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やってきた薬師
やってきた薬師ー⑤
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(どうしてそこまで私のことを考えているの。そうやって思っているのは最初だけよ。あとからあなたも絶望の中をさまようことになるというのに。まあこの関係は最初だけだし)
「そう…そこまで真剣に言われると何も言えないわ。分かった。ありがとうね、色々と話してくれて。今日はもう遅いから休んでいいよ。私はまだやることがあるから」
「いえ、王にずっとそばにいるよう言われたので…」
(しっかりしてるな。王も変なところで頭がいい。そこまでして私に監視をいれたいか…)
「そう…それなら一緒に調合して遊ばない?一度友達とやってみたかったんだ」
シャリングは嬉しそうな目でカナリヤを見た。
「い、いいんですか?」
「ええ」
カナリヤは調合室へ向かった。名前は調合室となっているがそれ以外のことも普通にしている。
主にここで生活しているようなものだ。家にいた頃は自分の部屋で実験していたためあまり大規模な実験はしてこなかった。
しかし、ここに移ってから自由に実験もできるので便利だ。
「そこに瓶があるでしょ?そこに入っているものは自由に使っていいわよ。だけど、あそこにある棚はあまり触れないで。危険なものばかりだから。毒とか普通に置いてあるかね。あと、貴重なものもあるから使う時は私に教えて」
「分かりました」
(……この子意外と使えるわね…だったら…この子にも協力してもらわなきゃ)
そんなことを考えながらシャリングを見た。
シャリングは棚を眺めて目を輝やかせていた。まるで初めて植物を見るような目だった。ここにあるものはそこら辺の植物や薬、液体が揃っている。
中にはカナリヤが独自で開発したものもある。カナリヤはシャリングを見ながらあるものを作るために準備をしていた。
「あの、この植物はなんですか?」
シャリングが見せてきたのは食虫植物だった。あまり見ないものであったためシャリングは目を大きくしながら瓶を見ていた。
「それは食虫植物。虫を食べて生活しているの」
「へぇ、虫を食べる植物なんて初めて知りました」
初めて……てことはシャリングは貴族の可能性がある。農民だとしたらみな食虫植物のことは知っている。
どこの貴族だろうか。それによりシャリングの使い道が変わる。
「シャリングは誰に呼ばれてここに来た?」
「え?」
持っていた瓶を棚に戻して振り返った。
「僕にも分かりません。急に国王に呼ばれカナリヤ様の付き人になるよう言われました」
「それまではどこにいたの?」
「侯爵家の長男として過ごしていました」
カナリヤは考えた。急に言われたとしたらカナリヤが付き人を変えるようお願いしたことは予想していなかった。
そして急遽シャリングを呼んだのか。しかし、なぜシャリングを選んだのか。同い年だから?いやそうだとしても他に同い年はいたはず。
ただの偶然であるのか。シャリングに聞いても分からないだろう。それにシャリングももしかしたら王と繋がっている可能性がある。
「あのカナリヤ様はこの国好きですか?」
「え?」
急な質問に戸惑ったが
「ええ好きよ」
と笑いかけた。シャリングは不思議そうな目でカナリヤを見た。
「そうですか」
「あと、私の名前カナリヤでいいわよ。様を付けられるほど偉くはないから」
ハーブの葉を潰しながら言った。
「いえ、カナリヤ様…カナリヤは凄いですよ。この国を救ったのですから」
「……救った……ね…」
カナリヤの顔から笑顔が消えどんよりとした顔になった。
「だ、大丈夫ですか?」
シャリングはいつの間にかカナリヤの目の前にいて顔を覗いていた。カナリヤはハッとして焦点を合わせ
「だ、大丈夫よ。気にしないで。ごめん、今日は疲れたから休むね」
寝室に戻りそのまま布団に入った。
「そう…そこまで真剣に言われると何も言えないわ。分かった。ありがとうね、色々と話してくれて。今日はもう遅いから休んでいいよ。私はまだやることがあるから」
「いえ、王にずっとそばにいるよう言われたので…」
(しっかりしてるな。王も変なところで頭がいい。そこまでして私に監視をいれたいか…)
「そう…それなら一緒に調合して遊ばない?一度友達とやってみたかったんだ」
シャリングは嬉しそうな目でカナリヤを見た。
「い、いいんですか?」
「ええ」
カナリヤは調合室へ向かった。名前は調合室となっているがそれ以外のことも普通にしている。
主にここで生活しているようなものだ。家にいた頃は自分の部屋で実験していたためあまり大規模な実験はしてこなかった。
しかし、ここに移ってから自由に実験もできるので便利だ。
「そこに瓶があるでしょ?そこに入っているものは自由に使っていいわよ。だけど、あそこにある棚はあまり触れないで。危険なものばかりだから。毒とか普通に置いてあるかね。あと、貴重なものもあるから使う時は私に教えて」
「分かりました」
(……この子意外と使えるわね…だったら…この子にも協力してもらわなきゃ)
そんなことを考えながらシャリングを見た。
シャリングは棚を眺めて目を輝やかせていた。まるで初めて植物を見るような目だった。ここにあるものはそこら辺の植物や薬、液体が揃っている。
中にはカナリヤが独自で開発したものもある。カナリヤはシャリングを見ながらあるものを作るために準備をしていた。
「あの、この植物はなんですか?」
シャリングが見せてきたのは食虫植物だった。あまり見ないものであったためシャリングは目を大きくしながら瓶を見ていた。
「それは食虫植物。虫を食べて生活しているの」
「へぇ、虫を食べる植物なんて初めて知りました」
初めて……てことはシャリングは貴族の可能性がある。農民だとしたらみな食虫植物のことは知っている。
どこの貴族だろうか。それによりシャリングの使い道が変わる。
「シャリングは誰に呼ばれてここに来た?」
「え?」
持っていた瓶を棚に戻して振り返った。
「僕にも分かりません。急に国王に呼ばれカナリヤ様の付き人になるよう言われました」
「それまではどこにいたの?」
「侯爵家の長男として過ごしていました」
カナリヤは考えた。急に言われたとしたらカナリヤが付き人を変えるようお願いしたことは予想していなかった。
そして急遽シャリングを呼んだのか。しかし、なぜシャリングを選んだのか。同い年だから?いやそうだとしても他に同い年はいたはず。
ただの偶然であるのか。シャリングに聞いても分からないだろう。それにシャリングももしかしたら王と繋がっている可能性がある。
「あのカナリヤ様はこの国好きですか?」
「え?」
急な質問に戸惑ったが
「ええ好きよ」
と笑いかけた。シャリングは不思議そうな目でカナリヤを見た。
「そうですか」
「あと、私の名前カナリヤでいいわよ。様を付けられるほど偉くはないから」
ハーブの葉を潰しながら言った。
「いえ、カナリヤ様…カナリヤは凄いですよ。この国を救ったのですから」
「……救った……ね…」
カナリヤの顔から笑顔が消えどんよりとした顔になった。
「だ、大丈夫ですか?」
シャリングはいつの間にかカナリヤの目の前にいて顔を覗いていた。カナリヤはハッとして焦点を合わせ
「だ、大丈夫よ。気にしないで。ごめん、今日は疲れたから休むね」
寝室に戻りそのまま布団に入った。
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