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見習い騎士
見習い騎士 ⑦
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「今日は四人とその他の見習い騎士達を連れていくところがある。だから、外に集合しといてくれ」
「なんだろうな、連れていくところって」
「…なんか胸さわぎがする…」
「僕もだよ」
まさか、ヘルに行こうってことじゃないよね。この五ヶ月間ずっとアイに会うことだけを考えていたが今日会えるかもしれない。
向こうから来てくれるのはありがたい。
「早く行こ。みんなが待ってるよ」
グラウンドには数十人の見習い騎士達がいた。前の試験で受かった人たちだ。カナリヤの悪口を言っていた者たちは見当たらない。
「それじゃあ行くか。みんな逸れないように」
サンザリカの合図とともにみんなが動き始める。サンザリカは馬に跨がり先頭を歩いている。
それからどんどん山深くに入っていく。予想が的中したようだ。ここを見ると嫌なことしか思い出せない。
周りの人々は目を大きくしながら見ている。ここが地獄だとは知らずに。
「カナ‥リオンネ‥大丈夫か?」
「…」
「おい、あそこにきれいな赤色の花が咲いてるぞ」
コルインが小さな声で指さした。カナリヤはチラリと見てフンと腹で笑い
「綺麗なのは見た目だけよ。あれも一応毒が入ってるわ。特に根っこに毒があって嘔吐、下痢とかの症状がでるわ」
「…詳しいんだな」
「毒に興味があっただけ」
「それよりここなんだよ。でっかいな」
塀を見上げながらルーセルが言う。確かによくよく見ると高い。塀を登っては中に入れないだろう。
「さあここが最初の君たちの仕事場だ。中に入ったら、部屋の番号を言っていくからそこの部屋に待機してくれ」
仕事場って何をさせる気だよ。フンと言いながら、目を細くしてサンザリカを見る。
その時サンザリカと目があった。ニコッと笑いかけてきた。背筋が凍った。
嫌な予感がする。なんでこっちをジロジロと見るんだ。まさか…
「リオンネ、サイルス、コルイン、ルーセルは四人で同じ部屋な。はい、君たちは401号室だ」
カナリヤはサンザリカから目を話し真横を通っていく。体がずっと震えていた。
そんなカナリヤをシャリングは心配そうに見つめる。
「大丈夫か?」
触ろうとすると手で叩かれた。
「さわんないで。大丈夫だから」
部屋についてもカナリヤはベッドの中に潜り込んでいた。
部屋には四つの机と椅子。真ん中にはソファー。ベッドも横に四つ並んでいる。本棚もある。意外としっかりした造りだ。
なんか変だ。ここには多くの人々が囚われているはずなのにそんなのここまでの道のりでは見当たらなかった。声すら聞こえない。
どこにいるんだ?もういないのか?まさか全員‥いいや、考えないでおこう。
「ちょっと廊下歩いてくる」
「すぐに戻ってこいよ」
廊下は涼しかった。春はすぎる頃なのに。
「おや、迷ったのか?」
聞いたことのある声が背後から聞こえた。全身の毛がゾワッとした。
「…いえ、ちょっと気晴らしに」
「…そのようには見えないがな…」
サンザリカは近づいてきてカナリヤの目の前に立った。カナリヤの手は震えていた。
そして次の言葉でカナリヤはその場から動けなくなった。
「…本当はここにいる人を探そうとしていたんじゃないか?…カナリヤ・ハルデリス君」
「なんだろうな、連れていくところって」
「…なんか胸さわぎがする…」
「僕もだよ」
まさか、ヘルに行こうってことじゃないよね。この五ヶ月間ずっとアイに会うことだけを考えていたが今日会えるかもしれない。
向こうから来てくれるのはありがたい。
「早く行こ。みんなが待ってるよ」
グラウンドには数十人の見習い騎士達がいた。前の試験で受かった人たちだ。カナリヤの悪口を言っていた者たちは見当たらない。
「それじゃあ行くか。みんな逸れないように」
サンザリカの合図とともにみんなが動き始める。サンザリカは馬に跨がり先頭を歩いている。
それからどんどん山深くに入っていく。予想が的中したようだ。ここを見ると嫌なことしか思い出せない。
周りの人々は目を大きくしながら見ている。ここが地獄だとは知らずに。
「カナ‥リオンネ‥大丈夫か?」
「…」
「おい、あそこにきれいな赤色の花が咲いてるぞ」
コルインが小さな声で指さした。カナリヤはチラリと見てフンと腹で笑い
「綺麗なのは見た目だけよ。あれも一応毒が入ってるわ。特に根っこに毒があって嘔吐、下痢とかの症状がでるわ」
「…詳しいんだな」
「毒に興味があっただけ」
「それよりここなんだよ。でっかいな」
塀を見上げながらルーセルが言う。確かによくよく見ると高い。塀を登っては中に入れないだろう。
「さあここが最初の君たちの仕事場だ。中に入ったら、部屋の番号を言っていくからそこの部屋に待機してくれ」
仕事場って何をさせる気だよ。フンと言いながら、目を細くしてサンザリカを見る。
その時サンザリカと目があった。ニコッと笑いかけてきた。背筋が凍った。
嫌な予感がする。なんでこっちをジロジロと見るんだ。まさか…
「リオンネ、サイルス、コルイン、ルーセルは四人で同じ部屋な。はい、君たちは401号室だ」
カナリヤはサンザリカから目を話し真横を通っていく。体がずっと震えていた。
そんなカナリヤをシャリングは心配そうに見つめる。
「大丈夫か?」
触ろうとすると手で叩かれた。
「さわんないで。大丈夫だから」
部屋についてもカナリヤはベッドの中に潜り込んでいた。
部屋には四つの机と椅子。真ん中にはソファー。ベッドも横に四つ並んでいる。本棚もある。意外としっかりした造りだ。
なんか変だ。ここには多くの人々が囚われているはずなのにそんなのここまでの道のりでは見当たらなかった。声すら聞こえない。
どこにいるんだ?もういないのか?まさか全員‥いいや、考えないでおこう。
「ちょっと廊下歩いてくる」
「すぐに戻ってこいよ」
廊下は涼しかった。春はすぎる頃なのに。
「おや、迷ったのか?」
聞いたことのある声が背後から聞こえた。全身の毛がゾワッとした。
「…いえ、ちょっと気晴らしに」
「…そのようには見えないがな…」
サンザリカは近づいてきてカナリヤの目の前に立った。カナリヤの手は震えていた。
そして次の言葉でカナリヤはその場から動けなくなった。
「…本当はここにいる人を探そうとしていたんじゃないか?…カナリヤ・ハルデリス君」
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