腹を貫かれて、肉片が吹き飛んだ。

「ぐああああああッ!」

ピキニ・カイカイが、痛みに悶えるとアキレウスは、

「お前は強いがここまでだ
どの道、その傷じゃ長くは持たない
今、楽にしてやる」

と、アキレウスはピキニ・カイカイに言うと、ピキニ・カイカイは

「いや、その必要は無い
自分で出来るッ!」

と、言って手に持った短剣を自分の首に突き刺した。アキレウスは、それを見て呆れ

「くだらねえッ!
目の前で自害だと?
俺を馬鹿にしてるのかッ!」

と、叫んだ。

だが、ピキニ・カイカイは首を貫いてなお笑い、アキレウスにこう言った。

「馬鹿になどしないさ
学んだんだ。お前らは強い、勝てないってね
だから、私は決死の覚悟でお前を倒すッ!
生かせッ!
始まりと終わりを刻みし賢者の石ラピスフィロソフォールム・イギトゥル・アゾットッ!」

ピキニ・カイカイは、そう叫ぶと短剣の柄をひねり、刃の中心に注射針の様な仕組みが施されている短剣から紅い液体を体に流し込んだ。

すると、ピキニ・カイカイの首に突き刺さるアゾット剣が深紅の光を放ち、紅い電流がピキニ・カイカイの体に流れた。

「うおおおおおッ!」

すると、ピキニ・カイカイが雄叫びを挙げ、
ピキニ・カイカイが、来ている甲冑全体に深紅に輝く電が描かれると、それに合わせシェイプシフターも紅く染まり、鉄仮面の右眼の穴からは、煌々と輝く炎が飛び出した。

すると、ピキニ・カイカイはさらに七体のシェイプシフターを出し、一体を短剣に纏わせロングソードにし、他の全てを背中に付けて今ついていた物と合わせ八体のシェイプシフターが真紅の翼となった。

「いくぞ!アキレウスッ!
貴様は、ここで殺すッ!」

ピキニ・カイカイが、そう叫ぶとアキレウスは、微笑んで

「煉獄の自殺者如きがッ!
おもしれえ!かかってこい!」

と言い、槍を捨て腰に挿した青銅の剣を引き抜いて構えた。
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